ひろし、おばあさんと語り合う
ー 翌朝 ー
おじいさんが起きてくると、テーブルには朝食が用意されていて、おばあさんはゲームをしていた。
「おばあさん、よっぽど楽しいんだな。良かった」
おじいさんは椅子に座って朝食をとりはじめた。
その頃おばあさんは、マユとメイとナミと一緒にコーシャタ近くの砂漠地帯で大型のサンドワームと戦っていた。
騎士のマユはサンドワームに臆することなく盾を前にして走り込み、片手剣で斬りかかった。
「やー!」
ズバッ ズバッ!
剣はサンドワームの胴にヒットしてダメージを与えたが、サンドワームはマユに体当たりをしてきた。
ドンッ!
「わっ!」
マユは吹き飛ばされると、砂の上に転がった。
すると即座に僧侶のメイが回復魔法を唱えて回復させると、今度は、おばあさんが詠唱をはじめた。
「凍てつく氷の女神たちよ、我に冷血なる力を与えたまえ。凍る六花の結晶をもって嘆願する。あの者に絶対零度の裁きを!」
キーーン……、ガガガガン!
なんと、おばあさんは氷の詠唱をマスターしていた。
サンドワームは大きく怯んだものの、今度は噛みつき攻撃を仕掛けてきた。
カーン!
それを見たメイが防御魔法を展開すると、サンドワームの攻撃は弾かれた。
ヒュッヒュッヒュッ……カッ、カン、ズドッ!
グォォォォオオオ
そしてナミの矢が1本だけヘッドショットを決めると、サンドワームは声をあげて砂の上に倒れこんだ。
「凍てつく氷の女神たちよ、あの者に絶対零度の裁きを!」
キーーン ガガガッ
追い打ちをかけるようにおばあさんが小呪文を唱えると、すかさずマユが走り込み、片手剣で頭を突いた。
「とどめ!」
ドッ!
すると、サンドワームは静かに消滅していった。
『4ポイントのステータスポイントを獲得しました』
おばあさんは思わず跳び上がって声をあげた。
「やった、マユさん、メイさん、ナミさん、ありがとう! 一緒に倒せたわ!」
「洋子ちゃん、魔法すごかったよ!」
マユがそう言うと、メイと懐いたアルマジロを頭に乗せていたナミも笑顔でウンと頷いた。
「みなさん、ありがとうございます」
おばあさんは深々と頭を下げた。
そして、おばあさんは匂いを手掛かりに砂を掘ると貴重な砂漠キノコを手に入れた。
「あったわ。これで魔法防御薬が作れるわね。よかった」
するとナミの頭の上にいたアルマジロが飛び降りてきてキノコをクンクンした。
しかし、アルマジロはあまり興味を示さなかった。
「あら、この子は岩キノコじゃなきゃダメみたいね。うふふ」
アルマジロはナミの体をよじ登ると、再び頭の上に戻った。
その様子を見ていたおばあさんはアルマジロに顔を近づけて言った。
「あなたはナミさんの頭の上が好きなのね」
するとナミが頭の上のアルマジロを撫でながら答えた。
「このコ、頭の上が安心するみたぃ」
「うふふ。変わったコね」
おばあさんは笑いながらアルマジロを撫でた。
その後も、おばあさんは匂いを頼りにみんなで砂漠を歩き回りながらキノコを集め、結局合計50個以上の砂漠キノコを集めた。
「これだけあれば十分ね」
おばあさんたちは笑い合いながらマユのモービルに乗ると、ピンデチの村へと向かった。
◆
おばあさんたちはピンデチの村に戻って店に帰ると、店の前にお客さんが並んでいた。
なんと昨日、防御強化薬を相場より安く売っていたので、お店の噂がツイッタグラムで拡散していたのだった。
マユが慌てて店の前に行くと、並んでいる騎士が話しかけてきた。
「昨日の防御強化薬のお陰でクエストが進んだよ! また買いたいんだけど、まだあるかな」
「はい、あります! 今日は魔法防御薬も作れますよ」
「ほんとに!? 次のクエスト魔法系の敵が多いんだ。それも5個もらえる?」
「ほんとうですか! すぐ店を開けますね!」
マユは急いで店を開けると、おばあさんとメイとナミも慌ててマユを手伝った。
おばあさんたちは急いで商品を用意して開店すると、並んでいた人たちが一気になだれ込んだ。
「防御のやつ10個ちょうだい!」
「おれも10個」
「全回復薬ってまだある?」
「アルマジロかわいい」
「あ、少々お待ちください! いま調合しますので」
「ぁ、ぇぇと、ぁの……」
「すみません、こちらにお並びください!」
バタバタバタバタ……
開店と同時にもの凄い勢いで商品が売れてゆき、ものの数分で商品が無くなり閉店となってしまった。
マユは嵐が去ったような店内で両膝をつくと、呆然としながら呟いた。
「すご……。こんなに売れたの初めて……」
マユがそう言うと、メイとナミも頷いた。
ー カフェ ー
おばあさんたちは、お店が品切れで閉店したのでカフェにケーキを食べに来ていた。
マユはケーキを食べながら、おばあさんに店の経営の報告をした。
「洋子ちゃんのお陰でお店の貯金がたくさん貯まったよ。これなら大きい店に引っ越せるかも!」
「あら、それは良かったわ。わたし、みなさんが喜んでくださるのが本当に嬉しいの」
「ありがとう洋子ちゃん。わたしたちも洋子ちゃんが助けてくれるから嬉しいよ。いつもありがとうね」
メイとナミも一緒に頷いた。
すると、おばあさんは気になることを聞いてみた。
「そういえば、あのお店って賃貸なのかしら?」
マユはケーキを食べながら答えた。
「うん、毎月2000プクナ」
「あら、それなら毎月4000プクナの物件なら倍の広さなのかしら」
「だと思う。村のデータセンターで物件が見れるから、あとで見に行く?」
「あら、それはとっても楽しそうね!」
メイとナミとアルマジロも嬉しそうに頷いた。
おばあさんたちは、ひとしきりお喋りしてケーキを食べ終わると、お昼ごはんを食べに一旦ログアウトした。
おばあさんが現実世界に戻ると、台所でおじいさんが昼食を作っていた。
おばあさんは慌てて台所に行くと、おじいさんに言った。
「あらあら、つい夢中になっちゃって。ごめんなさい」
「ははは。なんだか夢中になってるおばあさんを見ると嬉しくなってしまってな。もう出来たよ」
おじいさんはプライパンのお好み焼きを皿に移すとソースとマヨネーズをかけた。
「あら、あなたのお好み焼き久しぶりね。わたし好きなのよ。何年ぶりかしら」
おばあさんはそう言いながら、冷蔵庫からサラダと漬物を出してきた。
そして、おじいさんが作ったお好み焼きを半分に切って分けるとテーブルに持って行った。
「昔は1枚全部食べられたけど、今は半分ずつで十分ね。うふふ」
おじいさんとおばあさんはテーブルにつくと、両手を合わせて昼食に頭を下げた。
「「いただきます」」
おばあさんはお好み焼きを一口食べると、幸せそうな笑顔になっておじいさんに言った。
「おじいさん、おいしいわ」
「あぁ、それは良かった」
「おじいさんに感謝ですね。このゲームのお陰で、たくさん話すようになりましたものね」
「いやぁ、それを言ったらゲームのお友達のみなさんのお陰だよ。みなさんのお陰でゲームできるんだから。ははは」
「お陰っていい言葉ですね」
「ああ、そうだな」
おじいさんとおばあさんは笑い合いながら、ゆっくり昼食をとった。




