043_王宮からの招待状
朝の陽光が、惑星ノバスの空に柔らかく差し込んでいた。
シルバーナの工作室には、完成したばかりの猫型ロイドの部品が並んでいた。艶のあるセラミックの装甲と、瞳型センサーがきらりと光る。
「……いい仕上がりだな」
クラフトがモニターを確認していると、通信パネルからナビの声が届いた。
「これは“ペットロイド”ですか?」
「まあ、そうだな。猫型ロイドだ。かわいいだろ」
「良いと思います。殺伐とした傭兵家業でも癒しは必要です」
ナビはいつも通りの口調だ、こいつがナビのリモート義体だと言ったらどう反応するのだろう?
クラフトは作業を終えてホテルの部屋に戻る。するとテーブルに一枚のカードが置かれていた。
「王宮から、だと?」
封筒にはギルドの封印も押されている。クラフトは眉を上げ、端末を操作してギルドに確認を入れた。
ギルドの担当者はとても丁寧だった。
「シルバーナのキャプテンクラフト様ですね。ご連絡ありがとうございます」
「あなたのドアーズ星系での功績、企業連合からの推薦もあり、王宮より晩餐会への招待が届きました。参加されるかは自由ですが、ギルドとしては是非ご出席いただければと考えております」
「……どうする、クレア」
クラフトがソファに座るクレアに視線を向けると、彼女はわずかに首を傾げた。
「特に断る理由もございません。おいしい料理が出るなら、むしろ行くべきかと」
「だな。あと……」
クラフトは少しだけ視線をそらした。
「お前のドレス姿、見てみたいってのもある」
「それは、ドレスを選ぶモチベーションとして妥当ですね」
微笑むクレアの表情に、いつもの静かな気品が宿っていた。
*
その頃、エクシオール王宮では、淡金の髪を揺らす王女セシリアが、来訪者を迎えていた。
アーチを描いたテラスの向こうから現れたのは、白銀の髪と蒼い瞳を持つ青年。ソレント帝国第二皇子ユリオス・ヴァル=ソレントだった。
「久しぶりね、ユリオス殿下。ノバスの海は気に入ったかしら」
「おかげさまで。海風も空も、あなたの記憶どおり、美しい」
礼儀正しくも温かみを持った声。
セシリアは微笑を浮かべ、控えめに頷いた。
「忙しくなる前に、顔を見に来たんだ。最近は、宮廷も帝国議会も殺伐としていてね」
「帝国も、落ち着いてはいないのね」
「お互いさまだろう」
二人は社交辞令を交わすようでいて、どこか親しみがこもっている。
それはかつて、星間留学の場で共に学び、語り合った時間の名残だった。
「滞在先は?」
「ホテル・オークノバス。護衛も最小限にしてある。公式ではなく、ただの“休暇”だからね」
ユリオスは少し笑い、背後の従者二人に目をやった。
「彼らも休暇気分のようで」
「警護担当、レオン・バルザード少佐です。こちらは副官のゼフィリウス中尉」
「王女殿下、光栄です」
ゼフィリウスが明るく頭を下げる一方、レオンは微動だにせず、静かに一礼だけした。
「レオン少佐には帝国内でも聞き覚えがあるわ。親衛隊の中でも最も冷静な指揮官と聞いています」
「恐縮です、姫殿下」
その声は機械のように無機質だった。だが、まっすぐな忠誠心が背筋から伝わってくる。
「明日の晩、王宮主催のパーティーがあるの。もしよければ……友人として、顔を出してくださらない?」
セシリアの目はまっすぐだった。ユリオスは一瞬だけ目を伏せてから、柔らかく笑った。
「もちろん。あなたの“お願い”を断るほど、不義理ではないつもりだ」
そして、傍らのレオンとゼフィリウスにも視線を向ける。
「二人にも、出席してもらう。騎士団や他国の貴族とも接点を持っておくのは、無駄ではないからね」
「了解しました、殿下」
「ドレスコードだけは把握しておきますね!」とゼフィリウスが楽しげに言った。




