王様宅の複雑な事情③
このどろっどろの権力争いに加わらないでいいのが、第三王子のラインガウ殿下と第四王子のグリュー殿下。
上ふたりがご健勝なもんで、よっぽどのことがない限り王位なんて関係ない。
実際シュペート様と婚約しているグリュー殿下はクーベーアー侯爵家に婿入りする予定だし、ラインガウ殿下に至ってはそもそもリーフプラウの王位継承権がない。
なんだそれって思うだろ?でも、実際そうなんだよ。
ラインガウ殿下のお母上は、マデリナ王妃じゃなくてニコーレ・アンドレアス伯爵令嬢だ。
この人は元々女官として王宮に上がっていて、エンリケ陛下に見初められたらしい。
なにが王様のお眼鏡に叶ったかっていったら、その高度なスルースキルだ。つまり、愚痴聞き係。とはいえ愛妾として抱え込んでしまった以上はひとりくらい産んどかなきゃ格好がつかないってんでこさえたのがラインガウ殿下。
こうして聞くと不憫だな。
ニコーレ様もお産で命を落としているから、当時の宮廷ではラインガウ殿下の扱いにそうとう困ったらしい。
そこにマデリナ王妃が養子として引き取ると宣言したんだとか。
当時「愛妾の子を引き取るなんて正気じゃない」とか「アンドレアス伯爵家が引き取るべきだ」とか色々言われたらしいけど、それを黙らせたのもマデリナ王妃の一言だった。
「種馬が仕事をした結果に飼い主が責任を取らずどうします」
……王妃、かっけーな。
そんなマデリナ王妃だけど、さすがにリーフプラウ王家の血を一切引いてない子に王位継承権を与えることはできず、ラインガウ殿下は継承権を持たない第三王子になった。
婿入り(予定)先だった家が汚職と人身売買で取り潰しになったんで、王子辞めて宮廷魔術師になるってウワサだけど。
「でも、私が選んであげたらラインガウだって王になれるよ」
「は?」
休み時間に王族の話が聞きたいって言うから私が知ってる範囲で話したら、ヘレンはラインガウ殿下のくだりでそう言った。
ていうか、敬称付けて。お願いだから。
さすがに休憩室まで王族が降りてくることはないけどさ、他の目も耳もいっぱいあるんだから。
焦る私のことなんて目に入ってないのか、ヘレンは自信満々に「だって」と笑った。
「あたしはヒロインだから」
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