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誰もいない宇宙船で目覚めたら最強だった件について  作者: Sora
四章 エクシオール星系ノバス王国編

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049_救出作戦開始

ご閲覧ありがとうございます。

少しでもお楽しみいただければ幸いです。

●聖騎士団の小型艦内

王女救出のため、6人のメンバーが並ぶ

レオン・バルザード少佐が淡々とした口調で切り出した。

 「突入についての指揮は私が担当することになった。

ソレント帝国親衛隊、レオン・バルザード少佐だ」

 凛とした声に、場の空気がピンと張り詰めた。

 「ゼフィリウス中尉、同じく親衛隊所属。今回は少佐の副官として同行します。よろしくです」

 「クラフト。傭兵稼業、適当に使ってくれりゃいい」

 「クレア。カテゴリ4の戦闘支援型アンドロイド。ネットワーク浸透、火力支援を担当する」

 「フェリクス・リオン中尉。王国聖騎士団所属。王女殿下のためなら命を惜しみません」

 「クラン・セリュース少尉、工兵。フェリクスとは同期です。爆発物の扱いは任せてください」

 それぞれの紹介が終わると、レオンが手元の端末を操作し、海賊旗艦のホログラフィーを浮かび上がらせた。

 「対象となる海賊船は全長1200メートル。コロニーの外縁ドックに停泊中の旗艦だ。

 コロニーから50キロの地点で我々は射出され、推進スラスター付近を目指して宇宙を移動する」

 「着地ポイントはターゲット艦の後部、推進スラスター付近。

 そこに爆薬を設置後、艦中央のハッチを爆破し突入する。

 王女がどこに監禁されていても、艦中央からなら最短で辿り着ける」

 「なお、突入から、王女救出までを10分で完了する、スピードが命だ」

 全員納得しつつも厳しい戦いになることは明白だ


 「ネットワークからの場所特定が必須だな」

 「問題ありません」

 クラフトのつぶやきにクレアが即答とする。

 「内部構造の予測から、後部のカーゴスペースには白兵戦用のパワーアーマーがあるはずだ。もし王女が前方にいる場合、後方からアーマー部隊に挟まれる可能性がある」

 「じゃあ、侵入後に後ろから来る敵には移動しながら爆薬撒いて一網打尽、ってことでいいですか?」

 クランが口を挟んだ。

 「それでいい。爆破のタイミングは都度、私から指示を出す」

 「突入後、前衛は私とゼフィリウス、次に傭兵の2名。後方に王国の聖騎士2名。敵は排除し、最短ルートで王女を救出、そのまま船を離脱する。そのころには聖騎士団と傭兵部隊がコロニー内の海賊一掃のために大規模な侵攻を開始している段取りだ。質問はあるか?」


 「待ってください」

 クレアが一歩進み出る。

 「前衛はあなたの副官と私が適任かと。重火器を持っての高速移動ならば、その方が適しています」

 「連携の訓練をしていないが……」

 レオンがクラフトを見る。

 「少佐は俺との連携が不安てことですか?」

 クラフトがニヤッと笑う。

 「いいだろう。前衛を任せる。ゼフィリウス、連携して前衛を担当しろ」

 その時、艦内アナウンスが鳴り響く。

 『現在、コロニーからの離脱地点まで10分。全員、射出用カタパルトへ移動』


   *

 射出用区画にて。6人が宇宙服を身につけ、順にカプセルに収まっていく。

 「でかい銃持ってますね、クレアさん」

 ゼフィリウスが軽口を叩く。

 「女性の身で、そのサイズとは……やりますね?」

 「あなたと同じ仕様ですので」

 クレアが冷ややかに返す。

 「確かに、俺も同じの背負ってた」

 ゼフィリウスは苦笑しながら、銃のベルトを締め直す。

 「――カウントダウン開始、10、9、8……」

 「休暇に来たはずなのにな……」

 クラフトが苦笑いを浮かべる。

小型船のブリッジから通信が入る。

 『全機、準備完了。カウント5より順次射出開始――』

 緊張が最高潮に達する。

 『5……4……3……』

6名がカタパルトから射出される。

時速300キロ、10分間の宇宙遊泳が始まった。


●同時刻海賊船旗艦ブリッジ

海賊旗艦〈バロック・カラミティ〉のブリッジは、鉄骨剥き出しの構造と焦げたオイルの臭いが充満する、いかにも荒くれ者の巣窟といった様相を呈していた。

そこに居並ぶ七つの影は、もはや人の原形を留めてはいなかった。

艦の中央制御席に鎮座する男、グラド・ロスバル。

その肉体は、頭部の一部を除き、すでに完全な機械へと置換されていた。

金属の骨格に覆われた胸郭はゆっくりと動き、眼窩の奥では複眼型の義眼が淡く赤く輝いている。

「……そろそろ来るな」

声は機械処理された低音で、甲高いノイズを帯びていた。

周囲の6人──いずれも部位こそ異なるが義体化を施された海賊たちが、無言のままグラドを見つめる。

彼らにとって「肉体の維持」はもはや無駄な贅沢だった。必要なのは力と機能、そして生存確率だ。

「奴らは──突入してくる。人質の損耗は覚悟の上で、俺たちの首を狩りに来る。それが聖騎士のやり方だからな」

部下の一人が口を開いた。顎の半分が合金のフレームに置き換わり、動くたびにきしんだ音がした。

「計画通り、逃げるんですか。仲間は……?」

「全て、捨てる」

グラドの返答は一片の迷いもなかった。

「そもそも俺たちは、三〇〇〇億クレジットを狙ってここに来た。

この鉱山施設は帝国と王国の取引拠点。表に出せないクレジットが大量に保管されている。換金も不要、“価値”そのもの。鉱石なんぞより、よほど価値がある」

「鉱石も、設備も、他の仲間も──すべてはクレジットのための餌だ。

海賊ってのはそういうもんだ。掴める時に掴み、逃げられる時に逃げる。名誉も誇りも、死んだら終わりだ」

グラドは立ち上がる。油にまみれたフロアに義足が重く響いた。

「〈レヴェランス〉の準備は?」

「完了しています。燃料も残量十分。高速ワープも可能です。ステルスモードは三分間維持可能」

人工声帯を通した冷静な報告が返る。

〈レヴェランス〉──旗艦に搭載された高速脱出艇。船体サイズは小さいが、出力は中型艦級で、航続距離と機動力では追撃すら不可能な仕様だった。

彼らは最初から、〈バロック・カラミティ〉を囮にする前提で動いていたのだ。

「コロニーに火の手が上がれば、聖騎士団の大部隊が正面から突撃してくる、そうしたら母船と一緒にコロニーすべてを爆破して逃走する」

「……王女はどうします?」

最も若い部下が問う。義体の関節部から青白いスパークが漏れ、焦げた樹脂の匂いが漂った。

「“餌”にする。あれは、わざと手の届く位置に置いてある。

守るべき象徴がそこにいると分かれば、確実にそっちへ向かう。

それが罠だと分かっていてもな」

「罠ごと渡す、と」

「ああ。連中が突入する頃には、俺たちはすでに〈レヴェランス〉に乗っている」

誰も言い返さなかった。

この空間では、忠誠も信義も存在しない。

それは海賊という存在の原則だった。奪う者と奪われる者、そして死ぬ者だけが存在する。

「準備を続けろ。俺たちは、確実に生き延びる。残すな。残されるな。それがこの海の掟だ」

グラドの義眼が赤く光った。

その背後で、非常灯が一度だけ、静かに明滅した。

お読みいただきありがとうございました!

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