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<さて、どうしたものか?>

鷲見議員の狼狽ろうばいぶりを見ていて、リピウスは少し気の毒になってしまった。

「こいつって天然だけど、ある意味純粋で良い奴ではあるのだよな。どこかネジが一つ抜けているようではあるが……」


そこで、とりあえず彼を陥れようとしている背景を、もっと詳しく調べてみることにした。

すると、これは意外なほどあっさりと全てが見えてきてしまった。


「おいおいおい! おまえら本当にザルだな……。こうまで簡単に情報が得られてしまうと、こっちも張り合いが無くなってしまうぞ」

リピウスは呟きながら、集めた情報をメイさんと共に精査していた。


ざっと整理すると、事の発端は連立与党の森田議員が、政治資金を不正使用しているという噂があり、鷲見議員がそれを内部調査しているという事であった。


ところが調べていくと、不正資金の大元は国交省大臣の方であり、森田議員はその手先として動いているに過ぎないようだった。その関連で大臣が動き、鷲見議員に調査を断念させるために不倫疑惑を捏造して、圧力を掛けようとしているらしい。


ところが、さらに「なぜ鷲見議員がこの不正資金疑惑の調査を行っているのか?」というと、それを指示した大元は、現総理大臣の奥田総理であった。


奥田総理は民自党内の裏金問題で、野党の追及に辟易へきえきしている所に、連立与党からも突き上げがあって、それを黙らせたいという思惑が絡んでいたようだ。そこで手駒の岩城議員を通じて、若手の鷲見議員を矢面に立たせた……という経緯があったのだった。


「全くなんだよ、これは……。本当に面倒臭い連中だな。だから政治家ってのは嫌いなんだよ」

ブツブツ言いながら、リピウスの人間嫌いも加速していくようであった。


そんな時に、デュークとヨルダ爺が訪ねてきた。


「ようリピウス、暇か?」

いつものようにデュークは馴れ馴れしく話しかけてくる。

(暇なわけ……なくも無いな……)

などとリピウスは思いながら、社宅の一室で二人をもてなす事にした。


彼らが席に着くと、メイさんがすかさずコーヒーとお茶菓子を出して振る舞う。そしてコーヒーを飲みながら、雑談に花を咲かせるのである。


「そうそう。メイさんの義体じゃが、すまんがまだまだだいぶ修理には時間がかかりそうじゃわい。なにせ名品とは言え旧型じゃからな。部品も不足しておるようじゃわい」

ヨルダ爺はすまなそうに報告した。


「うん。別に良いよ。もう二度とメイには危険な真似はさせないつもりだしね」

リピウスが答えながらメイさんの方を向くと、横に控えていたメイさんが、心なしか嬉しそうな表情に見えた。


「ところでさ、今日はおまえら何を調べているんだ?」

デュークがお菓子を口に入れながら聞いてきた。


「ああ、これね。ほら、デュークは覚えていないかな? 以前選挙をやっている時に、自宅のテレビを一緒に見たことがあっただろ」

リピウスの問いに、デュークはしばし考えていたが、

「お! あれな。うん、覚えているぞ。なんか見た目は良いのに、言ってることが変な奴が出ていたあれだよな」

彼もしっかり覚えていたようだ。


「そう。鷲見純二朗っていう議員なんだけどな」


「ほう、リピウスが政治家に興味を持つとは意外じゃな」

ヨルダ爺が不思議そうにリピウスを見つめた。


「違うんだよヨルダ爺。こいつは政治家として興味を持ったのでは無く、ある意味面白いコメディアンみたいな感覚で興味を持ったのだと思うぞ」

デュークは笑いながらヨルダ爺に説明しだした。


「ほう! なんともユニークな政治家じゃのう。そういう者達ばかりなら、政治の世界も悪いものでは無くなりそうじゃわい」

そう言って、ヨルダ爺も大笑いしだした。


「で、その鷲見って議員がどうしたんだよ?」


デュークの問いにリピウスは答えた。

「うん。どうも彼を不倫疑惑で陥れようとしている連中がいるみたいでね……」


リピウスは先日の池袋の喫茶店から、鷲見の事務所での騒動に関して、簡単にヨルダ爺らに説明した。

「という訳でな……。その後も調べていたら、ちょいと面倒な背景も浮かんできたから、どうしようかって考えていたんだよ」


「なるほどのう。やはり政治の世界は、なんともドロドロとした薄汚い世界じゃな」

ヨルダ爺の顔から笑顔が消えた。

ヨルダ爺にしても、霊界や天界における政治騒動には、散々嫌な思いをさせられてきている。だから今は隠居して、できるだけ権力闘争にも関与しないようにしているのだった。

とはいえ、やはり閻魔や学園長の為には、それなりには動かざるを得ないのも実情ではあったが。


「ふ~ん……。でもよ、そこまで黒幕とか絡繰りも分かっているのだったら、お前なら簡単に鷲見って奴を救えるんじゃないのか?」

デュークも、鷲見が良い奴そうなので救って欲しいと思っているようだ。


「そうだね……。救うには救うのだけど、どうすれば一番良いか、ちょいと思案どころと思ってね」


「ふむ……。確かに下手な事をすると、かえって鷲見という者にも迷惑が掛かるかもしれんな」

流石に政治的な駆け引きを経験してきているヨルダ爺には、リピウスの悩みも分かるようであった。


「そうなんだよ。どのタイミングで、何処までやるか? それ次第では、後々禍根を残しかねないからね」


そう言うと、リピウスもまた深く考え込んでしまった。

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