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3話

その後も草原を散策して角ウサギを5羽程仕留めた。

角や毛皮はたまに落ちたり落ちなかったりした。

ウサギ肉はそれ程大きい訳ではなく小さい。

ウサギを1羽倒せば手羽先程度の肉塊が1つ2つ落ちる。


(角、っていうか針だよなぁ……)


フォルム、サイズ感は箸が近いだろうか。

なかなかに凶悪な代物だ。

時刻は夕暮れ。暗くなると何も見えなくなるので街へ帰宅する。

本日の成果は角ウサギの角3本、毛皮4枚、ウサギ肉が7本。

ウサギ肉は紐で吊るしている。

紐はウエストバッグの中に入っていたものを使った。

というかウエストバッグの中には色々入っていた。

紐は勿論、小さい瓶に入った丸薬、細長い瓶に液体が入ったものが二本入っていた。


(ドワーフ爺……)


不器用なドワーフ爺の優しさに思わずキュンとしてしまいそうなクレハ。

これからもあの店に行こうと決めた。


(ところでこのアイテムはどうすれば良いのだろうか)


いつまでも肉を吊るしておく訳にはいかない。

どこかアイテムの売買が出来る場所は無いだろうか。


(……まず、門の衛兵に聞いてみるか)


丁度門は空いている様だったので衛兵のおっさんに一直線。


「ん?お?あぁ、なんだ昼間の御使いか……通って良いぞ」


「あ、いえ、聞きたいことがあるんですが」


「聞きたいこと?」


「はい、角が生えたウサギを倒したんですけど角とか肉とか売れる場所知りませんか?」


「ああー角兎(ホーン・ラビット)か……そんなら冒険者組合(ギルド)が買い取ってくれるんじゃねえかな」


あの角ウサギはホーン・ラビットというらしい。

そのままではないか。

しかし一つ聞き覚えのない名前が出た。


「冒険者ギルドって何ですか?」


「知らないのか?冒険者ギルドってのは冒険者を支援する組織だ……冒険者は分かるよな?」


「すみません知りません……」


「マジかよ。冒険者は魔物(モンスター)を狩ったりギルドからの依頼をこなして生計を立ててる奴らだ。冒険者も知らないとか、ここに来る前に神様から教えて貰えなかったのか?御使いも大変だな」


「教えてもらう……みたいな事は無かったですね……というか僕が御使い?とかって何で分かるんです?」


「ん?そりゃ〈解析(アナライズ)〉の魔法使ってるからな。術式を思い浮かべて魔力を目の辺りに集めりゃ相手のステータスとかが見える……ってお前レベル上がってるな」


(な、なんだそれ)


ポカーンとしてしまうクレハ。

情報が多い。


「ぎゃははは!なんだお前、御使いなのに魔法も教えられてねえのかよ!?神様も酷ぇことすんなぁ!」


おっさんはゲラゲラ笑う。

クレハはひたすらしょんぼりするしかなかった。

するとひとしきり笑ったおっさんが──


「まぁまぁそうしょぼくれんなよ坊主。魔法ならスキア魔法店の婆さんに教えて貰いな。銀貨二枚くらいで魔力の扱い程度は教えてくれんだろ」


その後おっさんに冒険者ギルド、スキア魔法店、ついでに安い宿の場所を教えて貰った。


(魔法かぁ……)


折角だから魔法も使ってみたいところである。

しかし魔法を覚えないとステータスが見れないとは、このゲームどれだけの初心者プレイヤーが脱落することだろうか……


(そういえばプレイヤーっぽい奴は見掛けないなあ)


少なくとも現代的な語句を使っている人は見なかった。

ニュースを見る限り相当売れていた様だが何故だろうか。


(ログアウトしたらネットで……あ……)


そこでクレハは思い出す。

そう、ログアウトだ。

既に数時間はゲームを続けている。

そろそろ寝ないと明日に響く。


(やばい……明日普通に学校だった……)


教えられた宿へ急ぐクレハ。


(いや、その前にログアウトすれば宿いらないんじゃ……?)


ログアウトすれば身体が消えるパターンなら宿は要らない。

しかし──


(ログアウトってどうすればいいんだ……)


そう、クレハにはログアウトの仕方が分からなかった。


(ていうか、そもそもオプションとかどうやって出すんだよ)


天下の往来で呆然としている訳にもいかないので、取り敢えずちょっとした路地に入る。

建物の壁に背中を預けてクレハは奇行を取り始めた。

中空で手を上下左右にさっさか動かしたり、ログアウト……ステータス……オプション……とかボソボソ呟いたり。

何を試してもどうにもならなくて涙目になり始めた、その時。


「何やってんだいアンタ」


突如路地の奥から婆さんが現れた。


「えっ、あっ……いや、その……ろ、ログアウトを……」


「ろぐあうと?何だいそりゃ……あぁアンタ御使いかい」


「何かそうらしいです……」


「そういや何か御使いには変な魔法が使えるとか……それが使えないのかい?」


「そ、そうみたいです」


「何だいアンタ若いのにシャキッとしないねぇ……」


「スミマセン……」


婆さんに叱られてしょんぼりするクレハ。


「第一アンタ。魔法使うのに魔力使わないでどうすんのさ」


「えっ?」


魔力を使う、と言われた。

そう言えば魔法の使い方を知らない。

魔法の名前でも言えば使えるのかと思っていたが。


「魔力を使うってどういうことです?」


「本気で言ってんのかい?アンタ魔力の使い方も知らないで生きてきたのかい?」


「え、はい……」


婆さんは心底あり得ないという顔をしてクレハをまじまじ眺めた。


「……まったく驚いたよ。心臓に悪いガキも居たもんだね」


「スミマセン……」


「しょうがない。今日は店仕舞いだったんだけどね」


そう言いながら婆さんはスタスタと表通りに出ていく。

クレハがしょんぼりしていると──


「何タラタラしてんだい。置いていくよ」


「はい?」


「魔力の使い方が分からないんだろう?教えてやるから早く来な」

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