第二話 拉致
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「ミャアアアアアアアァァァァァァ」
現在、謎の空間を通り抜けております。…自由落下で。これ死ぬのでは…?
ヒュオオオオオオオ…
すげえ、尻尾で風を切ってる…!私、風になってる!
ふざけてる場合じゃない、真面目に考えよう。前方に微かな光を発見。これは何ぞ?…出口か。そうだ出口だ。そうだよ!入ってきたんだもん、出る所が無い訳ないやん!
…え?出た後どうするのかって?知らねー。
多分私がここを出た先にある結末は生きるか死ぬか。英語でデッドオアアライブ。英語でいう意味は特にない。
光がどんどん大きくなってくる。これは―――
「ビャアアアアアアアアアア…」
とか考える前に空気抵抗で顔取れそう。ぐあああああ…
光は更に大きくなり―――
ぽいっ。
と私はその穴から放り出された。うおー、最後は優しかった。顔以外どこも痛くない。すげー…顔の痛みさえなければ結構楽しかったな。
たどり着いたのは、広い部屋。豪華な調度に高い天井、金や赤で絢爛に飾られた、なんというか中世の貴族みたいな部屋だ。
「ミャァ…」
ふ、ふーん…結構良いとこじゃん。前世はこれぐらいの所に住んでたし。…私の友達が。
…そして今、私には直面しなければならない事実がある。なんか目線高いよなーとか。なんか胴に違和感があるよなーとか。
恐る恐る、私は後ろを振り向いた。すると―――
「お昼寝、しよ?」
にっこりと笑う彼女。日本在住のヲタの者共はこの笑顔に対しこう感じるだろう―――「守りたい」と。だが私は逃げたい。普通に逃げたい。森でのスローライフを返してッ!!!
「ミャ〝ウ〝ッ!!!」
「かわいいね」
あ、私の渾身の咆哮、「かわいいね」でいなされた。私の負けか…
つーか可愛いんじゃボケナス。そんな笑顔向けられて、堕ちない人間いるかね。私猫なんですけどね。
私の体はしっかりと抱えられたまま、少女はドアへ向かい、ドアの外に看板を引っ掛けた。
『就寝中につき入室を禁ずる
緊急時はノックをして下さい
以上を破った者には極刑です
魔王より』
丸っこいフォント、かつ日本語でそう書いてあった。あははー魔王だってウケる。
…え、いよいよ私死ぬのかな。生贄のために熟成させてるとか?
そして魔王であろう少女はそのままベッドへ向かって…ベッドイン。勿論私を抱えたまま。
「ミャ〝アッ…ミャ?」
おい私を何だと思ってるんだ?まあ何か全然痛くなかったし寧ろ後頭部にふにっとしたモノが当たって役得みたいな所はありますしうわなんかいい匂いしてきたくんかくんかすーはーすーはーふぉおおおおおビクンビクン…おっと失礼wwwこれは粗相をwww
美少女に抱かれつつ寝るという行為により私の封印していた部分が出てきてしまった、危ない危ない。
…あれ、マジで眠くなってきた。くそっ、私の命運を握っている相手の前で寝るなんて…ホント、良くないよね…でもなんか…すっげー…気持ち良い…
――――――――――
パチッと私は目を開けた。うーむ、寝つきがとても良い。よく考えたら私、この姿になってから一回も寝てないよう…な…
「…あれー?か、身体が」
元に…戻っている…な、何で…
「え、それはマジでヤバいって」
魔王が私を連れてきた理由は何だ?猫だからだ。もしも私が猫ではなく人間だとばれたら…!?
その時である。
「んん…ロア…ちゃんと寝てなきゃ…駄目…ん?」
「あっ」
「えっ」
バチコーン★目が合っちゃいましたぁ♪
…来世にご期待ください…
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なんか伸びてたので書く
戒めってのはこういう事やで()