『死神の使徒』
番外編です。お楽しみください。
険しい山道が続く山奥の少数部族。族長の孫として私は生まれ育った。
村は裕福ではなかったが、決して貧しくもなかった。
この国は私たちのような少数部族のことも容認しておりお互いに悪くない関係を保っていたと私は思っていた。しかし、それは間違いだった。
私は・・・私たちは何をしているのだろう。
再び迫りくる兵士を槍で突き、命を奪う。
これで何人目になるのだろう。周りには突き殺した兵士と同じ鎧を着た人間が地面が見えないほど倒れている。そこには、私と同じ白い髪の人間も同じく倒れている。
そうだ私たちは戦争をしているのだ。
私たちの部族の特徴は真っ白な髪に強靭な肉体さらには驚くべき身体能力である。
そのため、他の国では私たちを恐れる。
私は父になぜ他の人が私たちを恐れるのか聞いてみた。
父はこう答えた。
『力があるからだ。人は自分が持っていないものを欲するが――――同時に恐れもする。力を使うときは覚悟して使え、リヤ』
私の名前はリヤ。
力ある者といった名前の意味を持つ者。
例え数百の敵が来ようと、家族の為に戦おう。この身が朽ち果てるまで―――――。
だが、運命は彼女の死を否定した。
突然現れた空飛ぶ鋼鉄の死神によって。それは、空を自由に飛び回り敵兵士たちの命をいともたやすく刈り取っていく。
鋼鉄の死神から太いロープが下ろされ人が降りてくる。
彼らは死神の使いなのだろう。
その証拠に鋼鉄の死神から降臨された者はみな鉄の杖の先から光の矢の魔法を放っている。この世界にこれほど魔法を使える者は既にいない。
私はもはや槍を構えることすらできなかった。
目まぐるしく動く光と影。
心臓を震わす炸裂音。
鼻孔のおくまで、焦げ臭い匂いが突き抜けた。
そこは確かに、掛け値なしの戦場だった。その場に立つすべての者の命が鋼鉄の死神とその使徒によって、死という名の暴君の前でただ裸で曝されている現実がある。
敵兵が放った矢が私めがけて飛んでくるのがゆっくりと流れる時間の中で見えた。その矢が私に届くまでただ見ていることしかできない。
矢が届く前に私の前に誰かが割り込む。その人物は肩に矢を受けるがよろけることなく鉄の杖で魔法を放ち兵士の頭が爆ぜる。
私はその時その圧倒的な死を与える存在に場違いにも見入っていた。
気が付くと敵のなにもかもが死に絶えていた。
私を矢から守ってくれた死神の使徒が目の前に立っていた。
「責任者と話がしたい、案内してくれないだろうか?」
しっかりとした凛とした声だった。
顔は黒いマスクで覆っておりわからないが、男の声。そして何より印象なのがただ一点を向くようにひかる眼差しが私の精神を揺さぶる。今までに感じたことのない極度の緊張により耳まで紅潮しているのが自分でもわかる。
「えッ・・・あの・・・・」
だめだ言葉にならない。
私は走って逃げだしたい気持ちにかられた。
それからなんとか落ち着き、死神の使徒を族長の下に連れていく。少なくとも彼らはただ命を奪うだけではなくしっかりとした、理性や感情があることが話をして感じ取れた。
私を守ってくれた死神の使徒は私と別れる前に『ありがとう』といって頭を撫でてくれた。大きな手で優しくなでてくれた。何とも言えない気持ちが芽生えた。
どう表現したらいいのだろうか。
胸の奥が暖まるような感じだ。
その日を境に私の部族は、死神の使徒——―――彼のもとで力を振るうことになった。
彼と話をした族長は彼の事をとても気に入っていた。
族長から彼の名前を聞くことができた。
『ジュン』それが彼の名前。
この世でただ1人の私にとってとても愛おしい人の名前。
『銃』を握り締める。
それは、私が彼にすべてを捧げる意志。
私は彼が見ている未来を一緒に並んで見てみたい。
彼の為に力を使い、この命尽き果てるまで・・・・・・。
ご意見やご感想があればよろしくお願いします。




