密かな幸せ(ベリド公爵視点)
すみません、今回は殿下が出ません…。
「はぁ…」
思わず溜息がこぼれ落ち…しまったと慌てて周囲を見渡せば家族からの冷たい視線が痛い。
今日は久しぶりに家族揃っての夕食なのだが、味気なく感じるのは何故だろう。
「いい加減になさいませ、お父さま!何度目ですの?その溜息」
娘のエリーザが目をつり上げた。ああ、この厳つい顔が怖いと言われる私に叱咤してくれた美しい亡き妻を思い出す。
「……マリーちゃんが娘になる可能性がなくなったかと思うと…悲しいんだ…」
「「はあ!?」」
こんなことなら、さっさとロディアスとの婚約をまとめておけば良かった!なのにだ。この息子といえばまったくマリーちゃんを口説いてくれなかったし。
「お父さま?娘ならわたくしがいるでしょう?」
呆れたように宥めてくる娘を私はキッと睨んだ。
「おまえはいずれ嫁に行く身だろうが」
「あー、そのうち俺が嫁をもらうし」
「マリーちゃん以外のよその娘さんは私を怖がるのだぞ!私にはマリーちゃんしかいなかったんだ…」
一瞬おりる沈黙。私は目を潤ませて二人を見た。
「……ねえ、お兄さま」
「……なんだ」
「お父さまは宰相を務めていらっしゃいましたよね」
「ああ、他国からも恐れられている宰相さまだ」
なんだ、その会話は。そして、ますます冷たくなる視線は。だが私は気にしない。
「さんざんマリーちゃんを悲しませておいて……殿下はひどすぎるっ」
ブツブツと愚痴をこぼす私にロディアスが胸を張った。
「そこは安心しろ、親父。俺もそれなりに殿下に報復しといたから」
ロディアスの話に耳を傾けると、報復は殿下の気持ちがマリーちゃんに傾いた頃にやったらしい。
おかげでマリーちゃんが殿下の気持ちになかなか気づけなかったようだ。
「まあ、いずれはくっつくの分かってたからな。殿下にも多少キツイ思いしてもらわないとって思ってさ」
「なるほど、素晴らしいですわ」
ふむふむ。ロディアスもいい仕事をするではないか。
結局、我が家族はマリーちゃんがかわいくて仕方ないのだ。
「ベリドのおじさま」
出仕して執務室へ向かっていると、愛らしい声に呼び止められた。
振り返るとそこには予想どおり、かわいいマリーちゃんが笑顔で立っている。
「おじさま、相談があるんですけど…どこかでお時間いただけますか?」
「お安いご用だよ」
ああ、そうだ。きっとマリーちゃんはお妃になっても変わらない。何年経ってもこうして私に声をかけてくれるだろう。
私はこぼれる笑みを抑えることができなかった。
ラブラブはなかったですが、楽しかったです(笑)




