第26話「古城探索③」
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ダンとスオメタルは襲いかかる亡霊どもを昇天させながら更に奥へ進む。
らせん状の階段があり、ところどころ崩れ落ちているが、何とか上っていけそうだ。
しかし、ダンとスオメタルは魔法により浮遊、飛翔が可能なので、途中で階段が途切れていても、全く問題がないのではあるが……
『マスター』
『何だい?』
『初めてマスターと組み、不死者退治を行った時から、感じていた事がございます』
『スオメタルと初めて不死者退治を行った時から?』
『はい、スオメタルはホラー超大好き少女ですから、全く平気なのですが、男子でお化け嫌いの方は意外に多いでございますゆえ』
『ああ、確かに男で怖がりは多い。俺は今こそ平気だけど、最初は怖いし気味悪かったよ』
『そう、今はマスター、お化け全く平気ございますよね』
スオメタルの感じた疑問。
何故、ダンは不死者や亡霊の類に恐怖を感じないのか?
しかしダンは拍子抜けするほどあっさり答える。
『うん、ゾンビとか、気持ち悪いとか臭いのにも慣れた。意地悪王女アンジェリーヌ様に散々、バイトやらされたから』
『バイト?』
『ああ、バイト』
『何のバイトでございますか?』
『墓守り!』
『墓守り! ああ、成る程でございます 心と身体が鍛えられるでございますね』
ダンの言う墓守りにはふたつの意味がある。
ひとつは墓の継承者、もうひとつは墓地の管理者だ。
ダンがバイト……
委託されたのは、墓地の管理者の方である。
『うん、しばらくの間、王女の命令であちこちの王立墓地へ行かされた。王女曰はく、修行の一環、不死者対策の鍛錬だって』
『不死者対策でございますか』
『おう! でも、後で分かったけど、俺を使ったのは、単に人手不足と経費節減の為だった。それに金をケチってちゃんと弔っていないから、葬られた人が皆、不死者化。天へちゃんと還れなかったんだ。はあ……』
『結果、その経験でマスターは、不死者にほぼ慣れたと』
『ああ、その通り! お陰様で素敵な経験をさせて頂きましたよ』
『……それ、スオメタルは思いますけど、あまり素敵な経験ではないでございますよね』
『ああ、素敵な経験じゃない! とんでもない経験だよ』
『やっぱり、ジャストアジョークでございましたね』
『ああ、単なるどころか! 笑えないジョークだよ。俺が派遣されたヴァレンタイン王国の墓地はどこもかしこも酷かった。野外にある、吹きっさらしの見張り小屋で徹夜の連続。もわんとした実体のないのが出たり、ぼこぼこと土の中から腐った手が出て全身がずるずる出て来たり、たまらんかった……それも超が付く大量に……』
……ダンの労働環境はとても悲惨なものだったらしい。
スオメタルは苦笑し、大袈裟に肩をすくめる。
『何だか……マスターの魂の叫びでございますね。ちゃんとした王立墓地なら、充分な対策が為されるでございますから』
『まあな……もう突き抜けちゃったけどさ。そもそも、真っ当な王立墓地なら創世神教の司祭が正規の葬送魔法を使うし、墓守りにも邪気を払う法衣とか、お守りや銀製の武器が無償配布される。でもそんなの一切なし、勇者武具も着用禁止だった』
『勇者武具だと、ひと目で勇者がバイトしてるとばれますゆえ、王家は世間体を気にしたでございますね』
『まあ、他の鍛錬同様にそのバイトの積み重ねで不死者が平気になったから、結果良し……なんだけどな』
『ま、雨降って地固まるでございます』
『全くだ』
ダンが同意すると、スオメタルはちらと階上へ目を走らせる。
『……話はいきなり変わりますが、そろそろ最上階の部屋でございます。多分、ここの主はノーライフキングだと思うでございますが』
『一応、魔法さえ気を付ければ、俺達の敵じゃないだろ』
『はい、ノーライフキングと言っても所詮は人間が長期保存用干物になったモノでございますゆえ』
『人間の長期保存用干物か? すげぇ事言うな』
『単なる事実……でございます』
『分かった、了解!』
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ダンとスオメタルはなおも進み、最上階の様々な書物が書架に詰まった、
書斎らしき部屋に、この古城に巣食う『主』は居た。
スオメタルの言う通りの風貌、干からびたミイラのような、
ノーライフキング。
不死の王と呼ばれる魔人である。
飄々としたダン、落ち着き払ったスオメタルを見て、
ノーライフキングは、勝手が違うとばかりに戸惑う。
『貴様! 何者だ!』
しかし、ダンとスオメタルはノーライフキングの質問を華麗にスルー。
『お~、さすがノーライフキング、コイツも念話を使うんだ』
『魔力感知! 分析! 結論! ……そこそこの能力を持っているようでございますよ、マスター』
『くっそ! さすがとか、そこそこだとぉ! バカにしやがって、喰らえ!』
ノーライフキング某は不死者特有の怨念がこもった波動を放って来た。
しかし前面に立つダンは、おぞましい波動を受けても全く平気な顔をしていた。
『あはは、効かないって』
『何だと!』
『俺さ、ある事情で呪いの類が一切効かなくなったんだ』
ある事情……
それはダンが勇者として選ばれた事である。
『何だと! ならば、凍りつけ!!』
『そう来ると思った! はい、障壁!』
さすがノーライフキング。
無詠唱で瞬時に凍結させる、水属性の高位魔法を放った。
が……
これまた同時に発動され、ダンとスオメタルの前に張り巡らされた魔法障壁が、
全てを吸収してしまった。
室温はほんの少し下がった程度である。
ノーライフキングは悔しそうに地団駄を踏んだ。
「ぺしぺし」と情けない音がした。
『き、貴様! わ、儂の魔法を無効化したな! だ、だが同じだ! 貴様の魔法も儂には効かぬ! 全て無効化してやるわい!』
『ははは、無効化違うって』
『な、何!』
『俺が作ったこの障壁は、魔法を単に無効化したわけじゃない。お前の身体を包み込み、ず~っと体内魔力を吸収してるのさ』
『な、何だと!? くっそ~~ぉぉ!!』
『ほらほらぁ……吠えてる間に、お前の体内魔力は、もうほんのちょびっとしか残ってねぇぞぉ』
『ななな、くっそ!』
『ほら、速攻で魔力は枯渇、すなわちゼロになるぜ』
『な! ゼロだと!?』
『ああ、ゼロになったら活動停止、そしてボン! サヨナラだ。生まれ変わって幸せになりな!』
『うぬぬぬぬ! も、もし! わ、儂が消えても舎弟達がぁぁぁ!!!』
儂が消えても舎弟達がぁぁぁ!!!
というのがノーライフキング最期の言葉であった。
ボン!
というベタな音と共に、干からびた身体は消滅していたのである。
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