第10話:吾輩、トイレの外でうっかりする。
【みのり視点】
「ただいまー……」
今日も社畜街道まっしぐら、満員電車ですし詰めにされ、パソコンに向かって魂をすり減らし、やっとの思いで帰宅した私を迎えたのは――
「………………」
「もち、ただいまー?」
「………………」
妙な静けさ。いやな予感しかしない。
部屋の奥へと足を踏み入れたその瞬間――
「…………えっ?」
私の足元に、もわっとした猫砂。
しかも、そこそこな量が――
トイレの外に盛大にぶちまけられている。
「もーーーちーーーーっっっ!!!」
その叫びに反応して、カーテンの裏からぴょこっと顔を出す白黒の影。
「……にゃ?」
悪びれる様子もなく、むしろどこか誇らしげな顔をしている。
なんで!?何が!?どこに着地したらそうなるの!?
うちの猫トイレ、フード付きだよ!?
やられた……完全にやられた……。
トイレの外に、猫砂+うっかりな中身。
仕事の疲れがMAXの状態に、これはメンタルを直撃する破壊力だ。
【もち視点】
吾輩、今日も絶好調にゃ。
ご主人様が出て行ってからというもの、吾輩は昼寝・おやつ・毛づくろい・トイレ・また昼寝という完璧なローテーションをこなしていたにゃ。
ただ――
「にゃぁ……(むむっ?)」
トイレの砂が、変わっていたにゃ。
以前までのふんわり砂ではなく、謎の粒々、におい強め、固まりにくそうなヤツにゃ!
吾輩、それが気に食わなかったにゃ。
にゃので――
トイレの前でちょっと足を滑らせて、前足で砂を大外にガシガシガシッ!!
それでも収まらず、途中でちょっと中身も一緒に転がってしまったのにゃ。
「にゃんと……これは……事故にゃ……」
吾輩、深く反省したにゃ。
……が、カーテンの裏に逃げてちょっと顔だけ出しておけば、なんとかなるにゃ。
たいていの場合、ご主人様は「はぁー……もー……!」と言って結局許してくれるからにゃ!
【みのり視点】
「はぁー……もー……!」
予想通りのリアクションを自分でしながら、私はせっせとお掃除セットを取り出す。
怒りたいけど、怒りきれない。
だって――
あの顔だよ!?
あの、ふわふわもふもふの顔で「にゃ」って首をかしげるあの顔!
「……はー、もう、もちが元気で生きててくれるだけでいいわ……」
ブツブツ言いながら掃除をしていると、横からそーっと近づいてくる白黒もふ玉。
「……にゃあ」
「え、なに?まさか謝ってるの?」
「……にゃ」
「いや今の、絶対『またやる』の顔じゃん……!」
でもなんだか、笑えてしまう。
こんなドタバタな日常も、悪くない。
猫と暮らすって、こういうことなのかもしれない。
「次はちゃんと、砂選び気をつけるね……」
そう言うと、もちがすりすりと足元に体を寄せてきた。
お詫びのつもり?それともただの甘え?
どっちでも、いい。
きっと私は今日も、もちに振り回されながら癒されていくんだ。
【もち視点】
吾輩、ちょっと失敗したにゃ。
でも、ご主人様が笑ってくれたから、今日の勝負も吾輩の勝ちにゃ!
トイレの砂は、あれじゃダメにゃ。次はふわふわのやつ希望にゃ。
それまで、しばらく静かに様子を見るにゃ――
が、次の“うっかり”はもうすでに、計画の中にあるのにゃ!
にゃふふふふふ……吾輩、まだまだ爪を隠したる猫なのにゃ。
吾輩、ちょっと失敗したにゃ。
でも、ご主人様が笑ってくれたから、今日の勝負も吾輩の勝ちにゃ!
トイレの砂は、あれじゃダメにゃ。次はふわふわのやつ希望にゃ。
それまで、しばらく静かに様子を見るにゃ――
が、次の“うっかり”はもうすでに、計画の中にあるのにゃ!
にゃふふふふふ……吾輩、まだまだ爪を隠したる猫なのにゃ。




