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<アリエル様の仕業?>

大惨事が起こった日の午後。


「リピウス、無事か!」

デュークが転がり込むようにして飛び込んできた。


リピウスは熱心にテレビのニュースを見ていたが、「おう、大丈夫だぞ」と短く答えた。その姿を見て、デュークもようやく肩の力を抜いたようだ。


「良かった。お前のことだから大丈夫だとは思っていたけど、やっぱ心配だったからな」

「ああ、俺は封印が既に解除されていたからな。たいした衝撃は無かったよ」

「人間界は悲惨な状況らしいな」

「そうだな。車の運転中に意識を失った者も多いらしい。飛行機や列車なんて、もっと悲惨だろうな」


デュークが椅子に座り、ヨルダ爺から聞いた話を切り出した。

「ヨルダ爺に聞いたんだけどよ、今まで個別に封印が解除された時は、これほどの衝撃は無かったらしいぞ」

以前からポツポツと発生していた解除では、少し気分が悪くなる程度で、意識を失うほどではなかったという。


「今回は特別みたいだな。直前に大気全体が震えていたからね」

「そうなのか?」

「ああ。それで目が覚めたんだが、その直後にドーンという感じで大気圧が押し寄せてきたんだ。俺でも少しフラッときたからな」

「そうだったんだ……。でも、無事で本当に良かったよ」


「まあ、コーヒーでも飲みながら話そう」

二人はいつものテーブルへと移動した。

メイさんはそれまでパソコン画面で世界各地の情報収集をしていたようだが、リピウスに声を掛けられると、すぐに手際よくコーヒーの準備を始めた。


コーヒーを一啜りして一息つくと、リピウスが尋ねた。

「デュークは、こっちに来ていて大丈夫なのか?」

「ヨルダ爺はすぐに飛び出していったけど、おいらは特にやることもないんでな」

「ヨルダ爺は大変だろうな。……で、これから人間界はどうなっちまうんだ?」

「以前言ったじゃん。乗り切ってさらに進化するか、混沌の時代に入って滅亡するかだよ」


リピウスの言葉に、デュークは一枚のメモを差し出した。

「本当にお前の言った通りになっちまったな。これがシステムから発信されたメッセージだそうだ」

リピウスはメモに目を落とした。


「なるほどね……。もう人類は限界に来ていたし、地球自体が悲鳴を上げていたからな」

「でもよ、まさかいきなり全封印解除ってのは……」

「人類を全滅させなかっただけ、優しいかもしれないよ」

「おいおい、物騒なこと言うなよ」


「だって、『環境保全のため』って言ってるんだろ? 全滅とは言わないまでも、大部分の人間を間引いたって不思議じゃないはずだ」

「そうかもしれないけどよ。そもそも、誰がこんな仕掛けを入れたんだ?」

「そりゃ、製作者だろ」

「ってことは……アリエル様!!!」

デュークが驚愕の声を上げた。


「それしか考えられないだろう」

「いやいや、それはないって! アリエル様だぞ?」

「いいや、アリエル様だからこそだ」

リピウスはあくまで冷静に自説を述べる。

「彼は自然界を愛していたんだ。例え人間そのものに興味がなかったとしても、人間によって自然が破壊され尽くすのは耐え難かったんじゃないか? だから一定の人口を超えたら、封印なんて不自然なものは取り払って、あとは人間も含めて『自然の摂理』に任せる……。そういう設計なんじゃないかな」


「お前って、本当に時々恐ろしいことをサラッと言うよな……」

デュークは呆れたように首を振った。

「で、リピウスはこれからどうするんだ?」

「ん? どうもしないぞ。今まで通りの、引き籠もり年金暮らしだよ」

「変わりなしかよ」


「あ、一つだけ変わることがあるな」

「ん?」

「ほら。もう、自分が『能力者』だってことは、隠す必要が無くなったからな」

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