ようこ、防具を手に入れる
ロビはお店にやって来たおばあさんに気づくと、嬉しそうに笑顔で挨拶をした。
「おはようございます。本当に来てくれたんですね! うれしいですよ!」
「おはようございます。そうなふうに言っていただいて、わたしも嬉しいわ」
するとその時、ロビはおばあさんと一緒にいる黒猫に気がついた。
「おや? その黒猫……。もしや眷属ですか?」
それを聞いた黒猫は静かに答えた。
「はい。わたしは洋子殿を主人としております」
「おぉ……。まさか、マガイルーの猫の魔法使いを眷属にしてしまうとは、洋子さんすごいなぁ……」
驚いているロビにおばあさん少し照れくさそうに笑うと、おばあさんはロビの横に座っている2人のプレイヤーにも挨拶をした。
「おはようございます、洋子です。よろしくお願いしますね」
「「……」」
2人のプレイヤーは下を向いたまま恥ずかしそうに黙ってしまった。
それを見たロビはおばあさんに話した。
「洋子さん、この2人はチョット恥ずかしがり屋で。あの……」
「うふふ。わたしはぜんぜん気にしてないわ。お二人とも、急に声を掛けてしまってごめんなさいね」
「……ぁ」
「……ぅん」
するとロビは、静かな2人をおばあさんに紹介した。
「ええと、右に座っている彼がミツで、左に座っている彼が、ゆぅです」
ミツとゆぅはロビに紹介されて静かに頭を下げると、おばあさんは2人が綺麗な防具を身につけている事に気がついた。
「あら、お2人とも綺麗な防具を着ているのね」
「……ぇ、ぁ、はぃ」
「……ぃや、はい」
するとロビが説明をした。
「この2人は凄いんですよ。その防具はホワイトドラゴンの鎧で、武器もホワイトドラゴンの武器なんです」
「あら、まぁ。ホワイトドラゴン知ってますよ! 最強なんでしょ? あなたたち凄いのね!」
「……ぁ、は、はは」
「……は、はぃ。はは」
「わたしも、いつかそんな綺麗な鎧を着てみたいわ。うふふ」
すると、2人はおばあさんに静かに言った。
「……ホワイトドラゴンのは……クエスト進めて……鍛冶屋が……開放されないとだけど」
「綺麗な防具だったら……イークラトに……行けば」
それを聞いたおばあさんは嬉しそうに言った。
「お2人とも嬉しいわ。アドバイスありがとう。でもイークラトは敵が強いんでしょう?」
するとロビが嬉しそうにおばあさんに言った。
「この2人が居れば大丈夫ですよ! 僕もイークラトの町で仕入れたい物があるので、良かったら今から一緒に行きませんか」
「え? まぁ……、いいのかしら?」
「……ぅん」
「……ぃきましょぅ」
「まぁ、お2人ともあがりがとう! うれしいわ」
こうしておばあさんたちは船でイークラトへと向かった。
◆
イークラトへ船で向かう途中、船の上でロビがおばあさんに尋ねた。
「洋子さん、失礼だったらごめんなさい。その人生経験豊富な受け答えと、ええと、なんと言いますか……」
「うふふ、ロビさん鋭いわね。実はわたし、75歳のおばあさんなのよ。でも内緒よ」
「あ、はい大丈夫です。僕も57歳なんで」
「あらあら、どうりでロビさんシッカリしてらっしゃって」
「いやいえ、まだまだです。でも彼ら2人はまだ20代で、昔は僕の部下だったんですけど……」
「あら、何かあったんですか?」
「いやぁ、フレア・ウィルスで会社が倒産しまして……」
「まぁ……。お2人とも大丈夫なのかしら」
すると2人のうちミツが答えた。
「ぼく……たちは、ロビさんの仕事……ぁるんで」
「あら、ロビさんが仕事を?」
「はい」
するとロビがおばあさんに説明した。
「実はピンデチのあのお店はクエストをクリア出来ない人を助けるお店なんです」
「あら、そうなのね。じゃあ、あのお店はクリアする事を売っているのね」
「はい。このゲームは限定的ですが現実世界で商売することも許されているので、2人に仕事をしてもらっているんです」
「まぁ、素晴らしいじゃないですか!」
「ありがとうございます。現実世界のフリマアプリで『クリア保証』のクエストサポートを販売しているんです」
「ロビさん、本当にシッカリしてらっしゃるわね」
「いえいえ、そんなそんな……」
そんなことを話しているうちに船はイークラトの港に到着した。
おばあさんたちは船から降りると、ロビが出現させたバギーのモービルに乗りかえた。
「ではイークラトへ行きましょう!」
「はい、お願いします!」
ロビはバギーを走らせた。
ー イークラトの町 ー
おばあさんたちはイークラトの町に到着すると、バギーから降りて町の中へ入った。
おばあさんはロビの後について大通りを歩きながら周りを見渡すと、一緒に歩いている黒猫に言った。
「猫ちゃん、この町の人たちはみんな綺麗な防具やキラキラした武器を持っているのね」
「はい。ここが最後の町ですので。みなさん上級者で最高レベルの武器を持ってるのです」
「まぁまぁ、それは凄いところに来ちゃったわね」
「先程、港から町へ到着するまでモンスターは現れませんでしたが、普段は高レベルのモンスターたちが襲いかかってくるのです」
「あら、やっぱり一人じゃ来れないわね」
「いえ、お望みとあらば我がお守り致しますので」
そんな事を話しているうちに、おばあさんたちは武器と防具の店に到着し、ロビがおばあさんを案内した。
「あ、洋子さん、ここです。入りましょう」
「あら、お店も立派ね」
おばあさんはロビたちと一緒に店内に入った。
2階建ての立派なセルフ販売方式の店の中は、どの武器や防具もキラキラと美しいものばかりだった。
「洋子さん、杖は魔法攻撃力が最低2000ないと使えない物ばかりですが、防具であれば、ある程度装備できますから」
「そうなのね」
おばあさんはロビたちと一緒に魔法使いの防具のコーナーへ行って、色々見てみた。
「やっぱり少し高いわね……。でもこの服ならギリギリで買えそうね」
おばあさんは綺麗な刺繍が入ったローブを手にとった。
するとそれを見たロビが言った。
「洋子さん、それは良いかもしれません。初心者でも装備できますし、物理防御力と魔法防御力のバランスがいいですね。それに属性攻撃にも耐性があります」
「あら、ならコレにしましょうかしら」
『ロビさんから9000プクナが贈られました』
おばあさんはメッセージに驚くとロビに言った。
「あらあらあら、どうして私に?」
「あ、僕たちはこの世界のお金が余ってしまっていて8億プクナくらい持ってるんです。使ってもらえると嬉しいです」
「8億!? まぁ、ロビさんはお金持ちなんですね。でも頂くわけには……」
「いえいえ、本当に大丈夫です。クエストのサポートなんかしてると、どんどんプクナが貯まっていってしまって」
「でも……」
「いえいえ、僕は洋子さんが本当にお店に来てくれて嬉しかったんですよ。ぜひ、もらってください」
「あら……、なんてお礼を言ったらいいのかしら……。では頂きますね。ありがとうございます」
おばあさんは深々と頭を下げると刺繍のローブを購入した。
そしてアイテム欄からローブを選択すると刺繍のローブを装備してみた。
ボンッ
「あらまぁ、着てみるともっと素敵ね!」
「洋子さん、似合ってますよ」
「……ぅん」
「……いぃです」
「みなさん、ありがとうございます。大切に着させていただきますね」
こうしておばあさんは買い物を終え、みんなと一緒に店の外へ出た。
すると、ロビが大通りの奥を指さしながらおばあさんに言った。
「では、僕は解毒草と耐麻痺草を買いに行きますので、よかったらカフェにでも……」
それを聞いたおばあさんは驚いてロビに言った。
「あら! 解毒草と耐麻痺草があるんですか?」
「え、ええ。ここに定期的に買いに来ているんです。毒とか麻痺属性の攻撃をしてくるボスもいるので……」
「わたしも一緒に行っていいかしら? 解毒草と耐麻痺草だけが手に入らなくて」
「あ、そうですよね。解毒草と耐麻痺草はメインクエストを半分くらい進めないと手に入らないですもんね」
「まぁ嬉しいわ。ここで買えるなんて」
こうしておばあさんはロビたちと一緒にイークラトの道具店へ向かった。




