『戦いの代償』
ようやく一章の完結になります。
ここまで読んでいただきありがとうございます。この作品を見ていただいている方々のおかげでここまで来ることができました。
戦いはエイブラムスの砲撃で開始された。
エイブラムスの砲撃の衝撃波は凄まじいものである。爆風の衝撃波、発射音が城壁だけではなく町を揺らす。さらに対戦車地雷『M21』の上に飛竜が落下、地面に真っ赤な花が咲く。
エイブラムスの120mm砲の弾頭はどの弾種でも20㎏を超えている。これは人間が狭い車内で素早く装填できる限界に近い。
大抵、1発の装填に10秒程かかるが熟練を重ねた装填手なら5秒で装填できる。
仮設指令本部では、大型ディスプレイに飛竜が赤いマーカーで示されておりその行動が逐一把握することができた。
「飛竜群、砲撃を受けつつ尚も接近! 両端の一団が左右に展開します」
「戦車隊には砲撃を続行させろ。俺も機関銃陣地に向かう、飛竜の動きを逐一報告しろ」
「了解しました」
索敵を部下に任せ、装備を持ち機関銃陣地に向かう。
ワイバーンは戦車の砲撃を避けるため左右にわかれここを襲うようだ。
各機関銃陣地には、20挺ほどの『M2キャリバー』、『AT4』などの無反動砲を設置、装備している。しかし、装備しているがこれでも足りないぐらいだ。
戦闘機並みの速さで防御力が装甲車並みの飛竜は簡単には落とせない。
前回の飛竜は低空で停滞していたから袋田叩きにできたが、スピードが乗ればこちらが不利になる。
「全隊、担当空域の飛竜に照準。いいか、近づいてくる標的に集中砲火を浴びせろ!」
戦車の主砲の発砲音にかき消されないように大声で無線機で伝える。
エイブラムスの砲身は過熱し白い煙が立ち込める。飛竜群がエイブラムスのキルゾーンから次々と抜け出してくる。
「迎撃開始!! ぶちのめせぇ!!」
機関銃陣地に設置された幾数もの『M2キャリバー』から発射された曳光弾が空を駆ける。空を光の線が駆けるその光景は幻想的でもあった。
機関銃の射手は接近してくる飛竜に向け、トリガーを押し込む。凄まじい炸裂音が立て続けに鳴り渡り、飛竜の跳弾した火花が目まぐるしく一面に飛び散る。
空薬莢が足元を埋め尽くし、弾薬箱からメタルベルトリンクで給弾される12.7mm徹甲弾、曳光弾は瞬く間に消費される。そして、ときおり無反動砲が接近しようとする飛竜に運よく直撃するか肉体の一部を吹き飛ばす。
機関銃陣地から迎撃が開始されてからもエイブラムスは主砲の発砲を止めることはなかった。左右に分かれた飛竜に対しひたすら撃つ。まだ、飛竜は全体の半分は残っている。ようやく半分である。
『くそッ! 射角が! 全車輛、後退しつつ迎撃。俺たちに注意を惹きつけろ!』
戦車の指揮車両からの指示で戦車が後退を始める。
飛竜が接近してきており狙おうにも射角が足りないためだ。
『ッ!? こちら8号車! 奴らが取り付いた!』
8号車の戦車に飛竜の1騎が取り付き、その牙により上部の機関銃、センサー類がもぎ取られる。
『こちら、9号車! 8号車、動くなよ今からそいつを仕留める!』
防衛は苛烈を極めている。
生きるために全員が必死に抗う。
機関銃の弾切れの際の隙も大弩がなんとかカバーする。次々と弾薬が消費されていく。
さらに弾幕によって平衡感覚を失った飛竜が城壁に衝突し、その城壁の上にいた人間が城壁の下に落ちていく。
もう何度目かわからない『M2キャリバー』の弾薬を槓桿を引いて装填し、新たな弾丸を飛竜に叩き込む。
最後の弾丸が尽きるまで――――――望む未来を手繰り寄せるために撃ち続ける。
◆
戦いは終わった。
結論からすれば、我々は勝ったことになるだろう。
100騎以上の飛竜と闘い死傷者26名、重軽症者100以上の損害で済んだのだから、それこそ奇跡といわれることだろう。
だが、俺は奇跡という言葉では済ませない。
今、目の前に並んでいる6つの棺が奇跡の代償である。
その1つの棺には“ピグ”と名前が刻まれている。
その他の棺にも同じく名前が刻まれている。
ピグは、弾薬を届けて居る際に城壁の崩落に巻き込まれた。撃墜された飛竜が城壁に衝突したのだ。彼女の他にも大人が3名、子供が2名戦死した。
わかっていた・・・・・。
何かを得るためには犠牲が伴う。
その犠牲が彼女たちか・・・・・・・。
涙はでない。最後に涙を流したのがいつだったのかすら覚えていないが、前の世界に涙も置いてきたのだろう。
もっと彼女たちにはこの世界を見せてあげたかった。こんなときも彼女たちのの笑顔しか思い浮かべない自分は自分勝手な奴だろう。もっと俺を憎んだ顔を思い浮かべてもいいはずだ。
リル、ルルがテントの中へ入ってくる。
「隊長、もう間もなく始まります」
「会場の方へ移動をお願いします」
「そんな時間か・・・」
2人は、相変わらず目出し帽を被っており一見表情はわからないが、半年以上一緒に行動すればわかるようにもなる。
仕事を受けるようになって初めての戦死者。
家族が死んだのだ。
涙を流さない者はいない。
悲しい時に涙を流すのは、一種の心を守る防衛機能なようなものだ。
ピグは俺の命令で死んだ。他の5人も・・・ただそれだけだ。
商業都市は飛竜との戦闘で城壁が崩れたところもあるが、比較的都市の建物は無事である。飛竜の数騎が落ちたがそれほど被害は出ていない。
復興は着実に進んでおり、飛竜を迎撃したさいに敷き詰めた地雷の撤去作業は概ね完了している。
商業都市はお祭りのような雰囲気に包まれている。それもそうだろう。絶望的ともいえる数百の飛竜に勝利したのだから。浮かれない者などいない。
俺を迎えに来た2人を引き連れ祝賀会場に向かう。
これが最後ではない。これからも多くの者が、死に多くの者が生きることになるだろう。だが、せめて自分の周りにいる者ぐらいなら守りたい。
テントの入り口で振り返り敬礼する。そして、静かに横たわる棺に背を向ける。
どうか、彼女たちが安らかに眠れるよう祈りながらテントを後にする。
ご意見やご感想があればよろしくお願いします。
次の更新は一カ月後を予定していますが、文章がまとまり次第投稿していきます。
ここまでお付き合いいただきありがとうございます。今後もよろしくお願いします。




