卑下する心
続きました!
これの一昔前の作品恋なんて知らないを書いているときはひたすら寒いと言っていたような気がするのですが、今はひたすら暑いです!!
「おはようございます、香月様。本日のご予定は・・・」
次の日の良は恐ろしくいつもと同じだった。
おかしなところもなければ怒鳴ってなくる事もない。
「良? 僕に何か言う事はないのか?」
「いいえ。今のところ急な変更は入っておりませんので。僭越ながら私が今日も香月様のお稽古におつきあいいたします」
そう、いつも通りに笑ったのだ。
いつも通り、作った笑顔で。
「香月様」
僕の前に座っている家庭教師が僕の方を見て言う。
「どうなさいました? お手が止まっているようですが」
「いいや、何でもない」
僕が問題を解く手を再会させると教師は満足したように鼻をならした。
そういえばさっきから良の姿が見えない。
確かつくといってたいはずなのに。
「おい、良はどうした?」
僕が聞くと教師は苦虫をかみつぶしたような表情になった。
「あの汚らわしい庶民の娘でしたら外へ追い出しましたよ。汚らしい外見をしていたものでゴミかと思いまして。香月様もお気をつけなさいませ。下賎庶民の娘です。何をするかわかりませんからなあ」
良を卑下するその目を見て、僕は机の下で強く拳を握る。
そうだ、この教師のときは良をそばにつけないようにと細心の注意を払っていたと言うのに、それを怠っていたようだ。
この家にはこの教師と同じような考えのやつなんてたくさんいる。
金を持っているやつが偉いなんて考えは今や古いというのに。
良は言い方は悪いが庶民の娘だ。
金を持つ家の子ではない。
孤児院から父が僕の遊び相手として引き取って来た孤児である。
それ故、使用人たちからの扱いはひどく、その体を使って主人たちに取り入ったのだという噂までたっている。
もちろん、良の性格と能力を高く評価してよくしてくれている人もいるようだ。僕付きのメイドや執事は全員そうだし、掃除をしている召使いも最近は良に気を許しているようだった。
しかし、今でも良を悪く言うやつは耐えない。
いつかそれに見かねて僕から父上に直談判した事が会った。
父も心を痛め、使用人にやめるようにと通達を出した。
これで安心だと僕が警戒を解いていたとき、メイドから驚きの事実を告げられた。
通達が出された後、良に対する嫌がらせは勢いを増したらしい。
よくも密告したなと見に覚えもない事で小さな嫌がらせを繰り返されているらしい。
良に言っても、たいした事はないと微笑まれてしまった。
昔、それがあまりにも痛々しすぎて良は僕が守ると心に誓ったくらいだ。
「今日は気分が悪い。自室に帰って休む」
早口でそれだけを言うとその部屋を出た。
あんなやつともう一緒にいたくはないと思ったからだ。
部屋に帰る途中、愛らしい後ろ姿が見えた。
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