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VRおじいちゃん ~ひろしの大冒険~  作者: オイシイオコメ
まだまだ現役
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哲夫、時を忘れる

 ハーイムのメインクエストを終わらせた美咲と和代はバイクでピンデチに戻ってきていた。


 二人はピンデチの大通りを歩いていると、武器と防具の店の前で美咲が言った。


「あ、そうだ。おばあちゃん、防具を買っておけばHPが減りにくくなるから買っておいたほうがいいよ」


「あら、そうなのね。じゃあ買っておこうかしら」


 2人はセルフ購入方式のお店に入ると、中にはズラリと武器と防具が並んでいた。


「おばあちゃん、昇格転職しないと武器が持てないけど防具はけっこう良いのが装備できるんだ」


「あら、それは良かったわ」


「ええと……、これなんか良いんじゃないかな?」


 美咲は布のロングスカートが付いた軽量な(よろい)を指差した。


「あら、こんなに高級そうな鎧、似合うかしら」


「絶対似合うよ! 召喚士になったお祝いね。わたしにお金出させて」


 美咲は手で操作をすると和代にプクナを送信した。


『美咲さんから2500プクナが贈られました』


「まぁまぁ、いいのに!」


「いいから、いいから。その鎧の下の購入ボタンを押すと買えるよ」


「ありがとう美咲ちゃん。ほんとうに嬉しいわ」


 和代は購入ボタンを押すと、アイテム欄に「NEW」の文字が浮かんだ。


「おばあちゃん、アイテム欄のNEWってところを押してみて」


「これね」


「そうしたら、今買った鎧があるでしょ?」


「あるわ。これを押すのね」


 ボン


 すると和代はスカートの付いた鎧を装備した。


「まぁ!」


「やっぱり似合ってるよ! 早くおじいちゃんに見せに行こう」


「ええ。ちょっと恥ずかしいけど。うふふ」


 2人は武器と防具の店を出るとスマイル道具店へ向かった。



 ー スマイル道具店 ー


 2人が店に帰ってくると哲夫が大きな笑顔で迎えた。


「おお、格好良い鎧だね。似合っているよ!」


「あら、哲夫さん嬉しいわ。美咲ちゃんが買ってくれたのよ」


 和代は嬉しそうにして哲夫に鎧を見せると、美咲は哲夫に言った。


「今度は、おじいちゃんの番だよ」


「ああ、ありがとう。じゃあ和代、お店をよろしくな」


「はい、いってらっしゃい」


 和代が中に入ってカウンターに座ると、今度は哲夫が美咲と一緒にピンデチふれあい苑へ向かった。



「おじいちゃん、騎士が良かったんだよね」


「ああ、ちょっとばかり剣道をやっていたからな」


「それならやっぱり、騎士がいいね」


 2人はお喋りをしながらピンデチふれあい苑に到着すると、中に入って転職をお願いした。


 ◆ 


 無事、哲夫が騎士に転職すると、美咲は哲夫を武器と防具の店に誘った。


「おじいちゃん、じゃあさっそく武器と防具の店に行こう。わたしが剣と防具を買ってあげる」


「ええ、ほんとうかい? いいのかい?」


「うん、おばあちゃんにも買ってあげたから」


「ほんとうに、いつもありがとう美咲ちゃん」


 2人はまた楽しくお喋りをしながらピンデチの大通りを進み、通り沿いにある武器と防具の店に入った。


 美咲は店内を見回すと、ピンデチで一番高価な鉄の鎧と鉄の両手剣を指差した。


「おじいちゃん、この2つが良いんじゃないかな」


「おお、中世の騎士のようで格好良いな!」


 すると、ふと哲夫は店の端にあった日本刀と甲冑(かっちゅう)を見つけて美咲に聞いた。


「美咲ちゃん、あの日本刀と甲冑(かっちゅう)はわたしでは難しいのかな?」


「あれでも大丈夫だよ。この鉄の剣より攻撃力が少し低いけど軽いから扱いやすいかも」


「本当かい!? 一度甲冑を着て刀を差してみたかったんだよ!」


「それなら絶対これだね。好きな格好が一番楽しいから」


 すると美咲が哲夫にプクナを送信した。


『美咲さんから5000プクナが贈られました』


「おじいちゃん、これで買ってね。騎士になったお祝いだから」


「美咲ちゃん、なんだかすまないね。だけど本当に嬉しいよ」


 哲夫は購入ボタンを押して購入すると、さっそく甲冑と日本刀を装備した。


「おじいちゃん、似合ってるよ! 強そう」


「ほんとうかい!? よぉし、じゃあ明日のクエストは頑張らないとな! ははは」


 こうして哲夫は武士の姿になって、美咲と一緒にスマイル道具店へ向かった。



 2人は帰る途中、美咲がトレーニングルームを見つけて哲夫に言った。


「あ、おじいちゃん。そこのトレーニングルームで練習ができるけど、やってみる?」


「おお、それはいいな!」


「うん、じゃあ行こう! こっちだよ」


 美咲は哲夫を連れてトレーニングルームのある建物に入った。



 2人は数人が練習している広い部屋に入ると、空いている所を見つけて場所を取った。


「おじいちゃん、ここで練習できるんだ。刀を構えてみて」


「よし!!」


 哲夫は気合を入れて刀を構えると、美咲もレイピアを装備してゆっくりと腰を落とした。


 それを見た哲夫は笑顔になって美咲に言った。


「さすがは美咲ちゃんだ! 美咲ちゃんが構えてるだけで勝てる気がしないよ。ははは」


「そ、そうかな?」


 美咲は少し照れながら構え直した。


「おじいちゃん、どこからでも斬ってみて」


「よし、いくよ美咲ちゃん」


 ブン


 キンッ!


 美咲は哲夫の刀をあざやかに弾くと、哲夫は後へ跳ねるように下がった。


「おお、この刀は重そうな見た目なのに、思ったよりも軽く振れるなぁ」


 哲夫が嬉しそうな顔になると、美咲も嬉しそうに言った。


「おじいちゃん、けっこう良い一撃だったよ。どんどんかかって来て!」


「よし、じゃあ美咲ちゃんの胸を借りるつもりで!」


 哲夫はすり足で一歩出ると、そこから一気に踏み込んで刀を振り下ろした。


「やぁっ!」


 ブンッ!


 キン!


 美咲は哲夫の刀を受け流しながら言った。


「おじいちゃん、今のは重い一撃で良かったよ!」


「そ、そうかい? 美咲ちゃんに言われると嬉しいなぁ」


「おじいちゃん、どんどん来て!」


「よぉし! やぁっ!」


 ブワッ!


 ガキィン!


 こうして哲夫は美咲に手伝ってもらいながら夢中で刀の練習をした。



 しばらく練習をしていると、美咲は一通のメッセージに気がついた。


「あ、おじいちゃん、ちょっと待って。おばあちゃんからメッセージ来てた」


『みなさん帰ってきました。もうすぐ閉店しますよ』


「え!? もうそんな時間!」


 美咲が驚いていると哲夫が話しかけてきた。


「美咲ちゃん、どうしたんだい?」


「おじいちゃん、もう閉店の時間!」


「ええ!?」


 哲夫がトレーニングルームの時計を見ると、もうすぐ17時だった。


 哲夫は驚いて呟いた。


「いやぁ、時間が立つのが早いなぁ。でも、こんなに何かに夢中になるなんで何十年ぶりだろう」


 それを聞いた美咲は嬉しそうに哲夫に言った。


「おじいちゃん楽しそうだったよ。わたしも嬉しい」


「ははは、本当にありがとう美咲ちゃん。美咲ちゃんのお陰だよ」


 2人は話しながら急いでトレーニングルームを出ると、スマイル道具店へ走った。


 ◆


 美咲と哲夫はスマイル道具店に辿り着くと、すでにみんなが待っていた。


「「おかえりー!」」


 美咲は慌てた顔でみんなに言った。


「みんな、ごめん! つい、おじいちゃんと夢中で練習してたら時間忘れてた」


 哲夫もみんなに謝った。


年甲斐(としがい)もなく、すみません」


 それを聞いたおばあさんは2人に言った。


「まぁまぁ、年は関係ありませんよ。夢中になれるなんて良いじゃないですか」


 するとマユとメイとナミが哲夫の甲冑を見て言った。


「哲夫さん、武士みたいでカッコイイ!」

「うん、強そう!」

「かっこぃい」


 哲夫は照れながらも嬉しそうに答えた。


「いやぁ、はは。美咲ちゃんが買ってくれまして。本当に最高の孫なんですよ。ははは」


 そうれを聞いた美咲が少し恥ずかしそうにするとマユが美咲に言った。


「なんか、美咲ちゃんいいね。愛されてるね」


「え? うん。わたしも、おじいちゃんとおばあちゃん好きだから、喜んでもらいたくて買ってあげちゃった」


 それを聞いた哲夫は感動して涙を浮かべながら言った。


「み……、みさぎぢゃん、ゔれじいよ……」


 すると和代が哲夫の背中を叩いた。


「哲夫さん、しっかりしてください! みなさんの前ですよ!」


「あ、ああ、すまんすまん……」


 哲夫が恥ずかしそうにすると、なんと、みんな涙ぐんでいた。


「よかったね哲夫さん」

「美咲ちゃん最高」

「なみだでる」

「まぁ、最高のお孫さんね」


 みんなは自分たちの祖父母の話しで盛り上がると、また明日も会う約束をしてログアウトしていった。

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