表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界で侍女やってます  作者: らさ
第1章
14/84

第14話

 あぁ、苦しい。


 今日は朝早く起こされて、軽食を摂って、登城準備をしている。

 まず、髪を細かく編み込まれて、宝石で作られた花の髪飾りをちりばめるようにいくつも挿された。

 化粧は、肌がきれいだからって薄くしてくれたけど、目元や唇を華やかに彩られる。

 ドレスは、サイアスさんのお姉さんのローゼさんが着ていたものなんだけど、お針子さんが徹夜して手直ししてくれた。昨日はブカブカ(主に胸部)、ズルズルだったドレスが一晩で私に合うようになっていた。すごいよ、ラインシート家。


 ただ、このドレス・・・・私の好みじゃない。マリーネさんや侍女さんたちは、私に似合うって言うけど、豪華すぎるんだよ。淡いピンク色で編み込みレースやシフォンとか装飾がたくさんついてるし、キラキラしているのは宝石かな。それがいくつもついている。

 日本だったら、いくらくらいするんだろう。情報番組で見た有名デザイナーのファッションショーやセレブの衣装でも見たことがない。それを、私が着ていいのだろうか。動きすぎて宝石が取れちゃうかもしれない。あぁ、ジャージが恋しい。


 侍女さんたちがドレスを着せてくれる間、マリーネさんは礼儀作法や淑女のマナーなどを教えてくれた。おばぁちゃんのお説教を思い出して、少し目がウルウルしてしまった。マリーネさんは、それを見て察してくれたのか、黙ってギュッと抱きしめてくれた。


「お待たせしました」

 マリーネさんに手を引かれて階下に降りる。

 サイアスさんは目を見開いて、口を半開きにした後、慌てて「綺麗だよ」って言ってくれた。本当かなビックリするくらい変だったんじゃないのかな。

 ツイルさんも、ガルトさんも私を見て驚いてる。変なんだろうな。

 カッセル爺さんだけは、笑いをかみしめて肩を震わせている。まったく、正直な爺さんだよ。




「不安か?」

 馬車の中で黙り込んでいると、サイアスさんが聞いてきた。

「ううん、大丈夫です。王様の前で粗相しないといいなと思って」

 苦笑いと共に返答した。だって、王様になんて会ったことないし。というか、日本に王様いないし・・・・。

 ある程度の礼儀作法はマリーネさんに習ってきたけど、王様の前でうまくできるかどうか。考えるだけで、緊張してしまう。

「ガレル国王は温厚だ。多少の失敗で叱責することはないよ」

 サイアスさんも苦笑いして返してくれた。私の緊張はその言葉と笑顔で少し収まった。



 国王との謁見は特別な部屋で行われるのではなく、プライベートな応接室で行われるらしい。

 サイアスさんに付いて長い廊下を歩いていると、進行方向の壁際に控える近衛の騎士がいた。副隊長のサイアスさんが通りすぎるのを待っているのだろう。その中の1人の騎士と目が合った。


「あっ、ニール!」

 思わず声が出た。ニールは私に顔を向けると目を見開いた。

「異世界人!」

 ニールの顔のブツブツはだいぶ良くなっていた。洗顔を積極的にやっているんだな。よしよし。

「顔のブツブツ、良くなったじゃない」

「お前のお蔭じゃない! 団長とセイン医師のアドバイスのお蔭だ」

「良かった。めっちゃ、落ち込んでたから、悪かったなぁって思ってたんだ」


「ハナ」

 サイアスさんの声に、我に返る。そうだ、今日は淑女、淑女なんだ。おとなしく慎み深くしてなくちゃ。

「それでは、ニール様。失礼いたします」

 ニールに軽く会釈をして、サイアスさんの後に続こうと前を向きかけた時、

「あの時は、悪かったな」

 ニールがボソリと謝ってきた。黙ったまま笑顔で礼を返すと、ニールは赤くなって背を向けて去って行った。よかった、悪い奴じゃなかったんだ。彼は強そうだし、一度手合わせしてみたいな。


 楽しい気持ちでサイアスさんの方に向くと、彼は何とも言えない顔で私を見ていた。

 あれ、これって怒っている時の空気と一緒だ。

 そうだ、軽々しく男の人と話しちゃいけないんだった。やってしまった。


「よう、ハナ。おっ、馬子にも衣装だな」

 団長が私たちに向かって歩いてきた。

 相変わらず適当な感じで、私のことを頭から足元まで見まわしている。不躾な視線に睨み返すと、

「ははっ、さすがラインシート家だな。侍女の手が行き届いているようだ。それなりに令嬢にみえるぞ」

 奴は今度は、くるくると私の周りを回りだした。

「ジャック・・・・」

 サイアスさんが呆れたように返している。本当に気のきかない奴だ。いつか目に物見せてやる。




 国王の応接室は煌びやかだった。フカフカの絨毯に、数々の絵画や装飾品・・・・。ラインシート家もすごいけど、ここはそれ以上にキラキラしていて、目がチカチカしてしまう。


 室内にはこの煌びやかさに負けない人々が揃っていた。

 ガレル国王は、六十歳近いと聞いていたけど、若々しくて渋い感じがする。彼は表情には温和な笑みを湛えて居るけど、瞳の奥はしっかりと私を見据えていて、どんな人物なのか見極めようとしているのを感じた。そりゃそうだよね。異世界人だもの、怪しいよね。

 国王の隣には、超美形のウィル皇子。

 さらにその隣を見て衝撃を受けた。お人形だ! 実物大のお人形が座っている! 長く緩くウェーブのあるプラチナブロンドの髪に、翠玉の瞳を持ったお人形! 本当に生身の人間? どことなく超美形に似ている彼女は、私の着ているドレスとは比べ物にならない、豪華なドレスをまとっている。暫く彼女から目が離せなかった。

 気を取り直して、周囲を見回すと、主治医としてセイン医師も同席していた。それにハリウッドの渋い俳優系に属する団長。そして、サイアスさんがいるこの部屋は眩しくて仕方がない。自分だけが浮いているような感じがして落ち着かない。

 なんだか息苦しさを感じていると、サイアスさんが背中をポンポンと軽く叩いてくれるのを感じた。

 ホッとする。サイアスさんのお蔭で落ち着いて前を向くことができた。



「イーリアス王国には慣れたか」

 国王が声をかけてくれる。

「はい。ラインシート家のみなさんが良くしてくだひゃるので」

 うぅ、舌が良く回らない。


「早速だが、クサノ・ハナ。今回は頼みがあって登城してもらったのだ」

 席に着くとウィル皇子が話し始めた。

「はい、伺っています」

「妹のアリシアの侍女になってくれないだろうか」

「へっ、私が侍女ですか?」

 あのお人形みたいな綺麗なお姫様はアリシアっていうんだ。お姫様の侍女をしてほしいってこと。

「アリシアは、今月2回も命を狙われている。先日は浴室に忍んでいた女の暗殺者に襲われ、侍女1人を失い、女性騎士が深手を負った」

 ウィル皇子は、苦しそうに顔を歪めた。

「浴室?」

 男性騎士が入ることのできない場所に忍び込んだんだ。でも、女性騎士はどうしていたんだろう。

 私が疑問を表情に浮かべると、

「女性騎士には爵位の低い者か平民出しかいない。皇女付きの侍女たちが、皇女に近づけたがらない」

 団長が苦虫をつぶしたような顔で答えてくれた。

「でも、私も平民ですよ」

「だが、立場は特殊だ。君は身分にも臆せず、この世界にない体術を極めている。それに、優しく素直な性格。これらは、他の侍女の意識を変えていける可能性持っていると思う」

 皇子はそう言うけど、実感がない。それに刃物をもった暗殺者に対するなんて怖い。

 んっ、ちょっと待て! そうだ! 皇女の部屋は私が現れた場所だって聞いている。そこに勤めるようになれば、日本に帰れる手がかりが得られるかもしれない。


「わかりました。私でよければお引き受けいたします」

「ありがとう。では、王城に部屋を用意しよう」

 皇子は、背後に控えている年かさの侍女に、指示を出そうとする。

「えっ? 王城に住むことになるんですか」

「あぁ、侍女の多くはそうしている」

「あの、それは困ります。ラインシート家から通うことはできませんか」

 ラインシート家から出たくない。2週間くらいしかお世話になってないけど、ラインシートのお屋敷は私にとって特別の場所になりつつあった。

「どうして」

 ウィル皇子は不思議そうに聞いてくる。

「あの・・・・ラインシート家には、母のように良くしてくれる人がいるんです。お爺さんや、お兄さん、お姉さんのように思える人もいて、私にとって大切な場所なんです。王城に住まなくちゃならないなら、侍女は引き受けられません」

 私の言葉にウィル皇子は困った顔をした。サイアスさんも驚いている。でも、これは譲れない。


「家族のようなんだ。それは今の君にとって大切なことだね」

 セインさんが、皆の沈黙を破る。

「はい」

「ちなみに、サイアス君の役割は?」

「サイアス様?」

 みんなが私を見ている。サイアスさんか、あんまり考えたことないな。保護者だし、心配かけてよく怒られるし、でもよく話も聞いてくれて・・・・あぁ、そうか。


「お父さんです!」


 私の答えに、サイアスさんはがっくりとうな垂れた。しまった! そうだよね。お父さんはあんまりだ。お兄さんにしとけばよかった。

「アハハ」

 ひときわ大きな声で団長とセインさんが笑っている。微妙な顔をしているのは王様と皇女。


「わかった。ラインシート家から通うということでいいだろう」

 ウィル皇子は苦笑いしながら答えてくれた。

「ありがとうございます!」

 よーし、侍女か頑張るぞ。日本に帰る手がかりも見つける! 

 それにしても皇女さまは誰に狙われているんだろう。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ