第5話「味が足りない?」後編
どうも昭和40年代らしい…
夕方。
ラーメン屋の裏口。
若い店主がへたり込んでいる。
汗。
腕まくり。
師匠が煙草を吸いながら寸胴を見る。
「ラーメンってのはな」
「時間をサボると味に出る」
若い店主。
「でも、長く炊くほど金も減ります」
「ガス代も」
師匠。
「減るよ」
「でも時間抜いた味は、客にバレる」
沈黙。
ぐつぐつ。
スープの音。
師匠が続ける。
「時間ってのはな」
「かけた分だけ、残るんだ」
奏が少しだけ目を細める。
雄一は黙って聞いている。
若い店主が立ち上がる。
「……もう一回、作ります」
夜。
閉店後。
若い店主が二人にラーメンを出す。
湯気。
脂。
香り。
奏が箸を持つ。
雄一も食べる。
ズズッ。
ズズズッ。
無言。
店主が不安そうに見る。
奏。
「……うま」
雄一。
「全然違う」
店主が笑う。
まだ若い。
でも少し誇らしそう。
奏は水を飲む。
ぷはっ。
まるでビールみたいな顔。
「これだよこれ」
その瞬間。
店の光が揺れる。
外が白くなる。
時計の針が逆回転。
カチカチカチカチ。
視界が歪む。
気づくと。
現代。
古針時計店。
夕方。
いつもの時計の音。
雄一。
「……戻った」
奏は白いリュックから黒い置き時計をしまう。
「ん」
「ちゃんと戻った」
雄一。
「いや軽いな……」
カラン。
ドア。
三雲しおりが入ってくる。
「お疲れ様ですー……って」
「なんで二人ともラーメン食べた顔なんです?」
奏。
「ラーメン行く?」
場面転換。
現代のラーメン屋。
三人並ぶ。
店主がラーメンを置く。
湯気。
香り。
雄一がスープを飲む。
止まる。
奏を見る。
奏も少しだけ笑う。
「戻ってる」
三雲。
「え?」
奏。
「時間」
三雲は意味がわからないまま食べる。
一口。
「……あ、美味しい」
店主が少し嬉しそうに笑う。
その奥。
寸胴。
以前より火が強い。
ぐつぐつと、
少しだけ長く煮えている。




