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<外出時の拠点を確保>

怪盗Zero事件から1ヶ月後、デュークと一緒にヨルダ爺も久しぶりにリピウスを訪問した。


「よう! リピウス。人間界では何か大変な事件が起きていたそうじゃないか」

開口一番、デュークが怪盗Zero事件のことを言い出した。


「おまえ、それってもう1ヶ月も前の話だぞ。既に世間では収まりつつある話題だぞ」

「そうなのか? まあ、おいら達には中々タイムリーには伝わってこないからな」


「ふむふむ……。わしには何のことやら全く分からんがの」

「まあ、今度デュークから説明してもらうと良いぞ。結構大きな事件だったからな」


と言いつつ、内心でリピウスは思っていた。

(それにしても、デュークは怪盗Zeroの事件中も何度か遊びに来ていたのに、全く何も触れてこないと思ったら、霊界ではあまり話題にもなっていなかったんだな)


「それよりさ」

そう言って、リピウスはワープドアを取り出した。


「お! また何処かへ連れて行ってくれるのか?」

デュークは以前中華街へ行ったことを思い出したようで、また何か美味しい物でも食べに行くのかと期待したようだ。


「いやね、新しい拠点を用意したんで、今日はそこを二人にお披露目したいと思ってさ」

「え! 新しい拠点?」


デュークとヨルダ爺が不思議そうな顔をしているのを尻目に、リピウスはさっさとワープドアを開けて二人を手招きしていた。


三人が続いてドアをくぐると、そこは小綺麗だが十畳程度にトイレ、風呂、キッチンが付属した部屋に出た。

中央には応接セットが置いてあり、壁際にはノートパソコンが乗った小さなデスクと椅子が一脚置いてあった。ベッドなどはなく、単なる小さな応接室的な感じの部屋であった。


「ん? 何処だ? 随分と狭い部屋だな」

デュークが怪訝そうに言う。


「ふふふ。ここは新しく俺が借りたワンルームマンションだよ」

「ほう、ワンルームマンションとな?」


「おまえ、あんな一人住まいには広すぎる一軒家に住んでいるのに、なんでこんな狭い部屋を借りたりするんだよ。意味ないじゃないか」

「いやいやいや。そんなことはないぞ。ここは俺にとっては重要な意味を持っているんだよ」


「ほうほう。しかしわしらにはちょっと分からんの~」


リピウスは首を振りながら説明する。

「ほら、今の家から外出する時って、今まで通りの老人の姿で出ないといけないじゃないか。せっかく見た目が若返ってスマートになったのだから、たまには若者っぽいお洒落な格好で外出もしたくなるだろう?」


「そう言えば、近所の目もあるから、元の爺の姿でないと出歩けないって言っていたものな」

「そうなんだよ。この間の中華街のように、人目に触れない適当な場所を探してワープするということは可能だけど、毎回それっていうのも面倒なんだよね。でもここだったら、最初から若い姿で外出も可能になるじゃないか。どうせ寝泊まりするわけではないから、狭くても構わないしね」


「なるほどのお。それでここはどの辺りになるんじゃろ?」

ヨルダ爺とデュークは窓際に行って、周囲の景色を見回している。

窓から見える景色は、質素な住宅街の一角のように見えた。近くに小さな公園もあるようだ。


「ここは池袋のちょっと外れの方に位置する住宅街だよ。結構静かで良い所だよ。駅までは歩いて10分ちょいって感じかな。池袋駅と地下鉄の東池袋駅の中間くらいの場所かな」


「へぇ~……。って、駅まで10分ちょいってのは結構遠いんじゃないのか?」

「そうでもないけどね。自宅の方は駅まで15分以上かかるからね。と言っても駅に近くもないから、その分賃料も安くなるんだよ。少し古めのマンションだしね」


「それでも、それなりの値段はするんじゃないのか?」

「まあ、月6万円程度かな」


「ふ~ん……。まあリピウスは思いのほか金持ちみたいだからな。その程度は問題ないのか」

「いやいや、俺は少ない年金で暮らす貧乏爺だぞ。持ち家があるから生活できていたんだからな」


「でも月6万も賃料を払えるんだろ?」

「うん。まあその辺は霊力のおかげでね」

「ほう、どういうことじゃ」


リピウスはディメンションボックスから革袋を取り出して、テーブルに置いた。

「なんだよ、それ」


デュークが不思議そうに覗き込むと、リピウスは袋から中身をテーブルの上に取り出した。

それはサラサラと黄金に輝く砂――砂金であった。


「それって、砂金ってのじゃないのか?」

「うん、そうだよ」


「ほうほう、砂金とはいったいいかがしたんじゃ?」

ヨルダ爺も珍しそうに覗き込んできた。


「これは山に行って、川の中から採って来たんだよ」

「山の川から?」

デュークが不思議そうな顔をして聞いてきた。


「ああ。日本は昔『黄金の国』と呼ばれたくらいだからね。今でも金の鉱脈近くの川などでは砂金が採れるのだよ。あ! もちろん色々権利などは事前に確認してから行っているけどね」


「ふ~ん……。でも、そんなに簡単に取れるのか?」

デュークが聞く。


「俺には能力があるからね。霊力ドローンを飛ばしながら金の探知を行うんだよ。そして多くありそうな場所を見つけたら、川砂から一気に物質操作の分類で砂金だけ集めてしまうんだ。100g程度なら簡単に採れるよ」

リピウスはドヤ顔で説明する。


「なるほどのお。物質操作をそのような用途で使うとはな……。やはりリピウスは面白いことを考えるものじゃな」


「なんだかさ……。分かるんだけど……やっぱズルいよな……」

デュークは納得いかないようだ。


「まあ、俺もそれほどお金が必要なわけではないからさ。半年に一回程度行けば十分だけどね。これは、あくまでリピウスとしての活動資金程度ってことだよ」


そう言いながら、リピウスは内心でホッとしていた。

(よしよし。これで資金源に関して怪しまれることもないだろう……)


「まあ何にしても、リピウスも少し活動的な気分になって来たというのは悪いことではないじゃろう。せっかく若返ったのじゃからな。昔に戻った気分で色々と出かけるのも良いじゃろうて」


「あはは。でも俺って若い頃から出不精で、できるだけ家に引き籠っていたけどな」

「なんだよ。それじゃ新しい拠点を作っても意味ないじゃないかよ」

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