自称ヒロインの奇行(危行?)②
「ヘレン、ヘーレーン!」
ったく、どこ行きやがったあいつ。
明日はマデリナ王妃の誕生パーティーで私らもくっそ忙しいってのに!
こんだけ探していないってことは、もう第四王子宮にはいないのか?ったくもう、今日はなんの“イベント”がある日だっけ?
ヘレンに構うようになってから女官長に許可をもらって特別につけてもらったポケットからメモ用紙を出して確認する。
マデリナ王妃の誕生パーティーの前日は、ゼクト殿下が婚約者のマリア・ケーニッヒシュタイン公爵令嬢と派手にケンカすると書いてある。
その後、廊下で偶然出会ったヘレンにパーティーでのエスコートを申し出るらしい。
なぜだ。
いや、お年頃のそこそこの家柄のお嬢様がゴロゴロしてるわけだから、女官が休みを取ってパーティーに出るってのはよくあることなんだよ?でも、そこにヘレンは関係なくない?
あの子、王宮のパーティーに出られる身分じゃないでしょ。
ああ、でも、このイベントをこなすためにヘレンはゼクト殿下の近くに行ったのかも。
ってことは、第一王子宮か。めんどくさ。
リーフプラウ王宮は、国王夫妻が暮らす本宮と、五つの離宮で構成されている。
本宮を中心に、北側に先代国王クロード陛下が暮らす北の宮があって、そこから時計回りに第三王子宮、第一王子宮、第二王子宮、第四王子宮が配置されている。
要するに、日当たりのいい南側に後継ぎの部屋があると。
本宮の正面入り口が南側にあるもんで、ここは許可なく突っ切れない。
北西にある第四王子宮から南東にある第一王子宮へ行くには、本宮内を突っ切るか、北の宮と第三王子宮を迂回していくしかない。
ちなみに私は突っ切って行く派だ。迂回とか面倒なこと誰がするか。
「あ、ミカさん、ちょうどよかった。ヘレンが第一王子宮に来ておりませんか?さっきから姿が見えなくて困っているんです」
「ひっ……ぃいえ、存じ上げませんわ!」
城の中を突っ切る途中、たまたま近くを通りかかった同僚を捕まえて聞いてみる。
ミカさんは第一王子宮の女官だから、なにか知ってるかもと思ったんだけどさ。
な ん で、人の顔見て後ずさるのさ!失礼な。
そういや、この人も最初のころ色々してくれたっけ?ちょっと口に出すのも恥ずかしい感じの秘密があったから、それをネタにおど……失礼、お話しした気がする。
「じゃあ、ゼクト殿下は今なにをしていらっしゃいます?もしかしたら近くにいるかもしれないので」
「え、ええ?今でしたらマリア様とのお茶会の最中ですけれど。それにしても一体どうしてあの方はそんなに殿下方にご執心ですの?」
「知りませんよ。あの変人の考えることなんて、私にわかるわけがないでしょう」
「変人はお互い様では……?」
あんだって?誰が変人か。
ニムさんはちょーっと人より防衛本能に長けた普通の人だよ!
失礼しちゃう。同僚だと思って穏便に笑顔で対応してたってのに。
って、ミカさん、なんかめちゃくちゃ体調悪そうなんだけど!?
顔なんて真っ青だし、ガタガタ震え始めてるし。
「ミカさん、体調悪そうですよ?今日はもう早退して休まれた方がよろしいのでは?」
「い、いえ、お気遣いなく。とにかく殿下方は庭園にいらっしゃいますから、わたくしこれで失礼いたしますね!」
え、ちょ、足はっや!体調悪そうなのに、あんなダッシュして大丈夫!?
あっという間に消えたミカさんを見送って、私はとりあえずゼクト殿下とマリア様がいらっしゃると言う庭園に向かった。
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