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遊戯開始  作者: 羽ぐいす
2.交流と第一回イベント
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迫る手


 【ログイン49日目】※ゲーム内時間換算(34日)

 【イベント1日目】

 side:マカ


 

 プレイヤーらしき反応があったので《精霊魔法》を使って大量の水で押し流した。

 プレイヤーはまだ生きているみたいで反応は消えていない。


 それにしても制御が難しいわね。


 ついさっき入手した《精霊魔法》は精霊に頼んで魔法を発動させるというスキルだった。スキルを発動すると精霊らしきものが感知でき、何となく意思疎通が計れた。


 私が直接制御できたらいいんだけど、実際に魔法を制御するのは精霊なので調節が難しい。

 発動するたびにもう少し強くだとか弱くだとか文句を言っている。


 けど、その分メリットもある。

 規模の割にMPの消費が少なかったの。


 多分だけど精霊のMPを使ってるんだと思う。

 完璧に制御できるようになればかなり強力なスキルになるわ。


 それと最初は使えないと思ってた【審美眼】は結構使えるスキルだった。

 さすがユニークスキルってやつ。


 発動すると視界が赤外線? みたくなって敵を見つけやすくやるの。

 索敵スキルがなかった私にとって、とてもありがたいスキル。


 威圧は発動すると敵が動かなくなった。

 金縛りみたいに固まってるのを見てちょっと面白かったわ。


 

 ゼリアとサイと別れて数分で私はプレイヤーに襲われた。

 レイクの話だとまだ時間はあるはずだけど、実際にプレイヤーが来ていたのだ。


 全然強くなかったから倒すのは楽勝だったけど、そこからプレイヤーの数は急激に増えていった。

 数分で数えきれない量のプレイヤーを確認できた時点で、私はプレイヤーに対しての準備を諦めた。


 そしてプレイヤーを倒すことに集中したわ。


 《原子分裂》と《次元吸収》で敵を薙ぎ倒しながらゼリアとサイを探したけど、見つからなかった。

 

 もしかしたら間違って倒しちゃったかもしれないわね。

 【審美眼】の色と形だけで判断してたから、間違って倒しててもおかしくない。


 数時間も同じ作業をしてるからしょうがないわよね。

 だから《精霊魔法》とかで遊んでるのだし。


 脱線したことをのんびり考えていると【審美眼】に新しい反応があった。


 色はプレイヤーと変わらない。

 けど、形が見たことある形だった。


 ……ウルフ? 

 サクヤが来たのかしら?


 ウルフと思われる魔物? プレイヤー? は私の方に向かって走っている。

 かなりの速度ね。


 この森では今のところ野生のスライムしか見てないので、このウルフは魔物プレイヤーだと思う。

 私は《精霊魔法》で攻撃するのを止めた。


 林の間からウルフが出てくる。

 姿を普通に見ても、それは森エリアでよく見たウルフそのものだった。


 サクヤの他にもウルフを選んだプレイヤーがいたのかしらね。


 と、私はそう思った。



 「ウォンッ!!」



 ウルフが短く吠えた。

 言葉が通じない? わざと狼語みたく吠えたのかしら。


 また癖のあるプレイヤーが来たの?

 と、私が思った瞬間。

 

 身体が急に重くなった。

 




 ☆☆☆☆☆



 【ログイン49日目】※ゲーム内時間換算(34日)

 【イベント1日目】

 side:レイク

 


 あれからどれくらいのプレイヤーを倒したのでしょうか。

 もはや数えることも出来ません。


 スケルトンやゾンビの総数も減ってきています。彼らは倒されても復活しますが時間がかかるので、全滅するのも時間の問題でしょう。


 それに加えて強敵も増えてきています。

 最初の少女たちに続いて、優秀な魔法使いが多数来ています。


 《光魔法》を使う魔法使いが多いので助かっていますが、私がもし普通のアンデットでしたら苦労したことでしょう。


 しかし、それを抜きにしても苦戦することが多いです。

 武技スキルを駆使して何とか勝利を納めていますが、強力な武技スキルは軒並みクールタイムになってしまいました。


 思っていたより一人で戦うというのは厳しいです。


 サクヤさんやマカさんは大丈夫でしょうか。

 私はふとそう思いました。


 サクヤさんは滅多なことでは大丈夫でしょうが、マカさんは心配です。戦闘の経験も少ないですし、回復手段も限られています。


 まだ生存しているのでしょうか。



 「マカさんに通信できますか?」



 『確認。……通信できませんでした』



 私の鎧の中にいる骸骨は無機質にそう言いました。

 通信できません、でしたか。


 マカさんが通信を拒否したのでしょうか。

 それとも、もしかしたら……。


 浮かんだ考えを振り払うように、私は続けて骸骨に言いました。



 「サクヤさんに通信できますか?」



 『確認。……通信できませんでした』



 返ってきたのは同じ答えでした。

 

 もしかしたらマカさんは倒されたと思いましたが、サクヤさんがここまで短時間に倒されるとは考えにくいです。

 私は先ほど浮かんだ考えを撤回しました。


 恐らく、プレイヤーが侵攻してきたので通信ができなくなったのでしょう。

 この仮説で間違いないと思います。


 走りながらそう考えていると、プレイヤーの交戦地点に着いたようです。

 居るのは一人のプレイヤーでした。


 桃色の髪で手には杖を持っています。

 髪色自体は特に珍しくはないですが、ソロのプレイヤーは初めて見ました。


 これはかなり楽が出来そうです。


 

 「――――」



 プレイヤーが何か呟きました。

 スキル名でしょうか。よく聞き取れませんでした。


 しかし、私はすぐに自分の違和感に気づきました。

 

 斧が急に重く感じたのです。

 ……いえ、斧が重くなったのではありません。

 

 私の身体が重くなったのです。


 私は焦りと共に流れるはずのない冷や汗を感じました。

 




 ☆☆☆☆☆



 【ログイン49日目】※ゲーム内時間換算(34日)

 【イベント1日目】

  side:ブラン




 「僅か3時間でエリアボス4体を討伐か……」

 

 

 薄暗い洞窟の中、ブランはそう呟いた。

 彼らはいま洞窟のエリアボスを討伐したところだった。


 洞窟のエリアボスは他のエリアボスと違い、その情報が全く無かった。

 エリアボスが姿すらも見せなかったのだ。


 暗い洞窟とブランの魔法は相性が良いため、ブランとそのパーティは多数の上位プレイヤーと攻略に来た。

 察知系のスキルを持つプレイヤーを先導させ、無事にエリアボスを発見し倒すことが出来たのだ。


 洞窟のエリアボスは人型だった。

 全身をローブで隠していたので詳細は分からなかったが、言われなければプレイヤーとほとんど変わらない見た目だ。


 通りで見つからないわけだ、とブランたちは思った。


 エリアボスに戦闘能力は無かった。何やら奇妙な魔法は使ってきたが別段脅威ではなく、苦戦することなく終わった。


 逆に最も苦戦すると思われていた山村エリアが先に倒されていたことに驚いていた。

 そして、続々と湿林や墓地のエリアボスも倒されていった。


 

 「順調なら良いんじゃないです?」


 

 ブランの呟きを聞いていたのだろう。

 隣に来たルイズがブランに向かって言った。


 

 「まあそうだが。あまりにも呆気なさすぎてな」



 「リーダーが警戒しすぎなんですよ」



 軽い調子でルイズは言った。

 それを聞いて、確かにそうかもな、とブランは思う。


 考えてみれば森エリアにいた魔物たちがおかしかっただけなのだと、そう考えた。

 ブランはメニューからイベントの項目を見た。


 すると、そこにはそれぞれのエリアの他にもう一つ選べる場所が増えていた。

 事前情報通り、イベントボスのエリアだ。



 「ルイズ。一度戻るぞ」


 

 「なんでです?」



 「イベントボスについて話すためだ」



 「……リーダー。イベントボスもそんなに強くなさそうですよ?」



  「なに?」



 ブランは怪訝な表情で聞き返した。

 イベントボスが強く無い。その情報はどこから入手したのか。


 

 「掲示板にもう色々書いてますよ。イベントボスに速攻で挑んで死んだ奴らの情報が」



 「なるほどな」



 ルイズの言葉を聞いて、ブランは納得した。

 確かに普通のプレイヤーなら逸早くイベントボスに挑むだろう。


 そして、そうやって入手した掲示板の情報なら信憑性もある程度高い。

 ブランは掲示板を見ていく。


 

 「確かにイベントボスの討伐も時間の問題だな」



 現状の戦力だけでも時間を掛ければいずれ倒せる。

 ブランはそう確信した。


 

 「ならもう行きません? 絶対、与えたダメージとかで報酬変わりますって!」



 ルイズの言うことにも一理ある。

 元より、上位プレイヤーで話し合っていたのはエリアボスの討伐についてだった。


 エリアボスの討伐が終わった今、ブランが彼らを統率する理由もなければ気にかける必要もない。

 ブランはそう思い直した。



 「分かった。我々も行くとしよう」


 

 その言葉を待っていたパーティメンバーたちは直ぐにメニューを操作する。

 次々に洞窟から消えていく仲間たちを追うようにブランもメニューを操作し始めた。

 

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