主人と召使い
三話目です!!
「聖!!」
愛らしい弟の後ろ姿はどうやら僕の自室に向っているらしい。
「お兄ちゃん!」
昔から変わらぬ天使のような笑顔を向けてくれる。
「こら、家ではお兄様と呼べって言ってるだろう? うるさいのが多いんだから」
「あっ! ごめんなさい」
無条件で向けられていた笑顔が消えてしゅんとなってしまう。
「っ、怒ってる訳じゃないんだぞ? それより、僕に何か用があったんじゃないのか?」
あわてて話題を変えると聖は飛びついて来た。いつも通りの笑顔を浮かべて
「良に会いに行こうと思ったの! さっき茶道の稽古中に部屋に戻るのが見えたから! 久しぶりに遊んでもらおうと思って!」
僕と四歳はなれていた聖はよく良に遊んでもらっていた。
良は面倒見がいいし、主従関係を考慮した接し方をするので誰も気に留めなかったようだが、もしかしたら僕より良になついているかもしれない。
「そうか。僕も今から自室に戻る。一緒に行くか?」
「うん!」
僕と聖が部屋に戻ると良が扉の前に控えていた。
「お帰りなさいませ。香月様、聖様」
胸に片手を当てて深々とお辞儀をする。
「帰った。聖が遊んでほしいそうだぞ。一時僕のそばからはなれる事を許す」
「そのような訳には参りません。私は香月様の下僕、召使いなのであります。あなた様のそばを離れる訳には行きませんので、聖様、部屋の中で遊びましょう」
「はーい!」
良の目に本気の色を見た。
こいつ、昨日の事根に持ってやがる!!
大体、おかしいと思った。
昨日僕があんな事言って良が何もしてこないなんて。
これが報いだというのか!
僕はこれからはあまり軽く言葉にするのはやめようと思うのだった。
誤字脱字等はスルーしてくださると嬉しいです。