048_王女奪還に向けたブリーフィング
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惑星ノバスの王都から発信された緊急連絡により、エクシオール星系全域が静まり返っていた。
王女セシリアが人質となった事件の衝撃は大きく、王政の威信すら揺らぎかけていた。
そんな中、行動を起こしたのは、ソレント帝国第二皇子ユリウス・ヴァル=ソレントだった。
「帝国として、この事態を見過ごすわけにはいかない」
ユリウスは外交ルートを通じてエクシオール国王へ連絡を取り、事態収拾のための支援を申し出た。最初、王国側は帝国の介入に難色を示したが、ユリウスは落ち着いた口調で付け加えた。
「王女殿下との婚姻の件について、正式に進展があるとお考えいただければ――帝国としての関与も、理解しやすくなるでしょう」
その言葉に、王国側は態度を軟化させた。たとえ嘘でも、外交上の建前には都合が良い。
さらにユリウスは、あくまで中立性を担保するためとして、外部傭兵ギルドの参加も提案。これにより、王国側も「失敗した場合」の逃げ道を得た。
そして、その日のうちにブリーフィングが開催された。
会場には王国聖騎士団の司令官、帝国の外交担当官、ユリウスと彼の親衛隊、さらには複数の傭兵ギルド代表がモニター越しに集結した。クラフトとクレアもその中にいた。
「我が聖騎士団は、コロニーへの突入を以て海賊の掃討を行う。主力は我々が担うが、傭兵諸氏にもバックアップを願う」
司令官の言葉に数名がうなずく中、レオン・バルザード少佐が一歩前へ出た。
「失礼ながら申し上げます。一斉突入と同時に王女救出を図る案では、海賊母船が即座に離脱を試みる危険性があります」
「王女の扱いについては、国王陛下から他の人質と同等にせよと命を受けております」
司令官の声がレオンの進言を遮る。しかし、その背後からクラフトが声を上げた。
「海賊ってのは、奇襲を受けた時、まず状況の把握、あるいは即時退却を優先する。つまり、逃げるための母船が急襲を受ければ、逃げずにその場に留まり、状況を把握しようとする可能性が高い。最初に母船を攻撃するのはありだ」
騎士団の面々がざわついた。レオンが言葉を引き継ぐ。
「レーダー探知範囲外より、少数精鋭の部隊を直接射出する。目標は王女殿下の救出と、母船の航行不能化だ。これにより敵の動きを封じ込め、後続部隊の突入を安全にする」
「リスクが高すぎる」
騎士団から不満の声が上がった。
「我々は参加しない」
「その役目は帝国が請け負う、ユリオス殿下の意向でもある」
レオンが声をあげた。
「帝国からは、私と部下が参加する」
「傭兵ギルドからはどうか?ドクタスで実績をあげた者もいると聞いている」
レオンがクラフトの発言を促してくる。
クラフトは腕を組み、短く答えた。
「報酬次第だな」
あのお姫様、これを見越してたのか?
ギルドの責任者が口を開く。
「ギルドの規定に則り、最低8000万クレジットの前金と、同額の成功報酬。それと王国との交渉で追加の支払いがある」
「……いいだろう。俺も出る」
クラフトが答えると、すかさずクレアも口を挟む。
「私も同行します。護衛として、傭兵として」
「四人か。あと二人は?」
聖騎士団の司令官が、やや渋い表情で周囲を見渡した。
沈黙を破ったのは、金髪の若き騎士だった。甲冑の肩章に中尉の階級章が光っている。
「フェリクス・リオン中尉。志願します。王女殿下にはかつて、私の妹を助けていただいた恩がある」
整った顔立ちの中に、静かな情熱が滲む。
もう一人、背の低い青年が手を挙げた。切れ長の目が冷静さを物語っている。
「クラン・セリュース少尉、同じく志願します。損耗覚悟の作戦なら、母船を狙うなら工兵がいた方がいい。爆破と妨害、任せてください」
フェリクスは義と忠誠を背負った正統派、クランは冷静沈着な実務派――二人の対照的な若者が、沈みがちだった聖騎士団の空気を変えた。
司令官がゆっくりと頷く。
「いいだろう。六名。奇襲部隊としては妥当な人数だ」
ブリーフィングの終わりに司令官が告げる。
「現地への移動手段はこちらで手配する。装備は各自持参。出発は一時間後だ。以上」
その瞬間、作戦は動き出した。
クラフトは静かに腰を上げた。
「ったく、予定外もいいとこだな」
クレアが微かに笑う。
「でも、見捨てられないのでしょう?」
クラフトは苦笑いを浮かべる。
冷たいようで温かい決意が、六人の胸に宿った。
今、運命を賭けた奪還作戦が始まろうとしていた。
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