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Angels

ついに、ガブリエルブレインを手にすることになったジャンヌ。(&クエスの借金もチャラ)


オラ、何だかワクワクすっぞ!


「いやー、借金無くなって気ぃ楽になったわ」


教会に戻り、クエスは帰路の途中にあった自販機で買ったスポーツドリンクを一気に飲み干した後言い放った。一種のやけ酒のようなものだろう。


「パチンコは暫くお休みですね」


「そやな」


「ギャンブル依存は治すの大変ですから、バッサリキッチリ切ってください。」


まく朗が珍しく正論を言っている。

何だかアンゴルモア大王が遅れてやって来ないか不安になる。そして、苦笑いするクエスの再犯率にもやや不安があるぞ。


「じゃ、開けるな」


クエスは祭壇にある聖母像の前に立つ。そして、服の裾から鍵のようなものを取り出した。そして、それを聖母像の右足に押し当て、何かを唱え始めた。


御神様(おんかみさま)生簀様(いえすさま)殼市八様(がらしゃさま)。道をお明けください」


パスワードみたいなものなのだろうか。全てを言い終えると、教会の中にゴゴゴ小さな地響きがおこる。


「どや、これで秘密の入り口が開いた。ド⚪クエみたいやろ」


「RPGツク⚪ルならスイッチひとつでできそうな仕掛けですね~」


「まく朗ちゃん、例えがマニアックやな」


「マイクラで例えるよりはライトですよ」


「ははは、ほな、いくで」


教会の右の扉を開いた先の青いブロック塀が不思議な魔力を漂わせる地下道の途中に、ぽっかりと穴が開いていた。仕組みは分からないが、この部分の壁だけスライドするようになっているのではないだろうか。


「わー隠し通路です! 黄金の爪とかお宝が眠ってそうです」


「ミイラとかモンスターは出てこんから安心してな」


「大丈夫です~この前ドラゴンに殺されそうになったから怖くないですよちびりません」


「まあ、どのみちジャンヌ様がいればモンスター出てきても大丈夫やろな」


それはそうだが、流石に1歩歩くごとに敵とエンカウントするとかみたいなレトロゲームでよくある事になったら嫌だ。あれは辛いし面倒なのだ。昨今のアプリゲームやヌルゲーに慣れた者には、あのような理不尽はなかなか耐えられないのではなかろうか? 。特にFCのドラ⚪エの2あたりはその理不尽の最たるものであり、昔クリアした者が英雄視しされて然るべき難易度なのだ。ああ、話が脱線した。


「着いたで」


意外と目的の場所は近かった。

そこは、謎の装置がごたごたと存在し、パイプが壁を(つた)っており、何台も設置されたパソコンには心拍数を図る機械のような白い線が脈をうっているSF小説にでも出てきそうな、地上にある柳ヶ瀬商店街とはかけはなれた空間だった。地下教会という時点で異様であるが、これはさらに想像の範疇から飛躍している。


「うわー、サイエンティックですぬ」


「これが昭和の時代からあったんや。じい様と漆原の技術力にはアメリカのCIAもビックリやな……まあ、実際にあそことも関わったんやけどな……」


「それは、すごいですぬ」


まく朗の語尾かおかしくなるのも無理はない。こんな機械だらけの未来的な光景を見せられては、世界を揺るがす一大事が起こったのは間違いない。


「これ、電気代かかりませんか?」


「あー、そこを突きますかまく朗ちゃん。そこは安心せい、ここの維持費は漆原のお家が出してくれてるんや」


「それは、ヒモですぬ」


「そんだけ、ガブリエルブレインがデリケートな存在ってことや」


そのガブリエルブレインは、機械の管が集まるあの試験管の内部の泡の中で光輝いているものだろう。その姿はまだはっきりと見えない。


クエスは、パソコンに備え付けられたキーボードとマウスを使い、何かの画面を開いたりパスワードを入力したりを繰り返す。海外映画の爆弾処理班のように手際が良い。流石は世界の危機に立ちあ合ったであろう人間だ。


「よし……天使さま、お外に出しますよ」


液体が抜けて行く。

そして、煌めく物体がその姿を現した。それを、クエスは試験管の上蓋を外して丁寧に、大事そうに取りだす。


「これが、ガブリエルブレインや」


クエスが、私に差し出したその塊は、おおよそ天使の頭脳と云うよりも瞳と言う方が近いエメラルドのような澄んだ美しい宝石が組み込まれたペンダントだった。


「思ってたのと違いますね」まく朗はとぼけた顔をした。


「綺麗やろ」


「そうだな」


「さわってみ。ジャンヌ様が聖女なら、きっと何かが、起こるよ」


宝石に人差し指を当てる。

すると、透明であったその身は蒼く、燃えるような光を放ち始めた。


「これは……」


「そうか。親父さんの目は、確かやったか」


「何を意味するんた?」


「この石は、強い意志を持った者にだけ反応する。石だけに」


「無理矢理繋げていないか」


「あ、わかる? ま、正確には魔力とか神性とか運命力とか何かだと思うよ。別に大して意志が強い訳でもないウチにも反応するし」


普通ならすぐに触りたがりそうなまく朗だったが、なぜかここではでしゃばってこない。ちょっと意外に感じた。


「やっぱり、ジャンヌ様は聖女なんですね。魔法とか使ってたし」


「今のところ2分の2だし、実は誰でも反応するかもしれないぞ」


「いや、それは違うよ。ウチが知ってる限りでは、これが反応したのは自分とジャンヌ様含めて4人だけや。死んだじい様も、漆原のお家でも、一人を除いてガブリエルブレインの<祝福>をうけてない」


「しゅくふく、か」


「そう、呼んどる。天使さまの好意を受けた証やと、ガラシャ様も、言っておったらしい」


「細川ガラシャ、彼女も聖女の類いだったのだな」


「あの人は、歴史の影で大きな影響を及ぼしたんや。それは、太閤秀吉殿や、徳川家康に匹敵する」


「そこまで言うのか」


「実際にそうやし。明智光秀の三日天下もカモフラージュみたいなもんやったらしいし」


「何だか、今まで聞い他にもとんでもない真実を知ってるんじゃないのか?」


「まあ、話すとどこかの聖杯戦争以上の規模だし長くなるから今は割愛するがな」


「鯖が出てきたとかしてそうで気になりますぬ」


「ゼロどころかイリアスとオデュッセイア足したのより長いよ」


「またにしますぬ~」


クエスは冗談のつもりなのかそうでないのかわからない顔でにっこり微笑むと、ガブリエルブレインを、力強く私の右手にぎゅっと握らせた。


その瞬間、私の身に時の音が響き渡る。


人智を超えたその音は、柳ヶ瀬の歩んだ時を走馬灯のように映し出す。喜び、悲しみ、怒り、苦しみ、幸福に空腹、それらが私の中を颯爽と逆流し、その果てには光輪持つ女神が待つ。それは、天使様なのかはたまた人の根源なのかはわからない。ただ1つ解することができたのは、それがとてもとても暖かいということのみであった。



あなたにお聞きしたい。

あなたは、知っているのですか。

我々が向かおうとする結果を、あなたは既に見据えているのですか。それを知った上で、あなたは私にこのような優しい眼差しを向けてくださるのでしょうか。


この「寛大なる御慈悲」の意味は一体…………











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