カラスの扉の向こう
カラスの描かれた、装飾の豪華な扉を見つけた。いよいよ迷路を抜けたようだ。
扉を開けようと触れた途端、描かれたカラスが叫んだ。
「合言葉は?」
ここで壁の文字を使うようだ。
「僕が言ってもいい?」
インセニレの目をじっと見て言う。
「もちろん。……そんな風に言われちゃあ断れないさ。」
「ありがとう。」
とはいえ絶対に合っているかと言われたらわからない。緊張と快楽が混ざりあって心臓が高鳴った。
深呼吸してはっきりと言った。
「septem peccata mortalia」
カラスたちの黙っている数秒がとても長く感じた。
合っているのか、それとも違うのか。もう一度深呼吸をしたが興奮は収まらなかった。
「ガァーッ!」
描かれたカラスが叫んだ。さてどちらだ!?
「……通れっ!」
「ぃやった…!」
軋む音をたててゆっくりと扉が開いた。
重厚な扉の向こうには、星空のような光景が広がっていた。さっきまでいた場所とは正反対で、天井も壁も床も黒い。しかし光がないわけではなかった。無数の光の粒が至るところにある。
「目が慣れるまでなにもできない……」
「いや、耳は聞こえるぜ。どうせ見えないんだ。目を閉じて耳に意識を集中させてみろよ。」
「そうだね。」
インセニレに言われた通りにしてみた。
ピチャン
雫の落ちる音だ。後ろから聞こえた。
……そのあとは目が暗闇に慣れるまで、お互いの服の布が擦れる音しか聞こえなかった。やっぱり目の見える人が一番頼れるのは視覚だ。
早速後ろを見る。僕の目線より少し上の高さに、入ってきた扉の両横に窪みがあるのを見つけた。その中には横になった円柱の形をしたものが見えた。
「インセニレ、なんだろう、これ。」
返事がない。振り返るとインセニレが部屋の向こう側へ向かっていた。
円柱をよく観察してみることにした。両端が窪みに固定されていて、円柱の端は直径が少し小さい。何かが巻いてあるようだ。……とても細かいが目視できるくらいの凹凸がある。ただ、布ではなさそうだ。糸……?
まだこの円柱に触る必要はないのでインセニレに何があったか聞くことにした。
この部屋も石造りだ。縦10m横8m高さ2mぐらいだろうか。途中に階段があって、入り口側から向こう側に下がるようになっている。
部屋の壁に沿って幅80cmほどの通路があり、1mほどの高さの塀と壁に挟まれて通路ができているという感じだ。
部屋の真ん中にはこの部屋と相似な長方形の祭壇のようなものがあった。祭壇の上部分は部屋の下段側の塀と同じ高さにあり、天井から祭壇上20cmあたりまで祭壇と同じ長方形のものが伸びている。
さらにそれには直径5cmほどの穴が空いた突起物こちら側と向こう側に一つずつ付いていた。
祭壇と通路の間には床がないので、あの祭壇に何かしろということだろう。




