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『咆哮』

 城壁には多くの兵士、隊員が集まっていた。

 ワイバーンの群れが視認できる距離に近づいてきているのだ。

 すでに銃火器の最終確認を終えている。



「ハンク、守備隊の準備は済んだか?」

「大丈夫です。大弩(バリスタ)の準備も完了しています」



 今回は俺たちが指揮を執っている。

 シェールの冒険者ギルド長、商業ギルド長から直々の推薦である。

 守備隊の指揮官でもあるハンクにも是非指揮を執ってほしいと頼まれた。

 指揮をとれるのも守備隊の連中と友好な関係を築いてきたからだ。信頼できる者にしか自分の命運を預けようとは思わない。特にこの世界の様に命が簡単に消えてしまうところでは。


 ここで敗れれば終わりのだ。



「少し隊員の様子を見てくる、ここを任せるぞ」

「了解です。何かあればすぐにお呼びします」



 よろしく頼む、と言ってその場を後にする。


 

「隊長~!」

「ん?」



 隊長と呼ぶ声が聞こえると後ろから腰に何かが抱き付いてくる。



「ピグか、どうした?」

「いえ、そこに隊長がいましたのでつい」


 名前はピグ。彼女は身寄りのなかった子供たちの1人だ。 

 目だし帽(バラクバ)を被っているが長い髪が後ろから少し飛び出している。この世界の人間は茶髪の人間が多い。種族によって髪の色は違うようだ。



「そうか、もうすぐ敵が来る。弾薬の補給は任せるぞ」

「了解です!! 私がしっかりみんなに弾薬を届けます!」


 

 目だし帽の越しでも笑顔なのがわかる。

 この戦闘にはもちろん大人をできる限り連れてきているが拠点である『サイリス』にも何人か残してこなければならないため、どちらかというと子供が多い。


 この世界は15歳で大人として扱われる。

 ここにいる少年兵、少女兵の平均年齢が10~13である。


 子供を戦場に投入している。

 大人として人として最低なことをしている。


 ネガティブな気分になってくる。

 そんな事を察したのかピグは言った。



「隊長、私は後悔していませんよ。私は・・・私たちは自分で決めてここにいるんです。だからそんな悲しい顔はしないでください」



 そお言ってピグは持ち場に戻っていった。

 俺も自分の仕事を果たそう。







 ◆






 

 警報が鳴り響き慌ただしく守備隊の兵士と迷彩服を着た隊員たちが持ち場についていく。

『M1エイブラムス』のハネウェルAGT1500ガスタービンが唸りをあげる。

 ガスタービンエンジンは小型軽量、高出力、さらに加速性と登坂性に秀でており冷却水が不要と多くの長所があるが、燃料消費率が悪く、1マイル(=1.61)の走行に1ガロン(=3.79)以上の燃料を消費してしまうといった短所も存在する。

  


 城壁でも10キロ以上離れていてもワイバーン達の姿、咆哮が聞こえてくる。



『タンク1、準備完了。いつでも撃てます』

「こちらHQ了解。機関銃陣地はどうか送れ」

『第1陣地、準備完了』

『第2陣地、準備完了です』

『第3陣地、準備完了しました』



 続々と無線連絡が入る。

 手袋をしている手が汗ばむ。

 現在いるのは城壁近くの鐘楼がある建物である。

 その建物を利用し、移動型大型発電機を使用し戦場がリアルタイムで確認できるようにしている。



「全隊、これよりワイバーンに対し遠距離砲撃を敢行する」



 エイブラムスのM256 120mm滑腔砲がワイバーンの群れに向けられる。

 M1エイブラムスのM256 44口径120mm滑腔砲は、装薬が収まっている薬莢が燃え尽きることを前提にした設計がなされている。その設計のおかげで熱い空薬莢が車内に排出される危険性と狭く複雑な車内に空薬莢が散らばることはなくなった。 


『榴弾装填、良し!!』


 装填手が重い砲弾を装填する。

 従来の戦車では、距離や目標の速度、横風などを砲手が勘案して狙いを定め撃つというプロセスを取っていた。しかし、第3世代戦車『エイブラムス』の主砲発射は各種センサーと射撃管制装置のバックアップで、意外なほど簡略化された。


「目標、ワイバーン群正面に照準」

『目標照準よし!』


 砲手が目標を照準器の中心に捉え続ければ、各種センサーから届けられたパラメーターを取り込み射撃管制装置が複雑な計算を介し、命中する方向に自動的に砲を向けて追尾していく。


「総員衝撃に備えろ、撃ち方始めぇ!!」

撃てぇ(ファイヤ)!』

 

 砲手から主砲発射の電気信号が送られ、砲弾の電気信管から発火し砲弾はわずか5メートルの砲身を1/100秒未満で駆け抜ける。

 砲口から火柱と轟音が発生し城壁、大気が揺れる。

 あらかじめエイブラムスの周りの地面に砂が舞い上がらないように水をまいておいて正解だった。舞い上がった砂で視界が遮られるところだ。


 射撃管制された12本の砲塔から1.140~1.410m/秒で撃ちだされた榴弾は、見事ワイバーンの群れの先頭で炸裂する。

 先頭の数十騎が爆風によりバランスを崩し地面に垂直落下。そこで、さらに地面が炸裂する。

 真っ赤な粉塵が舞いあがる。


「効力射開始!!」


 続々と120mm滑腔砲が咆哮を上げる。





ご意見やご感想があればよろしくお願いします。

どんなものでも構いませんお気軽に一言などお願いします。

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