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異世界で侍女やってます  作者: らさ
第1章
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閑話「『お父さん発言』を巡る人々の反応」

 《団長とセイン》


「ひゃーはっはっ」

 おかしくてたまらない。ハナの言動にはいつも笑わせられるが、今回のは最高だ! 笑いすぎて腹が痛くなってきた。

「ダフル団長、笑いすぎです」

 セインが苦笑いしながら、止めるよう言ってくる。

「お父さんだぞ! お父さん! あんな眉目秀麗の青年にお父さんはないよなぁ。あぁ、おかしい」

「本当に、サイアス君が気の毒でなりません」

 セインも同意を示す。セインはたしか、サイアスと同い年だったか。


「サイアスはハナのこと気にしているのにな」

 おそらく惹かれているんだろう。皇子に対する抵抗だって、玩具をとられそうな子供みたいに必死で、おかしくて仕方なかった。


「しかし、サイアスが傍にいるのにときめかない女子もいるんだな」

「ハナちゃんにとって、この世界は仮住まいですよ。恋なんてする余裕あるわけないじゃないですか」

「そうか」

 たしかに、よく知らない世界で生きていくには、順応していかなくちゃならないことが多い。精神的な余裕はないか。


「それより、今回は止めないんですか」

 セインが眼光鋭く俺を見つめる。

「なんのことだ」

 とぼけて返してみるが、

「僕は気付いてますよ。あなたがサイアス君の恋愛をことごとく潰してきたこと」

 セインの言葉につい口元が歪む。やっぱり気付いてやがったか。こいつは医者のくせに変に鋭いところがあるんだよな。俺に気付かれずに、調べあげるなんて。やるじゃねぇか。


「へっ、本当にお前を医者にしとくのは惜しいよ」

「で、どうなんです。返答次第では、黙ってませんよ」

「止めねぇよ。今回は止めねぇ。大体な、あいつに言い寄って来るのはろくな女がいないんだ。大事な部下を、そんな女どもにくれてやるわけにはいかねぇだろ。だがな、ハナは違う。あいつがサイアスの地位に魅かれたり、それを利用することはないだろう。まぁ、サイアスの趣味は多少疑うがな。ハナは良いやつだ。サイアスの傍にいてほしいと思う」

「よかった。私もあなたと同意見です」

 セインがきれいに微笑んだ。今回も潰すといったら、どんな手を取ってきたのか。おお、コワッ。


 でもなぁ、セインよ。サイアスに言い寄ってくる女には、ろくな奴はいなかったけど、中にはまぁまぁいいんじゃないかってのもいたから、様子を見ていた件もあるんだぞ。まぁ、長続きはしなかったけどな。だから、俺はあいつの恋愛をすべて潰してきたわけじゃない。


「だが、肝心のハナがなぁ。サイアスにお父さん程度の意識では、先が思いやられるな」

「そうですね。まぁ、なんとかなるんじゃないですか」

 セインは、そう言って微笑むと部屋から出て行った。

 そうか、お前が動いてくれるなら心配はねぇな。俺は黙って見てりゃいいわけだ。


 俺は引き出しに隠しておいた酒を取り出し、グラスに注いで一気飲みした。

 あぁ、久しぶりに美味い酒だ。




 《ウィルとアリシア》


「お兄様、サイアスは可哀想ね」

 アリシアは、苦笑いしながらお茶を淹れて私の前に置いた。

「そうだね。あの年でお父さん呼ばわりとはね」

 私もつられて苦笑する。


 サイアスは、ハナのことを大切にしていて、侍女の話もなかなか受け入れなかった。彼女を大事に保護しているその状態が、ハナにとっては“お父さん”に見えるのだろう。彼女が今の環境に安心して身を置いていることがわかる。保護され、大切にされてぬるま湯の中にいるけれど、それを特別とは思っていない。サイアスの気持ちに気付くのはまだまだ先なんだろうな。


「でも、素直で元気な子ね。好感がもてるわ。ほかの侍女たちも受け入れてくれるといいんだけど」

 アリシアはお茶を一口含むと溜め息をついた。


 本当に。そうでなくては意味がない。侍女たちの意識改革をし、かつ警備強化を勧める。ハナに期待する役割は大きいが、彼女にならできると思う。そう思う私は甘いだろうか。




 《ツイルとマリーネ》


「サイアス様をお父さん呼ばわりしたらしい」

「まぁ」

 マリーネが、私の言葉に絶句している。王城に付き従ったガルトからの報告で、事の次第がわかった。ハナは本当にことごとくサイアス様の生活や心中をかき乱す。私は深く溜め息をついた。サイアス様の心中を思うとつらくなる。ハッキリとは自覚していないが、惹かれているであろう娘からのお父さん発言はつらいだろう。


「でも、お父さんのように安心感があるということよね。悪いことではないわ」

 マリーネは、一人頷き言葉を発する。


「いや、悪いことだろう。恋愛にも発展していないのに“お父さん的安心感”なんて必要ない。もっとこうドキドキするような駆け引きが存在しなくては。私はこれからサイアス様とハナが()()な関係を築けるよう積極的に介入しようと思います」

 私の言葉にマリーネが瞳を光らせた。

「私も協力させてもらうわ」




 《サイアス》


 お父さん・・・・。

 ハナが、私に対して抱いてる思いと役割だ。

 そんな役割はいらない。


 ハナにとって、母親はマリーネだろう、お爺さんはカッセルだ。お姉さんたちというのは侍女や女性の使用人だろうし、お兄さんはツイルや男性の使用人だ。


 せめてお兄さんのなかに入れてもらいたかった・・・・。

読んで頂きありがとうございます。

頑張れ、サイアス!

今日は、あと1話閑話を投稿いたします。

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