閑話~クレイ・ローゼンハイムの1日(ご令嬢編)
フェアライン大陸 ローゼンハイム家
9:00
早い帰宅のせいで、我が家のガキ達の相手をさせられる。
今やヨチヨチ歩きで動き回るので、母上と2人の乳母、メイド達が慌てていた。
おいこらっ!私のは出ねえから胸を触るな!
11:00
我が家のガキ達を相手にしてクタクタなのだが
母上による、女の子補正という名目の拷問が始まる。
あぁ…くそっ…こんなことになるなら騎士団に行けば良かった!
なぁ~にが「ですわ」「ですの」「ごきげんよう」だよ全く…男に戻ったときに癖になるだろ。
12:00
向こうで食事したので、食わなかった。
13:00
母上に無理やり着せ替えさせられ…いつ買ったのか分からないオートクチュールの黒基調のドレスを着せられ…飾られ…ご令嬢の様になった。
姿見でまた見惚れちまった…。
くそっ…なんか複雑な気分だ。
14:00
母上に強引に馬車に乗せられたと思ったら…ファイアライゼン公爵家の庭園に連れていかれた。
どうやら、お茶会に連行された。
マジかー…
実質、私の社交会デビューだ。
「ご…ごきげんよう…」
ひきつった顔でご挨拶を行う。
エカテリーナ夫人とは…時空の魔女以来会っていなかったが、恐ろしい事に若返っていた。
一瞬…フィリア嬢かと思ったぞ…
マジでそっくりだから驚いたな。
と思ったが…私自身も母上そっくりだったな。
…お前が言うなってか?
エカテリーナ夫人も夫人で、びっくりした顔して私の顔を見ていた。
「学生時代の頃のメーヴィスがいるのかと思ったわ!?」
「あら!嬉しい事言ってくれるわねエカテリーナ、あなたも昔みたいに綺麗よ?」
ご夫人2人できゃっきゃと楽しそうにはしゃいでいるのを見てため息をつく。
本当に…見た目は婚約適齢の女性2人に見える。
実際はどちらも'ご夫人'が付くんだけどな。
「えぇ…クレイ様なの!?…あなたが!?」
同い年の腐れ縁、フィリア嬢にも会った。
あぁ…全く、一番見られたくなかった相手にお披露目させられるなんて…
くっころだ!
フィリア嬢の質問に適当に返事をして誤魔化す。
「あらまぁ…ぶっきらぼうなクレイ様がこんなにも可愛くなっちゃって…」
「あぁ…残念ながら!」
「そうかしら?私はいいと思いますわ!そうだっ!アイリスちゃんとクレイ様、私の3人でお買い物でもどうかしら?私とアイリスちゃんであなたに似合うお洒落なドレスでも買いに行かないかしら?きっと楽しいわよっ!クレイ様も女の子の楽しさを理解できると思いますもの!これだけかわいいのですから、着飾らないと損ですもの!あぁ…そうだわ!いつも同じ服を着ているオリヴィエ様にも新しいお洋服を買ってあげなきゃ!では4人でお買い物でも行きましょう!ね?」
ハイテンションになったフィリア嬢を相手する事は不可能に近い。
お喋り好きのエカテリーナ夫人の血を色濃く継いでるせいか、夢中になると矢継ぎ早に言葉がたくさん出てくる出てくる。
そうなったら、フィリア嬢が納得するまでどうにもならないんだ。
「やだ…私ったらまたこんなにお喋りしてしまって」
「我に返るってやつか」
肩を掬って呆れるような仕草を見せた。
今は茶会なので、大人しく話をしているが…プライベートでフィリア嬢と会うともっと砕けた話し方をする。
「なんて言うのかしら…今のクレイ様…王子様みたいな女の子ですわね…ご令嬢から好かれそうですわ」
「はぁ!?…女になってからモテても困るんだが!」
久しぶりに会ったフィリア嬢と2人で会話していると、他にも招待されたご令嬢達が挨拶にやってくる。
実質、長女の扱い(なのか?)なので自己紹介すると
「クレイ様は殿方だったはず…?」
という疑問がご令嬢達は思った。
私は懇切丁寧に、置かれた状況を詳しく説明した。
「まぁ…!なんて残酷な出来事なのかしら…!クレイ様、もしお悩みがありましたらお気軽にご相談くださいませ」
各ご令嬢様達からは励ましの言葉を貰ったが…大嘘だ。
良家に嫁ぎたいご令嬢達にとって、私は最悪なライバルだろうな。
自分で言うのもなんだが…前まで優良な子息だったのが次に会ったら超絶ライバルご令嬢になってるんだからな。
ひしひしと伝わる様子見の状況。
これが社交界サバイバルか…!
16:00
社交界サバイバル実戦を体験した後…
馬車の中で力尽きて真っ白になった私に、母上は容赦なくダメだった所をお説教される。
17:00
本当の意味で解放された自由を大いに楽しむ。
我が家の部屋で適当な小説を片手に、フェルクリス相手にチェスをした。
あっ! くそっ…お前またそんな姑息な手を使うのかっ!
19:00
疲れたので、ベッドで横になりながら小説を読んでいたら眠ってしまったようだ。
…慣れないことはやるべきじゃねえな。
本当に勘弁してほしいぜ…
20:00
父上、兄上…アイリスが帰ってきたので夜の夕食。
今日は思いっきり食べるぞ!
あの聖女のご草食セットとたいしてつまめなかった茶会のお菓子のせいで腹が減ってぶっ倒れそうだからな
容赦なくパンを鷲掴みしようと手を伸ばすと…母上にギロッと睨まれる。
うっ…
私は大人しく、トングを使ってパンを皿に移した。
今日は母上が私にご褒美をくれたのか、なかなかに豪華な食事だった。
あ…味がちゃんとしてるぞ!
私はバクバク食べた。
「クレイお姉さま…分かります…分かりますよ、その気持ちが!」
諸悪の根源が同調しているのを無視して食べ続けた。
21:00
母上に言いつけられたと、サラ達メイド隊が容赦なく湯浴みとマッサージを施される。
く…屈辱だ…。
メイド隊は気合い万全に体の隅々までエステやらなんやらやってくれた。
22:00
もう倒れる様にベッドに突っ伏して爆睡した。
もう勘弁してくれ…もう社交界は嫌だ…




