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32話

33話が34話になっちゃった……。

クレハはトータにメッセだけ送って魔法屋ババアの所へ向かった。


「こんにちわー婆さん、いますかー」


「……なんだいアンタか。何の用だい、まったく……」


カウンターの魔法屋ババアは読んでいた本を傍らに置いて心底鬱陶しい(が、応対しない訳にはいかない)という風に返事をする。


「実は魔晶(マナ・クリスタル)を買い取って貰いたくて……」


「またかい。別に魔晶(マナ・クリスタル)に困ってる訳じゃないんだよこっちは……」


そう言われるとこちらはしょぼ暮れるしかないのだが。

とはいえ一応買い取ってくれるつもりではあるらしくカウンターの下から皮袋を取り出して銭を探っていた。

クレハは魔晶(マナ・クリスタル)を二つ婆さんに渡した。


「これです」


「……ふん。まあまあだね。銀貨3枚だ」


「あと……」


と、ドワーフ爺に聞いた通り狗頭人(コボルト)の毛皮を見せてみることにした。

受け取る際に婆さんは訝しげな表情をしていたが、懐から古びた片眼鏡(モノクル)を取り出し着けて眺める。


狗頭人(コボルト)の皮……アンタよくこんなもん拾おうと思ったね」


「いや、お金が惜しくて……」


魔法屋ババアでもこういった反応をする程度には忌避感があるらしい。


「……これって使い途とかあります?」


「上等もんなら魔導書(グリモワール)の装丁……そうだね表紙に使うがコイツはんな上等なもんでもないし、そもそも狗頭人(コボルト)のを使うくらいなら人間の皮でも使った方が良いに違いないよ」


「に、……」


使うんだ、人皮。とほんの少しだけ引いてしまうクレハ。


「ま、そんな奇特な趣味の奴らは地下隠りの外道魔術師か帝国のロクでなし共だけだろうがね」


「……あ、魔法使いの中じゃ一般的って訳ではないんですね」


「当たり前だろうがい。人皮使ってるって事は人を殺してるって事さね。んなもん一発でお縄さ」


お縄にならなければやるという事だ。

というか人皮で本を作れば何か良いことでもあるのだろうか。

そういう口ぶりに聞こえる。


「……ま、この程度の皮なら精々少し丈夫な羊皮紙代わりってとこだね銀貨5枚で買い取ってやるよ」


「あ、じゃあそれで……」


魔晶(マナ・クリスタル)二つ、狗頭人(コボルト)の毛皮一枚で計8000リル。


「そういえば狗頭人(コボルト)の肉って使い途あるんですか」


「……」


婆さんが物凄く嫌そうな顔をした。


「……まあ豚の餌くらいにはなるんじゃないかい」


しつつも答えてくれる辺りありがたい限りではある。

アタシゃんなもん食った豚は食いたくないがね、という呟きから使い途が無いという事が分かった。


「ところでアンタ。あの小妖精(ピクシー)はどうした」


「今は相方の方ですね」


「そうかい、丁度良い。ちょいと聞きな」


「?」


婆さんがいつになく真剣な顔でそう言うので、クレハとしては姿勢を正して傾聴するしかない。


「こないだ話を聞いて分かったんだが、あの小妖精(ピクシー)は厄介事だよ」


「いえ、それは俺らも重々感じて……」


「そういう意味じゃない。いいかい。良くお聞き。あの小妖精(ピクシー)と行動してたらアンタら間違いなく“向こう”に脚を踏み入れる事になる」


「……はあ、というと」


「妖精郷だよ。あっこじゃ何が起きるかなんて人間の尺度じゃ予測も理解も出来ない。この世の理から外れた場所だ。最悪アンタらは妖精(フェアリー)同士の殺し合いだか戦争だかに巻き込まれる。死ぬだけなら良いが多分それだけじゃ済まないよ」


「……」


アルフェがそんな厄ネタとは到底……いや、案外何となくしっくり来る気はする。

とはいえ、妖精郷というのは気になってはいるし、トータは間違いなくそういうザ・冒険は大好きだろう。


「あのアルフェとかいう小妖精(ピクシー)はただの妖精(フェアリー)じゃない。存在規模(レベル)こそちっぽけなモンだが、どこかおかしい。小妖精(ピクシー)にしては多才すぎるんだよ」


「そうなんです?」


「ああ。まあアレ自体に悪意やら害意やらなんてモンはないがね。寧ろよくもまぁあんな能天気な様で生きてこれたもんだよ。一緒に居た奴らは相当アレを箱入りにしてみたいだ。だがね、何度も言うけど妖精(フェアリー)ってのは“そう”と決められた存在意義から外れることが出来ないんだよ。そういう“もの”なんだ」


「……」


随分と熱心に忠告してくれる。

だが一応邪霊樹精(イビル・トレント)を倒すという約束はしたし、アルフェの信頼を裏切るつもりもない。


「……忠告はありがたいんですけど少なくとも邪霊樹精(イビル・トレント)を倒すまでは……」


「そりゃそうだろうが。妖精(フェアリー)相手に約束を反故にするなんて事考えんじゃないよ。しっぺ返しは手痛いじゃ済まないからね、特に妖精(フェアリー)は。アタシが言ってんのはそれを何とかしてからの“次”の話さね。それ以上は手を引いた方がいいって事だよ、まったく……」


「し、しっぺ返しって……?」


「んなもんその時にならないと分かるわけないだろうがい。妖精(フェアリー)なんてその場とノリと勢いと空気で生きてるからね。そん時の妖精(フェアリー)が感じた悪感情に応じて相応の事が起こるとしか言い様がない」


「そんな無茶苦茶な……」


「だから言ったじゃないかい、そういうもんだって。──だがあの小妖精(ピクシー)はそれだけじゃ済まないかもしれないね。何か分からないけどアレは“視られてる”みたいだから……」


視られてる。

アルフェが、ということか。

突然ホラーな話になってきた。


「ま、よくよく考えておくことだね。どうあれ決してマトモなもんじゃない事は確かだ」


「……肝に銘じておきます」


「あと、術式の勉強もしとくんだよ。魔力操作が多少マシになった程度じゃ、魔導師(メイジ)の魔法は防げやしないし、王都の騎士連中とは勝負にもならない」


「分かりました。色々ありがとうございました」


色々気になる話が聞けたので、追い返される前に店を立ち去ることにしたクレハであった。

はじめてのおつかい的なサムシング。

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