ようこ、お友達が最速
ー VR世界 おばあさんが働くお店 ー
おばあさんが和代と話していると、マユとメイとナミが溶岩地帯から帰ってきた。
すると、マユは少し申し訳無さそうに報告した。
「ただいまー、なんとか30個だよ」
それを聞いたおばあさんは笑顔で労った。
「いえいえマユさん、素晴らしいわ!」
その時マユは和代に気づいておばあさんに尋ねた。
「あ、ええと、こちらの方は…… 」
「あ、哲夫さんの奥様がいらしたんです。……そうだ皆さん、ちょっと休憩にしませんか?」
「そうだね! あ、ていうか、商品も薬草と交換してほとんど無いし、今日はもう閉店にしようかな」
こうして今日は店を閉めることにした。
閉店後、おばあさんたちは2階に集まると、哲夫はみんなに妻の和代を紹介した。
「みなさん、私の家内の和代です。よろしくお願いします」
「和代です。みなさん、初めまして。よろしくお願いします」
「「よろしくお願いします」」
みんなは笑顔で挨拶を交わした。
すると、ナミが溶岩ようかんをテーブルに出現させた。
「いちごのやつ」
みんなは笑顔になると、おばあさんは哲夫と和代そして美咲に一本ずつ渡しながら嬉しそうに言った。
「期間限定だから今のうちに食べておきましょう!」
マユたちはおばあさんの言葉にはウンウンと大きく頷きながら、自分たちの分の溶岩ようかんを用意した。
「「いただきます!」」
みんなは一斉にフィルムを剥がしてかぶりついた。
「「おいしー」」
ようかんを食べた哲夫と和代は目を丸くしながら驚いた。
「ゲームの世界で味がするなんて……。こいつは美味いな」
「ほんとうね、哲夫さん」
すると、おばあさんが哲夫と和代に説明した。
「ここの食べ物は、いくら食べても太らないのに美味しいんですよ。だから、わたしたちはお金をたくさん稼いで世界中の美味しいものを食べたいんです!」
マユとメイとナミも嬉しそうに頷いた。
それを聞いた哲夫は目を輝かせて言った。
「それは素晴らしい計画ですね! 良かったら、私たちも仲間に入れてもらえませんか?」
すると、マユが驚いた顔で言った。
「もちろんです! さっき、みんなで一緒にお店やってくれたら嬉しいよねって話してて」
「ほんとうですか!」
哲夫が喜ぶと、美咲も笑顔になってみんなに言った。
「わたしもやりたい」
「もちろん!」
「ぜったい歓迎!」
「ぅん」
「嬉しいわ」
するとおばあさんは思い出したようにみんなに言った。
「そうそう。こちらの和代さんは、なんとキノコと薬草の匂いがわかるのよ!」
「「えええ!」」
どよめきが起こると和代は少し恥ずかしそうに下を向いたが、顔を上げてみんなに言った。
「私もお手伝いさせてもらっても良いかしら」
「お願いします!!」
「やば、すごいメンバーそろった」
「ぅれし」
みんなが喜んでいると、マユが思い出したようにみんなに言った。
「あ、そうだ! 今日の売り上げの半分をみんなに送信するね」
マユは半分をお店のお金にして、残りの半分を等分にして全員に送信した。
すると美咲と和代がマユに言った。
「わたし、何もしてないからもらえない」
「ええ、わたしも」
それを聞いたマユは笑顔で答えた。
「ううん、今日は歓迎って感じで!」
美咲は少し考えるとマユに言った。
「じゃあ、ちょっと待ってて。良いお返しができるかも」
「え、楽しみ。なんだろ」
「すぐ戻るから」
美咲はそう言うと、店の外に出てどこかへ転移していった。
◆
ブーーン……
転移した美咲がやって来たのは、おじいさんたちが居る「予選の塔」だった。
美咲は予選で5分以内にクリアすれば1万プクナ貰えることを知っていたので、賞金をお礼にするために来たのだった。
美咲は個人部門の受付に行くと、受付のNPCが美咲に尋ねた。
「プレイヤーネーム美咲さん。あなたは拠点をピンデチに移してからまだ1週間経ってませんね」
「はい……。あ、そうか。じゃあ、前の拠点のレググリの予選に参加しなきゃ」
美咲はそう言って転移しようとすると受付NPCが美咲に言った。
「大丈夫です。こちらの塔でレググリ地区の参加として受付できます」
「そう、よかった」
美咲は少し笑顔になってエントリーを済ませると、遠くにイリューシュの姿を見つけた。
「あ、エージェント。あとで謝りに行かなきゃ」
美咲はそう呟くと、バックソードというレイピアよりも重く、攻撃力が倍以上ある武器に変更した。
「これでよし」
個人部門は参加者が少なかったため、すぐのスタートとなった。
美咲は予選の進め方をよく読んで、団体予選とは別の個人予選の入口から塔に入った。
「とにかく5階のボスを5分以内に倒せばいいんだよね」
美咲はそう呟くとバックソードを構えた。
その頃、ギャラリーは団体予選の黒ちゃんに注目していたので、ほとんどの人が美咲の様子を見ていなかった。
「では、タイム計測を開始します。3、2、1、スタート!!」
美咲が勢いよく飛び出すと部屋の真ん中にロボットが1体、剣を持って待ち構えていた。
「よし」
ザンッ! ドスッ!
プァァアアア!
美咲は一撃でロボットを倒すと、ラッパの音が鳴って2階への扉が開いた。
美咲は階段を駆け上がって2階に着くと、一回り大きいロボットが槍を持って待っていた。
美咲はロボットが槍を突き出す前に、
ザッザッ! ドスドスッ!
プァァアアア!
一瞬で2ステップ踏み出した美咲は、正確にロボットの頭を胸を突き刺して倒した。
そして3階に駆け上がると、ロボットの武闘家が待っていた。
ロボットは走り込んできてミドルキックを放ったが、美咲は大きくステップをして一気に武闘家の横を抜けた。
武闘家が振り返った瞬間、
ドッ! ドッ!
重たい突きが頭と胸を貫いた。
プァァアアア!
そのまま駆け抜けて4階へ上がると、ロボットの両手剣の騎士がいた。
「やぁ!」
美咲は気合もろとも飛び込むと、両手剣の騎士が振りかぶる前に突きを放った。
ドッ、ドッ! ドドドッ!
プァァアアア!
一瞬で連撃を決めてロボットを倒すと、美咲は急いで5階へ上がって最後のボスの弓使いと対峙した。
美咲は一気に弓使いへ走っていくと、弓使いは素早く矢を放った。
美咲はバックソードで矢を弾くと、大きく踏み込んで弓使いの喉を突いた。
ドッ!
しかし、弓使いはバックステップをすると、さらに矢を放ってきた。
しかし美咲はそのまま突っ込み、矢を肩に受けながら美しい連撃を食らわせた。
ズドドドッ!
プァァアアア!
美咲は肩から矢を抜くと振り返り、静かに階段を降りて行った。
『なんと! 個人部門、全地区の最速タイムが出ました! 58秒832!』
「「「おおおーー!」」」
外の大画面には美咲がクールな顔で階段を降りている姿が映し出されていた。
それを見たおじいさんは思わず声を漏らした。
「あっ、あの方は道で会った同世代の方のお孫さん……。お孫さんは凄い人なんだなぁ」
それを聞いたイリューシュはおじいさんに尋ねた。
「お知り合いですか? わたしも知っている人なんです」
「そうでしたか。G区画の家の近くに住んでらっしゃる方のお孫さんなんです」
「あら、そうなんですね」
するとなんと、画面に映っていた美咲がイリューシュの所へやって来て話しかけてきた。
「この間はすみませんでした、カワセミです。今は名前も変えて姉と離れて静かにしています。もうご迷惑はおかけしません」
それを聞いたイリューシュは少し気になって尋ねた。
「何か事情があったのですね」
「はい。姉はわたしに『もう姿を見せないで』と言って去っていきました」
「……あ、ごめんなさい。変なことを聞いてしまって」
「いえ、大丈夫です。今は祖父母と一緒にゲームをしています。姉から離れられて良かったのかもしれません」
「そうですか……。それにしても、流石の剣術ですね。今度トレーニングルームでお手合わせ頂けませんか?」
「はい。私で良ければ」
「ありがとうございます。良かったらこちらを」
イリューシュは美咲にフレンドリクエストを送った。
「ありがとうございます」
美咲はフレンドリクエストを受理すると一礼してイリューシュに言った。
「では、ピンデチで友達が待っていますので失礼します」
「美咲さん、わざわざ声をかけてくださって嬉しかったです。ではまたお会いしましょう」
美咲は少し笑顔になると軽く会釈をして転移魔法でピンデチのお店へ戻っていった。
「ふふふ。もう警戒しなくても良さそうですね」
イリューシュは嬉しそうに笑った。




