表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/14

第八話 契約

「ボーデさん、どうかしましたか?」

 何故か呆けている彼にそう声をかけた。

「ええと、馬車やリーナはともかく商会と私自身もですか?」

 かなりうろたえているようだ。三千年前だと命を救われたら「命の借りは命で返す。それが出来なきゃ全てを差し出す。」って考えは普通に社会通念として存在した。少なくとも命を救われたのに、提示した謝礼が「救われた側がそれ以降特に困らない程度の金額」とかだと吝嗇家呼ばわりどころではなく、信仰してる宗教からは破門、所属してるコミューンからは追放、という扱いがされた。

「そうですね、最初に謝礼は普通にもらうってお約束でしたし、そんなものだと思います。」

 俺は彼が何に戸惑っているのかわからずに考え込んだが、ふと気づいた。

「ああ、ご家族の処遇についてですよね?ご家族については奴隷になったり等とか特には何も求めはいたしませんよ。ご安心ください。」

 そうだよな、家族の事は気にかかるよな。と納得していると、

「あの、どうかご勘弁願えないでしょうか?」

 突然そう言ってきた。

「私は商人として大成するのが夢なのです。なので商会を手放す訳にも奴隷になる訳にもいかないのです。」

 なるほど。奴隷になるという事は決定権を主人に預けるという事だから、商売なんか全く出来なくなるからな。

「ボーデさんは商人、それも奴隷を商うという事は契約術をお持ちですよね?」

 神眼で見てはいたが一応知らないふりをする。

「はい。当商会は契約術を結んだ奴隷だけを扱う真っ当な商いをさせていただいています。」

 なるほど。ちなみに契約術と言うのは商人系や神官系のクラスが使うクラススキルで、有り体に言って神に誓いを立てて契約を結ぶ術だ。契約を結ぶ際にはお互いが納得していないと術が失敗する。その上締結の際にはその神からの審判が入るので、意識を失わせたり、薬や魔法で誑かして納得させても無効となり失敗となる。なので人狩りなどで無理やり連れてきたとしても契約出来ない。

 ここまで厳しい条件をクリアした上で、奴隷契約として使用した場合の契約術のメリットは、


 1:お互いの大体の距離感と方角がわかる。

 2:神眼等を使った際にステータスに表示される。

 3:奴隷側に契約締結の証として、通称「奴隷紋」が刻まれる。

 4:契約を破れない。主人側が奴隷に契約外及び契約違反の行為をした瞬間に、契約術は破棄され奴隷は解放される上、主人の称号に「背教者」がつき世間から犯罪者として扱われる。奴隷側が契約を破った際には、称号に「反乱奴隷」がつき犯罪者として扱われるし、次回の契約術の際には同意を必要とせずに締結される。


 ちなみにこの厳しい条件から国家間の条約締結や大規模商取引の契約時にも契約術は使われる。


「ならおわかりかと思いますが今回の件を断ったら、商人それも奴隷商人は続けられないですよ?」

 それはそうだろう。確かに今回襲われたのは運が悪かっただけで、ボーデ達には過失はない。だが過失がなくても結果は本人がきちんと受け入れなくてはならない。例えば天候不順で作物が全滅した農家がその負債を免れられるだろうか?落雷による火事で失った家財の損害を誰かがなかった事にしてくれるだろうか?特別な備えでもしていなければそれは本人が負担するしかない。「利」を求め「利」と共にある商人がこの「不利」を受け入れられなければ、それは既に商人ではないだろう。

 ましてや奴隷商人であれば、そういう借金を理由に奴隷になる事を納得した相手とも契約術を交わしてきた筈だ。と言うかリーナが正しくそうだ。なのにいざ自分が不運による負債を抱えたらそれをナシにして奴隷になる事をも拒否したら、次回からの契約術に際して必要な納得が出来ず、契約締結が不可能になる。

「そ、それは……」

 どうやら、ボーデもそれは理解しているようだ。

「だが貴方次第で報酬を変更しようと思う。」

 ボーデがこちらの提示を拒否するのは上記の様なデメリットがあるが、こちらが提示報酬を下げるのなら問題はないからな。

「ありがとうございます。どうすればよろしいですか?」

「馬車やリーナ等はもらうが、商会とボーデの奴隷化は別のモノにしよう。」

 先ほどはつい三千年前の感覚で要求したが、未だ一度も街に入ったことも生活拠点たる家もない状況で、いきなり王都の商会を入手したりましてやその商会のトップを奴隷にしたりしたら、どう考えても悪目立ちして平穏な生活が遠のくからな。

「別のモノとは?」

 恐る恐る聞いてきた。

「奴隷契約ではなく条件契約を私と結んでもらいたい。」

 内容としては、


 1:ボーデはアルカとリーナに関する事をアルカの許可なく他者に知らせてはならない。

 2:ボーデは今後アルカからの要請があれば、それに全力で応えて支援しなければならない。

 3:ボーデとアルカはお互いの心身生命を害しない。

 4:上記3項に反した場合、ボーデの場合は称号に「背教者」がつき、ボーデ個人及びボーデ商会関係の資産は全てアルカに接収され無条件の奴隷契約締結となる。アルカの場合は称号に「背教者」がつき、契約が解除になる。


「これがその内容ですか?」

 ボーデはかなり厳しい表情をしながら確認してきた。それはまあそうだろう。第2項によると資産を全部差し出せと言われたら差し出さなきゃならない。

「ああ、これが最終譲歩だ。これが気に入らなきゃ最初の条件にしよう。」

 俺としては是非この案で行きたいが、そんな事は顔には出せない。それに確かにこの条件は全てを差し出すよう要請される可能性がある。だが逆に言うと要請さえなければ差し出す必要はないのだ。ボーデにとっては最初の商会譲渡と奴隷化よりは格段に条件が良くなっていると気づいてる筈だ。


「それではその条件でお願いいたします。」

 しばらくの間悩んでいたがついにボーデが受け入れた。早速ボーデが契約術の準備に入った。

「こちらに血を一滴お願いいたします。」

 酒を入れた盃にボーデが血を垂らしてから言ってきた。俺も指先を軽く切って血を盃に垂らす。それを見届けたボーデが呪文を詠唱すると盃の中の血酒が渦巻いた。それが静まったのちそれぞれが血酒を飲むことで契約術が締結された。



投稿遅くてすみません。

次話はもう少し早く投稿出来ればと思います。

それでは、御意見・ご感想お待ちしております。

なおポイント評価やブクマ等していただけると大変励みになりますのでよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ