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『初恋』

お待たせしました。

どうぞお楽しみください。

 その日,私は自分がとても無力なことを思い知った。

 両親に町に出るときは誰か護衛を連れて行けと毎回言われる。鬱陶しくてせっかくの休日も伸び伸び過ごすこともできない。だから,私はこっそりと屋敷を抜け出して町に降りた。


 町は,人で賑わっていた。多くの店が立ち並び品物を道を通る客に売り込みをしている。

 この光景を見ているとギルド長のお父様が誇らしい。


 大通りの店から周り路地の小さな店にも足を運んだ。

 初めて1人で町に来て浮かれていた私は入り組んだ路地に迷い込んでしまう。そこで私は,後ろから誰かに口に布をあてられた。必死に振りほどこうとするが次第に力が入らなくなり視界がぼやけ,そこで意識を失った。



 次に目が覚めたのは揺れている馬車の中だった。

 目隠しをされており周りを確認することができなかったが自分の他にも女性がいるようだ。泣き声が聞こえる。私も泣きそうになったがこらえる。私達をさらった人たちの会話が外から聞こえてきた。



「今回もなかなか大量だな」

「あぁ,まったくだ。しかも,今回は上玉もいやがる。それなりの額になるぜ」

「そりゃいい! うまい酒が飲める」

「まったくだ」



 この人たちは私たちを違う国で売るつもりだ。

  この国は奴隷の扱いがとてもいい国だ。

だが他の国は奴隷を同じ人間すら思ってすらたいない者も多い。亜人種は特に装具の様に扱われていると聞いたことがある。


(絶対に嫌だ!)


泣いていてもどうしようもないとにかく目隠しだけでも取ろうと必死にもがく。その時,急に馬車が止まり手足を縛られておりバランスを崩して倒れる。


 倒れた勢いで少し目を覆っている布がずれる。


(あと少し!)



 ようやく目隠しをとることができた。

 馬車を見ると仲が見えないように周りが布で覆われている。馬車には他にも10人ほどの女性が囚われていた。


 どうすればいいの・・・・。

 今なら馬車が止まっているから手足の縄さえほどくことができれば逃げられるかもしれない。

 場所がどこかわからない逃げてもすぐに追いつかれることが私の頭をよぎる。


 涙がこらえられなくなってきた。



(誰か・・・助けて!!)



 私は誰も助けに来ることはないのに心の中で祈った。

 それしか希望がないから。



「敵襲!?」 

「!?」



 外が騒がしくなった。

 どうやら誰かが人攫いと戦っているようだ。



「ぎゃぁぁぁッ!?」

「なんだあいつらはッガっっ!?」



 人攫いの悲鳴が聞こえてくる。

 私は怖くなって目を固く閉じる。


 いつの間にか外は静かになっていた。

 

 突然馬車の後ろの布が開けられた。



「ッ!?」



 突然のことでとても驚いた。

 そこには緑,黒,茶色のおかしな色の服を着て,顔まで同じような色の塗料で塗っている黒髪の男性がいた。


 男性は何も言わず。

 囚われていた女性たちの手足を縛っていたロープを大きなナイフで切っていく。

 ロープを切ってもらった時に男性の瞳をみた。


 きれいな瞳をしていると思った。

 思わず見とれてしまった。



「大丈夫か?」

「えっ?」



 その時,男性が話しかけているのに初めて気が付いたと同時に,私の目から涙が流れていた。

 衣服の袖で涙を拭うが止まらない。


 男性は手袋を付けた大きな手で私の頭を優しくなでた。


「安心しろ,もう大丈夫だ」


 

 私は,その言葉で我慢していた感情が抑えきれなくなった。

 怖かったのだ。

 男性に抱き付き思いっきり泣いた。これほど泣いたのは初めてかもしれない。男性は,私が泣いている間ずっと頭を優しくなでていてくれた。それがとても安心する。


 ようやく落ち着いてきた時に男性の後ろから声がかけられた。



「隊長,制圧完了しました」

「よくやった。リース,人質の容体を確認しろ,必要ならハンヴィーで移送する」

「了解しました」



 男性からリースと呼ばれた人も目の前の男性と同じ柄の服を着ていた。顔は,黒いマスクをしおりわからないが体型から女性であることがわかる。

  

 私は彼らが何者なのか知りたくなった。



「あなたたちは何者ですか?」



 私が彼らに聞くと,隊長と呼ばれた男性が答えた。



「ただの傭兵ですよ」



 彼はそれだけ伝えると馬のいない馬車に乗り込み離れていく。


 これが私の人生、初めての恋だった。  





















いかがでしたか?

今回はギルドの娘さんの話しでした。

ご意見やご感想があればよろしくお願いします。

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