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第三話 能力レース④

 二階の廊下の途中に曲がり角がある。そこを曲がると左右に二部屋ずつ教室があり、その奥に三階へ行くための梯子がある。この梯子が三階へ行くための唯一のルートだ。

 俺は今、教室で薄弱と交戦している真っ最中だった。教室の隅には机と椅子がセットで何個か置かれている。

水刃スプリングナイフ

 俺は水で形作った無数の刃を薄弱に向けて放った。

「ふっ」

 薄弱は最小限の動きで次々と水の刃を避けながら、投擲のポーズを取った。しかし、その手には何も握られていない(・・・・・・・・・)

「…………?」

 薄弱は手首をクイッ、と動かした。数秒後、俺の腕に痛みが走った。痛みが走ったところを見ると、血が少々流れていた。なぜ? と疑問に思った瞬間にそれは唐突に姿を現した(・・・・・・・・)

「俺の……水刃スプリングナイフ

 俺はポツリ、と呟いた。透明ステルスで水の刃を透明にしたのか。いつの間に奪われていたんだ?

 しかし、考えている暇はない。俺は気を取り直して、

水の(スプリング)放射ブースト

 と叫んだ。かかと周辺から水の渦を噴出させ、薄弱の背後に回り込む。

「ふん」

 薄弱は裏拳を放ってきた。俺はそれを間一髪のところでかわし、後ろに下がった。

水の(スプリング)チェーン

 水で形作った無数の刃を繋げて構築した鎖を薄弱の身体に巻きつけた。

「っ!」

 力を込めて水の鎖を引っ張ると、薄弱の身体に切り傷ができ、血が流れた。

 薄弱は振り返り、床を蹴って跳躍し、目の前まで迫ってきた。

 俺は水の鎖を数ミリほど離して自分の身体に巻きつけた。

 薄弱は急ブレーキをかけて止まり、床を蹴って教室の隅まで跳躍した。そして隅に置いてあった机を掴んで投げてきた。

 俺は慌てて床を蹴って横に跳躍した。が、床に着地した途端に身体に衝撃と激痛が走り、吹っ飛んで壁に激突した。

「がっ!」

 俺は吐血した。いつの間にか足の上に机が乗っかっていた。また、透明ステルスで透明にしたのか。

 しかし、この机はいつ投げたんだ? 投擲していたのなら、動作で分かるはずだ。と、一つの可能性にたどり着く。まさか直前に投げられていた机が死角になって見えなかったのか。

「何か鼻がムズムズする」

 薄弱は何かを堪えながら、言った。

「くしゅん!」

 そして薄弱はくしゃみをした。何とも可愛いくしゃみである。

「く、また、出そうだ」

 薄弱は鼻をピクつかせていた。

「ふぁ、ふぁ、ふぁ……で、出ない」

 可愛い。が、戦闘中に可愛さを滲み出さないで欲しい。集中できない。

 能力の実力テストの時も可愛さが滲み出してきて、集中できずにかなり苦戦したからな。戦闘力があまりにも高すぎて苦戦したのではなく、可愛いすぎて苦戦したのだ。まあ、それを抜きにしても強いことには変わりないが。苦戦してるしな。

「氷河。くしゃみが出るまで待ってもらっていいか?」

「ああ、いいぞ」

「すまない」

 その間、休憩できるからラッキーだ。

 とりあえず机をどかそうとして手を動かしたら、ジャージのポケットに当たって、微かに音がした。そういえば、テストを入れていたな。これは使えるかもしれない。

 机をどかして、横に置いた。

「ふぁ、ふぁ、ふぁ……くしゅん! やっと、出た」

 薄弱はスッキリした表情をする。

「バトル再開といこうか。氷河」

「ああ、いくぞ。薄弱」

 俺は薄弱のところまで駆け出して、ジャージのポケットから、テストを取り出した。それを薄弱の目の前に投げつけた(・・・・・)

「ん?」

 薄弱は怪訝な声を発した。

 俺は拳を握り、振りかぶって勢いをつけてから殴りかかる。テストごと殴りつけようとした瞬間、拳は受け止められ、逆に顔面を殴られた俺は後ろに倒れた。

「俺が先ほど取った手法をやろうとしたようだが甘いな、氷河」

 薄弱は床に倒れこんでいる俺を見下ろした。

黒い影がテストに(・・・・・・・・)映りこんでいた(・・・・・・・)

 しまった。紙だから透けてしまうんだった。

「これで終わりだ」

 薄弱は拳を握り、俺の腹を目掛けて振り下ろした。

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