ひろし、予選に参加する
おばあさんはチャットを終えて店に戻ると、メイとナミと少しお喋りをして現実世界に戻ってきた。
「戻りました。今、夕飯作りますね」
「あぁ、お帰り。サラダは作ってあるよ」
「あら、ありがとうございます。何読んでるんですか?」
「いやぁ、きょうはケーキの食べ放題に行ってな」
「あら、そんなところがあるんですね!」
「ほかにも、そんなお店があるのかと思って」
「それで本を読んでたんですね」
「ああ、そうなんだよ。おばあさんは何かあったかい?」
「そうそう、スーパー・ヨクヨの創始者の方が、お店を手伝ってくださる事になって」
「ええ? あのいつも買い物に行くヨクヨさん?」
「そうなんです」
「そりゃすごいなぁ」
こうして今日も二人は夜遅くまでお喋りを楽しんだ。
ー 翌日 ー
二人は午前中に家事や買い物を済ませると、一緒に昼食をとった。
おじいさんは昼食をとりながらゲームの事を思い出すと笑顔で呟いた。
「なんだか、ゲームのお陰で毎日たのしいなぁ」
「そうですね。やっぱり生きがいって大事ですね」
「あぁ、そうだな。ははは」
「うふふ」
二人は昼食を終えると、食器を片付けて一緒にゲームの世界へ入っていった。
おじいさんはいつものように時計台から三輪自転車で下っていくと、前から哲夫と美咲がやってきた。
おじいさんは同世代のプレイヤーを初めて見たので嬉しくなって声をかけた。
「こんにちは。お孫さんとご一緒にゲームですか?」
「あ、はい。孫がこの世界に連れてきてくれたんですよ」
「あぁ、それは素晴らしいですね。同世代の方を初めてお見かけして、つい声をお掛けしてしまって……」
「それはそれは。この近くにお住まいですか?」
「ええ、私の家では無いのですが、この下におります。お近くですか?」
「はい。この子が家を買ってくれまして。あの家なんです」
「あぁ、立派なお宅ですね。もし良かったら、今度ゆっくりお話させていただけませんか」
「それは良いですね!」
「では、今度お宅にお伺いさせていただきますね」
「はい、ぜひお待ちしております」
おじいさんと哲夫はお互いに深々と頭を下げると、美咲も頭を下げて村のほうへ向かっていった。
おじいさんは同世代に出会った事がとても嬉しく、上機嫌でG区画の家へと向かった。
◆
おじいさんがG区画の家に到着すると、すでにみんなが家の前で待ってた。
「おーい、じいちゃん!」
「あぁ、こんにちは!」
おじいさんはみんなと挨拶を交わすとイリューシュがみんなに言った。
「さぁ、今日は予選ですね。頑張りましょう!」
「「はい!」」
みんなは村の外へ出ると、いつものように軽トラに乗り込み、予選の塔へと向かった。
◆
予選の塔の受付に到着すると、今日は参加の受付をしていた。
「やった、今日は参加できる!」
アカネがそう言うと、全員軽トラから降りて受付へと向かった。
受付の前には、予選の進め方が大きく書かれていたので、みんなはしっかりと目を通した。
ーーーーーーーーーーーーーーー
予選通過チームは最速タイムの1チームのみ!
ピンデチ地区代表をかけて戦おう!
1階~5階に、それぞれボスのロボットがいます。
先鋒からスタートして1階から5階まで全てのボスを攻略しよう。
他のメンバーは塔の入口で待機して、先鋒が倒されたら次鋒がスタートしてください。
(そのまま中堅、副将、大将の順に続いてください)
予選タイム5分を切ったチームには代表者に1万プクナをプレゼント!
ーーーーーーーーーーーーーーー
それを見たアカネは嬉しそうに言った。
「やっぱ、『黒ちゃん先鋒作戦』は正解じゃない?」
めぐはアカネを見て頷いた。
「ほんと。先鋒が強ければ速いよね絶対」
すると、エントリーシートを記入しているイリューシュがみんなに尋ねた。
「みなさん、チーム名は何にしましょうか」
「……」
全員何も考えていなかった。
「どうしよう」
「急に言われるとなぁ」
「はて、どうしたものか」
「ううむ」
その様子を見たイリューシュは、みんなに提案した。
「では、年長者のお名前をお借りして『チームひろし』はいかがですか?」
「「はい」」
「ええ!?」
結局、名前はチームひろしに決まった。
しばらくすると、塔に備え付けられた大画面に「チームひろし」の名前が表示され、アナウンスが流れた。
「『チームひろし』の皆さん、準備をお願いします」
画面には、おじいさんたちの姿が映し出された。
そして1階の扉が開かれると、先鋒の黒ちゃんが堂々とした足取りで中へ入って行った。
「「わーーー」」
歓声が巻き起こると、画面が切り替わって塔の中の黒ちゃんが映し出された。
そしてカメラがクルリとターンをすると、剣を持ったロボットも映し出された。
「では、タイム計測を開始します。3、2、1、スタート!!」
「うおぉぉおおお!」
黒ちゃんは全力でロボットに突進するとロボットはゆっくり剣を振りかぶった。
ドガッ! ガキン! ドガン!!
プァァアアア!
しかし黒ちゃんはロボットが攻撃してくる前に叩き潰すと、クリアを知らせるラッパの音が鳴って2階へ続く階段の扉が開いた。
黒ちゃんは即座に階段を駆け上がって2階に出ると、今度は一回り大きいロボットが槍を持って待っていた。
黒ちゃんは剣に着火剤を振りかけて床で着火すると、再び全力でロボットに走り込んだ。
ロボットは走り込んでくる黒ちゃんに槍を突き出すと、黒ちゃんはダメージを受けながら槍をへし折った。
「でぇぇい!」
バキッ!
そして不器用に両手剣を切り振りかぶると一気に叩きつけた。
「うおおぉぉぉおお!」
ズガン!!!
プァァアアア!
2階も一瞬で攻略すると、走って階段を登った。
黒ちゃんは3階に飛び込むと、そこにはロボットの武闘家が待っていた。
武闘家は突撃してくる黒ちゃんにミドルキックを繰り出したが、黒ちゃんはタックルでそのまま吹き飛ばした。
「どすこぉおい!」
ドゴッ!
カラン!
黒ちゃんは勢いよくタックルした衝撃で剣を落としてしたが、そのまま素手で武闘家に殴りかかった。
「おぉぉりゃぁぁああ!」
バキッ! バキッ! バキッ!
プァァアアア!
黒ちゃんは素手でロボットを殴り倒すと、落とした剣を拾って階段へと走った。
そして、そのまま勢いに乗って4階へ行くと、ロボットの両手剣の騎士が待ち構えていた。
黒ちゃんは両手剣を振りかぶると、逆ギレ気味に走り出してロボットに斬りかかった。
「うおおぉぉぉおおおお!」
ガンガンガン!!
ガンガンガン!!
ロボットも黒ちゃんを斬りつけるが黒ちゃんは避けることなくHPを減らしながら攻撃を続けた。
「でやぁぁあああ!」
ガンガンバキ!!
プァァアアア!
黒ちゃんはロボットを倒すと急いで5階へ上がって行った。
それを見ていたアカネはめぐに言った。
「なぁ、めぐ。なんか、黒ちゃん戦い方が雑じゃないか?」
「う、うん……」
黒ちゃんは5階に出ると、最後のボスの弓使いロボットが矢を放ってきた。
ヒュッ、ヒュッ……ドッ、ドッ!
弓使いが放った矢は2本とも綺麗に黒ちゃんの頭に刺さった。
「うおおおぉぉぉおお!」
しかし黒ちゃんは、頭に矢を刺したまま走り込んでタックルを食らわせた。
ドゴン!!
弓使いロボットは吹き飛んだが、そのまま矢を放ち続けた。
ヒュッ、ドッ!
矢は黒ちゃんの肩に刺さったが、黒ちゃんは気にも止めずに弓使いロボットに斬りかかった。
「おおぉぉりゃあぁあ!」
ガン! ガン! ガン! ドガン!
プァァアアア!
「攻略タイム、1分12秒004! 団体部門ダントツ1位です!」
「「「おお~」」」
黒ちゃんは矢が刺さったまま塔から戻ってきた。
「いやぁ、良い戦いだった」
するとアカネが笑いながらツッコんだ。
「おいおい、力ずくで上からブン殴ってただけじゃんか!」
「はっはっは、避けていては時間がかかる。あれで良いのだ」
「分かったから、矢を抜けって」
「ん? 刺さってたのか。はっはっは」
黒ちゃんは笑いながら矢を抜いた。




