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VRおじいちゃん ~ひろしの大冒険~  作者: オイシイオコメ
まだまだ現役
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大熊笹、投げる

 おじいさんたちはテーブルについて黒ちゃんが差し入れたドラゴン大福を食べ始めると、めぐがペンを持ちながらみんなに尋ねた。


「あたし、バラードの1曲は歌詞書けたんだけど、残りのアップテンポの曲と演歌の歌詞が思いつかなくて。何かアイディアないかなぁ」


 すると、アカネが手を上げて言った。


「はい、はーい! アップテンポの歌詞はあたしが書くよ!」


「ほんとに? ……でも大丈夫?」


「だって、思ったことを音符に乗せて歌詞っぽく書けばイイんでしょ?」


「う、うん。そうなんだけど」


「じゃあ、大丈夫。まかせてよ! めぐ、音源もらっていい?」


「うん、……いま送信した」


 アカネは音源をもらうと、ホワイトボードの前に行って曲を聴きながら首をウンウンと動かし、歌詞を書き始めた。


『目と目が合ったね。あなたの真っ直ぐな(ひとみ)


「「おお!?」」


 みんなが驚くと、めぐはアカネの歌詞の書き出しが意外に良かったので驚いた。


「アカネ、いい歌い出し!」


 するとアカネは停止と巻き戻しと再生を繰り返しながらウンウンと首を動かして続けた。


『そっと差し出した、その手。わたしも手を差し出した』


「「おおー!」」


「え、アカネ、ほんとに良いんだけど!」


 アカネはウンウンと首を動かしながらノリノリで歌詞を続けた。


『やっぱり、って思ったよ。あなたは、そっと……』


「「おおっ??」」


『一本背負いを仕掛(しか)けてきたね!』


「「……!」」


『でも知っていた、あなたの想い。だからわたしは必死で手を振りほどいた』


「「おお!!」」


 すると急に大熊笹と黒ちゃんが盛り上がった。


『あなたは強引に迫って来た。だけど、あたしは知ってる』


 大熊笹と黒ちゃんが期待しながらアカネを見ると、アカネがラストのキメの歌詞を書いた。


『最後はあたしが勝つ!』


「「おおおおーー!」」


 大熊笹と黒ちゃんはアカネの歌詞に感動した。


 黒ちゃんは興奮気味にアカネに言った。


「アカネ! この歌詞は最高だぞ!」


 こうして、アップテンポの曲の歌詞がだいたい決まったのだった。



 アカネが得意げにテーブルにつくと、どや顔でめぐに言った。


「どうよ、なかなかでしょ?」


「うん、最初はちょっとビックリしたけど、アップテンポの曲だったらアリかもって思い始めた」


「でしょ!」


 アカネは機嫌良さそうにドラゴン大福をつまみ上げるとパクリと一口で頬張(ほおば)った。


 するとイリューシュが立ち上がって手をあげた。


「もし良かったら、演歌の歌詞はわたしが書かせてもらっても良いでしょうか?」


「「ええ!?」」


「おねがいします」

「いいっすね」

「多才ですね」

「たのしみです」

「おお」


 みんなは一瞬驚いたが一斉に賛成した。


 イリューシュはしばらく上を向いて考えると、ホワイトボードにスラスラと歌詞を書き始めた。


 ーーーーーーーーーーーーーーー

 純白のあなた

 作詞作曲:イリューシュ


 しばらくぶりね

 もう、どのくらい経ったのかしら


 いつもどおりね

 もう、そのくらい知っているから


 あなたの炎がわたしを照らすの

 わたしの瞳を青く染めるわ


 嗚呼、嗚呼、

 あなたは純白の竜

 ーーーーーーーーーーーーーーー


「「おお!」」


 すると、おじいさんは歌詞を読んでイリューシュに言った。


「これはホワイトドラゴンの詩ですね! あの青白い炎を思い出しました。ちょっと怖いですが素晴らしいですね」


「ありがとうございます、ひろしさん」


 めぐも驚いてイリューシュに言った。


「この世界と演歌をコラボするなんて発想無かったです!」


「うふふ。ユーモアがあったほうが面白いかな、と思ったので」


 こうして演歌の歌詞もだいたい決まり、すべての曲の準備ができた。


「あ」


 おじいさんは、ふと思い出してイリューシュに尋ねた。


「イリューシュさん、話は変わるのですが……」


「はい、何でしょう、ひろしさん」


「明日、新しくできた友人と一緒に海賊のクエストに行くのですが、あの最後の海賊の親分は強いでしょうか」


「ひろしさん、お友達が出来たんですね。そういえば最初のドラゴンはどうしましたか?」


「なんとか1回で倒すことができました」


「さすが、ひろしさんですね。それなら大丈夫だと思いますよ」


「そうですか! では明日挑戦してみます」


 すると、それを聞いたアカネがおじいさんに言った。


「なんだよ、じいちゃん水臭いなぁ。言ってくれれば手伝うよ!」


 みんなウンウンと首を縦に振った。


「ほんとうですか!? 明日朝6時に集合なのですが、大丈夫でしょうか?」


「「えっ!?」」


「ろ、6時……起きれる自信がないかも」

「あ、あたしは病院がある、のかなぁ」

「すみません、わたし午前中は仕事なんです……」

「6時……、ともすれば寝る時間……」


 すると大熊笹が、おじいさんに答えた。


「ひろしさん、わたしも参加できますでしょうか?」


「ええ、もちろんですとも! なんとも心強い! 大熊笹先生は最初のメインクエストは終わっていらっしゃいますか?」


「めいん……?」


 それを聴いて察したアカネが言った。


「熊じぃ! 時間あるなら、みんなで今から最初のメインクエスト行こうよ!」


 みんなは朝6時に行けないことを罪滅(つみほろ)ぼしするかのように笑顔でウンウンと頷いた。


 こうして大熊笹は、みんなと一緒にメインクエストを始めたのだった。



 ー ピンデチ近くの洞窟 ー


 おじいさんたちはピンデチ入り口のNPC老人に話しかけた後、例の洞窟に来ていた。


「熊じぃ、この中にドラゴンが居るんだけど、それを倒せば終わりだよ」


「ほぉ、なるほど。楽しみですね!」


 すると黒ちゃんが大熊笹に言った。


「大熊笹先生、わたくしがサポート致しますのでご安心ください。稽古(けいこ)のご恩を少しでもお返しさせて頂きたいです」


「ありがとうございます。今回はお言葉に甘えさせていただきます」


 大熊笹は頭を下げると、黒ちゃんも慌てて頭を下げた。


「大熊笹先生、もったいないお言葉! ささ、こちらです」


 黒ちゃんは先頭に立つと、洞窟をスイスイと進んでいった。


 ◆


 おじいさんたちは黒ちゃんの案内とサポートで、あっという間にボスの部屋に到着すると、ドラゴンが部屋の真ん中で待っているのが見えた。


 すると、それを見た大熊笹は小さく(つぶや)いた。


「ほぉ、思ったよりも小さいですね」


 それを聞いたアカネは驚きながら大熊笹に言った。


「っても、黒ちゃんより全然デカいよ熊じぃ。体重だって相当重いんじゃない?」


「そうですな。さすがに1人では難しそうなので、みなさんご協力お願いします」


 大熊笹はそう言うと、なんと走ってドラゴンに向かっていった。


「お、おい! 熊じぃ!」


 ブォォァアアア


 ドラゴンは向かってくる大熊笹に炎を吐くと、大熊笹は前回り受け身で軽やかに炎を()けた。


 ドラゴンは接近してきた大熊笹に驚くと、左手で素早く爪攻撃を仕掛(しか)けてきた。


 ブンッ!


「ほいっと」


 大熊笹はヒョイと後へ避けると、ドラゴンは前に乗り出して、(つづ)(ざま)に右手で爪攻撃を仕掛けてきた。


 その瞬間、


「よいしょっ!」


 大熊笹は重心を前に崩して攻撃してきたドラゴンの右腕を掴むと、横に巻き込むように変則的(へんそくてき)な投げ技を放った。


「やぁぁああ!!」


 ズザァァッ…………、ズゥンンン!!


 グゥオオオオオ!


 ドラゴンは崩れるように巻き込まれると、見事に横に倒れた。


「「おおおーー!!!」」


 大熊笹の大技に歓声が上がると、全員でトドメを刺しに行った。


 ヒュッ……ドッ!


 ガンガンガン!


 シャァァアアアァァ……ドガン!


「聖なる雷を司る者たちよ。我にその慈悲と慈愛を与えたまえ。清く正義の力をもって嘆願する。あの者に裁きの雷を!」


 ガガガーーーン!!


『10ポイントのステータスポイントを獲得しました』


『メインクエスト 第一章 完』


 アカネはクエストクリアを確認すると、大熊笹に走っていって抱きついた。


「熊じぃ、すげぇな! ドラゴン投げ飛ばすなんてビックリだよ!」


「いやぁ、さすがに崩れてしまいましたが、なんとか投げられました。ははは」


「あたし、熊じぃのカッコイイ写真撮ったから送るね」


 アカネが写真を送ると、大熊笹のご高齢者用プログラムですぐに拡大表示された。


「ほぉぉ、これは良い写真ですね! まさかドラゴンを投げることになるとは」


「「ははははは」」


 それを聞いたみんなは笑った。


 こうして大熊笹はメインクエストの第一章をクリアしたのだった。


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