ひろし、一緒に頑張る
社長と専務は1人倒して高鳥屋へ向かうと、社内で指揮を執っている常務からボイスチャットが入った。
「社長、第2陣が出発しました。こちらは経理の三枝が味方を庇って脱落しましたが、順調に被害が減っています」
「そうか。敵の総数は分かるか?」
「はい、残り36名です」
「とにかく回線の管理を徹底してくれ。これ以上侵入者を増やすな」
「はい」
ボイスチャットを切った常務は社員に言った。
「社長も頑張っている。私たちも頑張ろう!」
「「「はい!」」」
社員は一丸となってハッキングに立ち向かった。
その頃、アカネと黒ちゃんは敵を倒しながら、ミルネへ応援に向かっていた。
すると途中、アカネは建物に隠れている魔法使いを見つけた。
その魔法使いは腕に白い布を巻いていた。
アカネはそれを見て黒ちゃんに言った。
「あの人味方だよな。何かあったのかなぁ、隠れてるよ」
「うむ。もうHPが無いのかもしれんな。全回復薬も持っているし、行ってみよう」
二人は隠れている魔法使いの前に行くと、魔法使いは頭を下げて話し始めた。
「すまない、HPがもう無いんだ。回復薬を持ってないか?」
それを聞いて黒ちゃんが答えた。
「大丈夫だ、全回復薬がある!」
黒ちゃんは「近くのプレイヤー一覧」を開くと、それらしきプレイヤーを選択して全回復薬を送信した。
すると突然、黒ちゃんは無防備なアカネを掴んで遠くへ投げ飛ばした。
「うわぁぁぁ! 何すんだよ黒ちゃん!!」
ズザァァ、スタン
アカネは転がると受け身を取って立ち上がった。
そこへ黒ちゃんからボイスチャットが入った。
「痺れナイフだ! こいつは敵だ、早く逃げろ。わたしはもうダメだ」
「はぁ? 何言ってんだよ!」
「離れろ!! もう詠唱が終わる。雷の最高魔法だ」
アカネが空を見ると、めぐが放った最高魔法の3倍はあろうかという巨大な雷の塊が出来上がっていた。
「おい! まじかよ! なんだよぉ!!」
するとまた黒ちゃんからボイスチャットが入った。
「アカネ。……データ消えたら、一緒にメインクエスト行ってくれるか?」
「お、おい! なに言ってんだよ! そんな汚いヤツ、脳筋パワーで倒せよ! 負けるなよぉ!!」
パンッ……
ドガガガガガガガガガン!!
巨大な雷の塊は、痺れて動けなくなった黒ちゃんを直撃した。
バリバリバリバリ!
そして大放電を起こすと、黒ちゃんはそのダメージでその場に倒れた。
ドシャ……
「黒ちゃん!!!」
アカネは大放電から下がりながら叫ぶと、黒ちゃんは笑顔を見せながら静かに消滅していった。
その様子を見届けた魔法使いは、薄ら笑いを浮かべながら満足そうに呟いた。
「ウケる。さっきの敵が全員白い布を巻いてたから、もしやと思ったら……、やっぱりそうか」
アカネは薄ら笑いを浮かべる魔法使いを睨みつけると、走り出して大声で言った。
「おい、お前だけは絶対に許さないからな」
「なんだ、彼氏やられて怒こ……」
ブワッ……
アカネは一瞬にして魔法使いの懐に入ると、魔法使いのローブを掴んで荒々しい背負い投げを決めた。
投げられた魔法使いは受け身を取ることを知らなかったため、頭から地面に叩きつけられた。
ガキッ!
「いってぇ! ……クッ、……クリティカルじゃねぇか。こんな攻撃なのに結構HP減るじゃん……」
「おい魔法使い! 詠唱してみろよ。終わる前にぶん投げてやるから」
魔法使いはアカネの言葉に怯むと、後ろへ下がりながら詠唱をした。
「聖なる雷を司る者たちよ。我に……、うわっ!」
バッ……
しかしアカネは素早く魔法使いのローブを掴むと、豪快な大車を決めた。
ブワッ!
魔法使いはあまりの速さに為すすべもなく再び頭を地面に打ち付けた。
ゴッ!
「く、くそう……、またクリティカルになっちまった。HPだいぶ減ったじゃねぇか」
さらに恐れをなして下がる魔法使いにアカネは距離を詰めいていった。
「聖なる雷を司る者たちぶっ!」
ブワッ!
「でゃぁあああ!」
アカネは気合もろとも懐に飛び込むと、力づくで一本背負いに持ち込んだ。
「うわぁぁああ!」
ゴキッ!
受け身が取れない魔法使いは、思わず手を出し、地面に顔面を激しく打ちつけた。
「な……なんだこれ……」
魔法使いはそう言い残すと消滅していった。
「ちくしょおぉぉ!」
アカネは大声で叫ぶと、泣きながらミルネへ応援に向かった。
ー ギーカブル社内 ー
エンジニアのヤマちゃんは爪を噛みながらイラついていた。
「雑魚が! 調子に乗りやがって」
「ヤマちゃん、どうしたの?」
「相手のエンジニアの人数が増えたんだよ。ハッキングが邪魔されてる」
「そうね。さすがに時間がかかりすぎてるわ。残りの2人はどうしたの?」
「あいつらは、カード番号を抜き出すのに手一杯だよ」
「どちらか1人、ヤマちゃんを手伝えないの?」
「う……、うん。真理さんがそう言うなら」
ヤマちゃんはハッキングを続けながら2人にメッセージを送った。
ー ピンデチの時計台広場 ー
その頃、黒ちゃんはリスポーンしていた。しかし下着の状態だったので、すぐに状況を理解した。
黒ちゃんはVRグラスを外してログアウトすると、スマホを取り出して電話を掛けた。
「もしもし、第八交通機動隊の大黒です。サイバー犯罪対策課に繋いで頂けませんか」
黒ちゃんはしばらく電話をすると、スーツに着替えて出かけて行った。
その頃、コーシャタ内では社長と専務が第2陣と協力して高鳥屋の周辺から黒のメンバーを一掃していた。
社長は常務にボイスチャットを入れた。
「わたしだ。高鳥屋周辺の侵入者は排除した。こちらの被害は?」
「社長、こちらは社員4名とエージェント1名、そしてエージェントのフレンドが17名脱落しました」
「残りの敵味方の数は?」
「こちらは22名、敵は27名です。しかし脱落したうちの10名は、同じ敵2名にやられています」
「ほう。その2名は強そうだな」
「はい、エージェントもやられました」
「プレイヤーネームはわかるか?」
「カワセミと、ミドリです。公開プロフィールに写真があったので送信します」
「ふっ、ふたり合わせて翡翠か。顔を覚えておこう。残りの敵はどこにいる?」
「現在ミルネ周辺に集まっています。そして敵の5人の独立部隊が高鳥屋へ向かっているようです」
「わかった。引き続き社内は頼むぞ」
「はい。社長もお気をつけて」
社長はボイスチャットを切ると、専務の大谷と第2陣のメンバーにカワセミとミドリの写真を転送して話した。
「この写真のカワセミとミドリという敵プレイヤーに出会ったらくれぐれも気を付けろ。強いらしい」
「「はい」」
「私と大谷くんはここに残って敵の独立部隊を迎え撃つ。君たちはミルネへ向かってくれ」
「「はい」」
第2陣のメンバーはミルネへと向かった。
その場に社長と専務の大谷しか居なくなると、社長はおもむろに大谷へ話しかけた。
「大谷くん。一緒に会社を立ち上げた時は、こんな事になるなんて思わなかったな」
「そうですね。社長の家で一緒にゲームやっていた頃が懐かしいです」
「そうだな。そういえば、大谷くんは格闘ゲーム上手かったよな! わたしはいつも負けてたな」
「社長もシュミレーションゲームでは敵無しじゃなかったですか」
「はっはっは! そうだったな。このゲームも楽しんでくれている人たちがいる。その人たちのためにも、ハッカーには負けてられんぞ!」
「もちろんです!」
大谷がそう答えると、道路の向こうから5人の黒のメンバーがやってきた。




