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<悪魔達の陰謀>

ここはダーズリー卿たちの本拠地になっている地下の洞窟内。彼らがいつも集まっている広場よりも、さらに下層にある大広間という感じの空間である。

そこには醜悪な姿をした下級悪魔たちが集まっている。そこにティモラが2体の中級悪魔を伴って入ってきた。


「全員整列!」

中級悪魔の一人が声をかけると、それまでバラバラでウロウロしていた下級悪魔たちは、機敏な動きでティモラの前へ集合すると2列に整列した。


その様子を見てティモラが声をかけた。

「なかなか良い動きになってきたではないか」

その言葉に、両脇に控えている中級悪魔二人は「はっ! 有難きお言葉、励みになります」と緊張した面持ちで応えた。


「それでは、少し模擬戦も見学させてもらうかな」

そう言うとティモラは、用意されていた椅子席へと移動した。


2体の中級悪魔が手を挙げると、2列に整列していた下級悪魔がサッと二手に分かれて走り、それぞれが広間の両サイドに分かれて1列に並んだ。

その後、中級悪魔の指示を受けながら、様々な陣形を形成したり、中央でぶつかり合って模擬戦を繰り広げたりして見せていた。


一通りの訓練らしきものが終わると、再び中級悪魔の掛け声で、また最初の集合時のように綺麗に2列に並んで控えている。


「うむ。良くここまで訓練したな。現在何チームの準備が整っている?」

ティモラの言葉に、右側に控えた中級悪魔が答える。

「はい。現時点で既に32チームの訓練が終了しています」


その答えに満足そうに頷くとティモラは、

「そうか……まだ十分とは言えないが、何チームかは実戦テストも行うので、そのつもりでいろ。何チーム選ぶかは追って連絡するが、それまでに優先順位等は検討しておけ。それと最終的には100チームは必要になるからな。これからも急いで準備を進めるのだ。良いな!」


その言葉に両脇で控えていた中級悪魔が「ハッ!」と言って頭を下げると、前で並んでいた悪魔たちもすぐさま全員が一斉に頭を下げて答えた。

その様子を確認すると、ティモラは広間を一人離れて、上層にあるいつもの広間へと移動していった。


広間に入ると、ガードナーが大声をあげて不満げに叫んでいた。

「よう! もういい加減あのリピウスって小僧を潰さないか?」

ガードナーはリピウスの存在が鬱陶しく感じており、サッサと潰したいと言い張る。


「潰すと言ってもねぇ。まさか我々で社宅を襲う訳にもいかないだろうよ」

ソルダーが(またガードナーが吠え始めた)と思いながら、うんざりした顔で呟いた。


「私が思うに、『将を射んと欲すれば先ず馬を射よ』だと思いますな」


「なんだよ。またデミトリの屁理屈が始まったのか?」

ガードナーはデミトリを睨みつけた。


「屁理屈ではありません。格言ですよ」

デミトリは肩を竦めながら(おー、怖い怖い)と内心思いながら答える。


「デミトリの言には聞くべきものがある」

ガードナーはさらに何かを言いかけたが、このダーズリー卿の言葉に、その場の者たちが静まった。


「確かに。リピウスを直接狙うより、彼に近しい者をターゲットにし、奴をおびき寄せるのが良いでしょうね」

今戻ってきた悪魔軍参謀長を務めるティモラも支持をした。


「流石はティモラ、分かっていますね」

デミトリがほくそ笑んでいる。


「具体的には誰をターゲットにするんだ?」

脳筋なガードナーには、まだ良く分かっていないようだ。


「それは日本の協力者で、特犯で活動している舞という女ですよ」

デミトリが桂木舞の名を挙げた。


「なるほどな。その女なら悪魔が出れば、必ず現場にやってくるな」

ソルダーも相槌を打って答える。


ティモラの方をダーズリー卿は向き、質問した。

「どうだ戦闘チームの訓練状況は?」


「はい。今も確認してきましたが、だいぶ統制の取れた動きができるようになっています。リーダーに確認したところ、既に32チームは実戦に投入可能な状態です。できれば、そろそろ実戦に取り組ませる頃合いかと思います」


「ほう。そこまで進んだか……。では、デミトリに何チームかを率いてもらっても良いな」

ダーズリー卿の言葉に、デミトリが即座に反応した。

「おう! それはありがたい事です。では、それを前提に作戦を組み立てたいと思います」


そこでティモラが待ったをかけた。

「少々お待ちください。悪魔チームだけではリピウスの相手にはならないと愚考しますが」


「確かにそうですね。リピウスはカテリナともやり合ったようですしね。下士官クラスの悪魔では歯が立ちませんね」

デミトリはティモラの指摘に考え込んでしまった。


するとガードナーが一歩前に出て、

「だったら俺様がリピウスを仕留めてやろう。あいつとは少々因縁もあるからな」

言いながら、ガードナーは唇を舐めながらニヤッと笑った。


それを見てダーズリー卿が軽く頷くと、それまで沈黙していた御剣君が突然割り込んできた。


「ダーズリー卿様、お願いがあります」


「どうした? 御剣」

ダーズリー卿は御剣君を息子のように可愛がっていた。定かではないが、生前ダーズリー卿には男女一人ずつ子供がいたと言われている。そのため中国で加わった凛玲を娘とし、御剣君を息子として見なしているのではないかと噂されていた。


「ダーズリー卿様、デミトリの作戦は日本で行われるのですよね?」

「うむ。そうなるであろうな」


「であれば、是非私にも協力させてください。リピウスは私にとっては宿敵とも言える相手です。以前は不覚を取りましたが、今ならリピウスを必ず私の手で葬ってやります」

力強く御剣君が訴えた。普段は控えめで大人しい彼が、これほど激しい感情をむき出しにして訴えてきた事は、初めて出会った。


「おいおい御剣、リピウスは俺が最初に目を付けていたんだぜ。こいつだけは譲れねぇよ」

ガードナーが凄みながら御剣君を睨みつけた。

しかし、いつもはややオドオドしている御剣君なのに、今回に限っては一歩も引く姿勢を見せなかった。


「ふむ……ティモラ、どう思う?」

ダーズリー卿は判断をティモラに投げた。


「そうですね……ガードナーにはまだ軍団強化を優先してもらわないと困りますしね。できれば当面は控えてほしいですね」


「なんだよ! 別に少しくらい暴れてきたって良いだろうが……」

ガードナーは大いに不満げであった。だが、ティモラもそこは譲ろうとしない。


「あら駄目よ。ただでさえ計画には遅れが出ているのよ。リピウス討伐も大事だけど、それ以上に今は来る大戦の準備が絶対条件だわ」

ティモラはさらにきつい目をしてガードナーを睨みつけた。流石のガードナーも苦手なティモラをこれ以上怒らせたくはなかったので、すごすごと引き下がった。


そのやり取りを聞いてダーズリー卿は頷くと、次にデミトリに目を向けた。

「どうだデミトリ?」


「ハッ! 私の作戦指示に従ってもらえるのであれば、御剣の戦力は実に頼もしいものがあると思います。ただ、感情に任せてリピウスとの1対1を望む等、私の指示に従えないなら残念ですが……」


デミトリの返事を聞き、最後にダーズリー卿は御剣君へと顔を向け、念を押すように言う。

「という事だ。どうだ? デミトリの指示には必ず従うと約束できるかな?」


「はい。ご指示通りに行動すると約束します」

そう言うと、その場に膝まずき、頭を垂れて誓った。


それに大きく頷くと、ダーズリー卿は全員の顔を見回して言った。

「では、この件はデミトリに任せてみる事で良いな。後はティモラと相談して進めるが良い」


その言葉を合図にこの場はお開きとなり、すぐにデミトリとティモラと御剣君は連れ立って別室の方へと歩いていった。

残った者たちも、それぞれに動き出していった。

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