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VRおじいちゃん ~ひろしの大冒険~  作者: オイシイオコメ
白の脅威
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ひろし、衣装を選んでもらう

 みんなが笑顔で和室に入ってくる様子を見て、おじいさんは思った。


 ……このゲーム世界は、世代を越えて喜びを分かち合える優しい仲間が待っていてくれる。これこそが本当の「ふれあい」なのではないか……


 おじいさんは背筋をピンと伸ばすと、筆をとって用意していた長半紙に一気に文字をしたためた。


『ピンデチふれあい苑』


 すると、おじいさんの(しょ)を見ためぐが言った。


「おじいちゃん、とっても優しくて素敵な字。何かに使うの?」


「あ、いえ、書道大会がありまして。ははは」


 それを聞いたアカネが言った。


「なんか、じいちゃんの優しい感じが出てて安心する字だね」


 黒ちゃんとイリューシュも感心しながら言った。


「ひろしさん、優しい書ですね。バランスも素晴らしい」


「ほんとうに。ひろしさんの人柄(ひとがら)が出ていて素敵な書ですね」


 おじいさんは照れながらお礼をした。


「みなさん、ありがとうございます。この書は、みなさんのお陰で書けました」


 それを聞いたみんなは、笑顔になっておじいさんの書を見た。


 するとアカネが思いついたように言った。


「よし! 今日はめでたいし、じいちゃんも良い作品出来たし、コーシャタのスイーツパラライズに行こうよ! 商品券もあるよ。へへ」


「「うん!」」


 おじいさんは、めぐに教えてもらいながら書道大会にエントリーすると、みんなは村の外へ出て軽トラに乗った。


 そしてワイワイお喋りをしながらコーシャタへと向かった。


 ◆


 コーシャタへ向かう途中、前から見慣れないバスがやってくるのが見えた。


 それを見たアカネが声を漏らした。


「あれ? バスだ。初めて見た」


 すると、めぐも驚いてバスを見た。


「ほんとだ。ピンデチ・コーシャタ往復バスだって。試運転中って書いてある」


「ってか、あたしたちも良く考えてみたらさぁ、じいちゃんとかが居なかったらコーシャタ行くの大変だもんな」


「そうだね、すっかり忘れてたよ。砂漠地帯は通りたくないもんね。バスがあったら便利かも」


「そういえば、黒ちゃんも免許もってるよな」


「ああ。持っているのだが、どうも車の運転が好きではなくてな。だから現実世界でも夜勤が嫌いだったのだ」


「え? 夜勤って白バイ乗れないの?」


「夜はパトカーで巡回するんだ。狭い空間に閉じ込められるのが、もう(つら)くて(つら)くて。でももう()めて有給消化中なのだかな」


「「ええ!?」」


「いや、辛いから辞めたのではなくて、親の会社を()ぐ事になってしまって。もう辞表は出してあったのだ」


「そうなんだ、じゃあ黒ちゃん社長?」


「ま、まぁ、そうなるかな」


「なんだよ、かっこいいじゃん!」


「いやいや、プレッシャーが凄いのだ。業績を落とすわけには行かないからな」


「そんなの力づくで解決だろ!」


「「ははははは」」


 そんな事を話していると、軽トラはもうコーシャタの入り口まで来ていた。


 おじいさんたち一行(いっこう)は軽トラを停車させると、そのままスイーツパラライズへ直行した。



 ー スイーツパラライズ ー


「おーし! 今日もいっぱい食べるぞ!」


 みんなはアカネを先頭にスイーツを皿に集めると、全員席に着いてフォークを手に持った。


「「いただきまーす!」」


 そして、みんながスイーツにかぶりつくとアカネがめぐに尋ねた。


「そういえば、ライブの本番っていつなの?」


「あ、そうだ。今度のライブ、出演者と観覧希望者の多数決で日程が決まるんだって」


「え? どゆこと?」


 するとイリューシュが説明してくれた。


「まず、出演バンド10組がカレンダーに演奏可能日を入力して、10組全てが演奏可能な日が開催候補日になるんです」


「かいさいこうほび?」


「そうです。それで、観覧希望者が一番多い日が開催日になるんです」


「んん? ええと……」


「簡単に言えば見たい人と演奏したい人が一番多い日にライブをやるんです」


「あ、なるほど!」


 めぐはそれを聞いてみんなに尋ねた。


「じゃあ、みんなのライブ可能な日はある?」


「あたし、いつでもOK。だって夏休みの課題だけだし」

「あ、わたしもいつでも大丈夫です」

「わたしは年金生活なのでいつでも。ははは」


 全員一致で全日が演奏可能日になった。


 イリューシュは嬉しそうにすると、みんなに言った。


「では、あと3曲作ってきますね。みなさん、ちなみにどんな曲がいいですか?」


 するとアカネが答えた。


「あたし、テンポ早めが好きだな」


 めぐはそれを聞いて言った。


「そうしたら、ゆっくりめの曲も必要だよね」


 イリューシュはウンウンと頷いて、おじいさんにも尋ねた。


「ひろしさん、音楽の好みはありますか?」


「わたしですか? ええっと……、最近は若い方が歌う演歌を聞いていますが……」


「あ、わかりました。演歌ですね」


 それを聞いて、めぐが慌てた。


「待ってイリューシュさん! わたし演歌歌えないよ」


「うふふ、大丈夫ですよ。めぐさんが歌えば、ジャンルは演歌ではなくて『めぐさん』という個性なんですから」


「あ、何かそれ素敵! さすがイリューシュさん」


「ふふふ」


 するとアカネが黒ちゃんに聞いた。


「なぁ、黒ちゃん何か楽器できる?」


「わたしか? いやぁ、ピアノとヴァイオリンを少しくらいは」


「はぁ? ピアノと、ヴゥァイオリン?」


「あ、ああ。変か?」


「いや、変とかっていうよりさぁ……、うん、やっぱ変」


「「ははははは」」


「ていうか、ヴゥァイオリンってなんだよ。英語喋(えいごしゃべ)れんの?」


「ああ、日常会話くらいならな」


「「ええ!?」」


「黒ちゃん、なんか英語で喋ってよ」


「いやぁ、そういうのが一番困るのだが……」


 すると、イリューシュが助け船を出してくれた。


「How did you learn English?(どうやって英語を学んだのですか?)」


「I studied abroad in London as part of a school programme.(学校のカリキュラムの一環としてロンドンに留学しました)」


「「おおー」」


「あら、黒ちゃんさんRPですね」


「ですか? あまり気にしていないのですが」


 すると、めぐがアカネに聞いた。


「ねぇアカネ、RPって何?」


「決まってるだろ『両手剣が、ピッタリ』のR、Pだよ」


 するとそれを聞いた黒ちゃんは喜んた。


「アカネ、それはわたしにピッタリだな!!」


「「はははは」」


 おじいさんたちはスイーツパラライズでお喋りを楽しむと、今度はライブの衣装を買いにミルネへ移動した。


 ーーーーーー

 RP(Received Pronunciation):イギリス英語の標準的な発音とされているもの。英国BBC放送はこの発音。

 ーーーーーー


 ミルネに着くと、イリューシュがみんなに言った。


「今日は好きな服を買ってくださいね! この間ご協力いただいたお礼に私がお支払いしますので」


「「おおー!」」


 するとアカネは少し困ったようにめぐに言った。


「なぁめぐ、あたし制服とジャージと柔道着しか着ないから服とか分からないんだけどさぁ」


「そうなんだ。うーん」


 バッ


「わっ! なにすんだよ」


 めぐが急にアカネの太ももを(つか)むとアカネは驚いて声をあげた。


 そしてめぐはウンウンと頷くとアカネに言った。


「アカネは足がキレイそうだから、ミニスカのロック女子でいこう!」


「え? ミニスカ? 大丈夫か?」


「大丈夫、ミニスカに黒ブーツにダボっとしたトップスでバッチリ可愛いよ!」


「お、おう、可愛いなら……、それで行こうかな」


 するとめぐは、今度はおじいさんのほうを見て考え込んだ。


「おじいちゃんは……」


 おじいさんは「え?」という顔でめぐを見た。


「わたしですか?」


「うん。やっぱり、おじいちゃんはアメリカンロック系かな」


「アメリカンロック……ですか?」


「そう! タイトジーンズにシャツとジャケットを合わせて……、うんサングラスとハットもいいかも!」


「ええ!? わたしがですか?」


「絶対かっこいいよ!」


「は、はぁ」


 するとイリューシュもおじいさんに言った。


「ひろしさんは細身ですから、似合いそうですね」


「そ、そうですか。それじゃあ、そうしようかなぁ。ははは」


 おじいさんとアカネが納得すると、めぐは嬉しそうにミルネを見て回って2人の衣装を決めていった。


 そして、ワイワイとお喋りしながら衣装を買いそろえると、軽トラでピンデチへ帰っていった。

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