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完結 吾輩は捨て子猫である ~動画投稿でご主人を救う恩返しにゃん物語~  作者: カトラス


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第14話:もち、謎の寝相進化

 昼下がり――。


 ぽかぽかと陽の射す、古びたアパートの窓際。柔らかな陽だまりの中、吾輩はぐでーっと横たわっていた。頭をクッションに埋め、足をピンと投げ出し、しっぽを「く」の字に丸める。実に完成されたリラックスフォームである。


「ふにゃ……これぞ、猫の極意……」


 猫の仕事とは寝ることである。寝て、起きて、食って、撫でられて、また寝る。そうして世界の平和を維持する存在、それが吾輩という猫なのだ。


――と、そこへご主人様の声が響いた。


「もっち~~~~!なにその寝相っっ!!ちょっ、ちょっと待って、スマホ、スマホォォ!」


「……またか。お主というやつは……」


 ご主人、もとい社畜OLみのりは、今日も今日とてSNS投稿に余念がない。吾輩の寝相が“珍妙”であればあるほど、彼女のテンションは爆上がりする。


 ちなみに今の寝相は、頭がソファの背もたれにめり込み、胴体が捻れ、後ろ足だけがピンと真上に伸びているという、いわゆる「曲芸師スタイル」。


「うひゃあ……何その足!どうなってんの!?関節どこいったの!?」


「どこにも行っておらぬ。吾輩は常にここにいる」


 写真がパシャパシャと撮られるたびに、ご主人は「うっわ、腹毛の渦がやばい…!」「足の角度90度超えてるじゃん!」と大騒ぎである。静かに眠るという猫の尊厳、完全に無視である。


 だが、ここ最近――吾輩も思っていたのだ。


「……我ながら、寝相が……進化しておる……?」


 目覚めた時に、自分の顔の上に自分の後ろ足があったり、尻尾を口にくわえていたり、壁に前足をピンと立てて“猫壁ドン”していたり。不可解な寝相が、日々記録されていく。


 ご主人はその記録を「もちの寝相進化アルバム」と称し、フォルダ分けまでしていた。中には「もはやUMA(未確認動物)」や「ねじれ寿司」なる謎タグもある。


 ある晩など、寝ている吾輩の体がアルファベットの“Q”の形になっていた。


「Qって!Qって何!?もっち、寝ながらメッセージ送ってんの!?」


「……それはおそらく“Quiet please”のQである。寝かせろという意志表示だ」


 そして今日、吾輩は新たなステージへと突入した。


 それは夜中のこと――。


 ご主人が風呂から上がり、髪を拭きながら居間に戻ってくると、ふと足を止めた。


「もっち……どこ……あれ……」


 照明を落とした部屋の片隅。家具の隙間に、うっすらと白く光る物体。毛玉のような、だが確実に“もち成分”を感じる何か。


「………………え、あれ、逆じゃない……?」


 そこにいた吾輩は、完全に上下が逆転していた。頭を床にベタ付けにし、両前足を天に突き上げ、下半身がソファの肘掛けに乗りかかっている。


「ぴゃははははははは!!なにこれ!!死んでない!?生きてる!?寝てるのこれ!?」


「にゃむ……ぅ……」


 目は開けぬまま、小さく返事をする吾輩。その姿に、ご主人はスマホを落としかけた。


「もっち……あんた本当に……猫なの……?時空を超えてきた何かじゃないの……?」


 翌朝。起きた吾輩は、自分がどうやってあのポーズになったのか全く覚えていなかった。ただ、ご主人が何度もその寝姿を動画で再生して「腹筋痛い」と笑っていたのだけは、しっかり記憶に残っている。


「……寝相進化、恐るべし。吾輩は……どこへ向かっているのだ……?」


 とはいえ、否定はできぬ。


 もはや、ただ寝るだけでは満足できぬ体になってしまった吾輩。今日も新たなる未知のポーズを求めて、日差しのもと、ぐねっと捻れながら眠りに落ちていく――。


「次こそ“Z”の形を目指すのだ……」


 その寝相が、また世界をざわつかせるとは知らずに。

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