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完結 吾輩は捨て子猫である ~動画投稿でご主人を救う恩返しにゃん物語~  作者: カトラス


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第26話:もち、ミステリーゾーン「冷蔵庫裏」に潜入する

吾輩は猫である。名はもち。

 好奇心の塊であり、家の隅々にまで“吾輩チェック”を怠らぬ優秀な探偵でもある。


 そんな吾輩が、ずっと気になっていた場所がある。


 それは、キッチンの奥――

 ご主人様・みのり曰く「入っちゃダメ!ダメってば!」と声を張り上げる、“ミステリーゾーン”こと……冷蔵庫の裏である。



 その日も、吾輩は暇だった。


 午前中はカーテン越しに日光浴。昼は窓辺で鳩の観察。夕方はこたつ布団でぐっすり昼寝。そして夜――


「にゃーう(さて、今日はどこを探検するかのう……)」


 ふと、冷蔵庫の前を通る。ご主人様がそこから牛乳を出し、トントントンと音を立てて野菜を刻んでいる。


 吾輩はさりげなく背後から近づき、冷蔵庫の側面をじっ……


「ふむ……この奥に……何かあるな……?」


 隙間がある。小さな、でも確実に猫一匹分くらいの隙間だ。


「にゃっ(ちょっとだけ……見るだけ……)」


 吾輩はスッと前足を突っ込み、ぬるりと体を滑らせるように冷蔵庫と壁の間へ潜入開始。


 その瞬間――


「!? もち!? ちょっ、どこ行ったの!? ちょっと!? やめてぇぇぇ!」


 みのりの叫びを背に、吾輩は狭き道をくぐり抜けた。ここは人間には到達できぬ、聖域である!



【エリア:冷蔵庫裏】


──暗い。

──狭い。

──そして、あったかい。ちょっとホコリくさい。


「ここが……伝説の“裏”……!」


 吾輩は四つん這いで奥を探る。コンセントのコードが絡まり、黒い板(放熱板というらしい)が、ほんのり温かく壁沿いに立っている。


「むむ、この匂い……これは数年前に転がった煮干しの残骸では……?」


 鼻をヒクヒクと動かす吾輩。

 謎のホコリの塊や、封印されしペットボトルキャップ、誰かが落とした輪ゴムなど……まるで時を超えた遺跡のような光景!


「こ、これは“旧文明の遺産”……!」


 吾輩の探究心は最高潮に達する。しっぽをピンと立て、奥へ奥へと進んでいく。


 そこに――


「もちーーーーー!! ちょっと! 出てきてー! そんなところ入っちゃだめーーー!!」


 地鳴りのような叫び声。

 揺れる冷蔵庫。

 飛び交うホコリ。


「うぉぉ……! 揺れる! 揺れるぞ!! 地殻変動か!!?」


 ご主人様の必死の呼びかけが頭上から聞こえてくる。


「出てこないと今日のちゅ~るなしだよ!? ごはんも抜き! もう怒った!!」


「にゃあああああああ!(それはダメである!!!)」


 ピクリ。


 その一言で我に返る吾輩。危険地帯へのロマン探検も、食の誘惑には抗えぬ。


 吾輩はくるっと身を翻し、ぬるぬると方向転換。だが――


「うぐっ……うご、動けぬ……?」


 しっぽが引っかかる。肉球がコードに絡まる。ああ、出入りは慎重にと“先人の知恵”で読んだばかりなのに!


「もぉ~~~ちぃ~~~~~~~!!!!」


 どん!


 揺れる冷蔵庫。


 どすん!


 頭をぶつける吾輩。


「にゃふっ……いたっ……!」


 と、そのとき――ご主人様の手が伸びてきた!


「そこかーっ!! いたーっ!!! まって、助けるから! ほら、おいで! ちゅ~る! ちゅ~るだよ~~~~!!」


「にゃっ!(ちゅ~るぅ!!)」


 ちゅ~るの魔力は絶大だった。

 吾輩は最後の力を振り絞り、コンセントコードを飛び越え、ついに――脱出成功!



「はああああああああああ……もぉぉぉぉぉぉぉ……ほんと心臓に悪い……」


 みのりは汗だくで座り込む。髪は乱れ、エプロンもズレていた。

 だがその膝に抱かれ、頭をなでられる吾輩は、まるで“大冒険を終えた英雄”のようであった。


「もう、ほんと心配したんだからね……何があるかわからないんだから……」


「にゃあ……(それがロマンである……)」


 ぺろっとみのりの手を舐めると、彼女は苦笑いを浮かべた。


「まったく……でも、無事でよかったよ……もち、探検おつかれさま」


「ふにゃ……(うむ、またいずれ潜入する……)」



 その夜、吾輩はこたつの中でうとうとしながら思った。


 冷蔵庫裏――そこは確かに危険で、ホコリまみれで、ちょっと臭かった。

 でも、誰にも知られていない秘密の通路には、確かに“猫だけの世界”が広がっていた。


 そして、そんな世界から戻ってくるたび、ご主人様の腕の中が、いちばん安心できる場所になるのだ。


「ふにゃ……やはり吾輩は、この家の冒険者である……家族にして、探検家なり……」


 次回、第27話:もち、謎の音の正体を追う に続く。




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