普通に起きたよね、どうしよう
あー、おはようございます。昨日、わたしの脳内でつっこみをくれた人たち。
先に、現状をお話しましょう。ええ、まだ私です。現実には戻れていません。夢の中です。夢の中で寝ても、戻れなかったよ。なんなら、普通に起きたよ。
というのもですね、なんで日付が変わっているかと言いますとね、あの後ベッドに戻った私は起こされたんです、屋敷のメイドたちに。
うん、二度寝なんてできなかったよね。しかたないから、この世界が本当にストアトの世界なのか調べてみましたよ。
うん、まるっきりそのまま。ストアトだった。攻略キャラクターとか、出てくる学園とか、名称とか、諸々そっくりそのままだった。
それとなーく、私についても調べておいた。過去の設定とか、まさしくレイフェルだった。
夢って、もっとあやふやじゃなかったっけ?たとえばレイフェルとアリアの設定が混濁したりとかするよね?
覚えている情報そのままなんですけど。いや、おかげで私を演じることができたからいいんだけどさ。
それよりも、夢の中で一日過ごしたことになるわけだが、一向に現実で起こしてもらえる気配がない!
つまり、自力で起きろってことだよね!きっつ!
社内で寝落ちしたってことは、目覚まし時計とか一切かけてないわけだよ。
どうしろっていうんですかね。こういうのって大抵自然に目が覚めたりとかするじゃない。しかも夢を見ているってことは、眠りは浅くなっているはず。
で、何度も起きようとしているのに起きられない。これさ、やっぱりなにか条件を満たせば起きられるパターンだったりする?
いやいや、違うよね。まさかだよね。そんなに長い間夢を見続けるわけがないし。さ、最悪、同僚が来て始業までには起こしてくれるでしょ。問題はレポートがまとめられないだけだし。
…起こされるのを待たなきゃいけないとか、怖すぎるんですけど。じゃあ、なにかをしろよって話じゃない?何しようが現状なわけよ。
あれだ。暇すぎるし、ノートにでもストアトの設定書き連ねるか。何かあったときに使えるかもしれないし。
よし、確認でやってみよう。
ベッドから抜け出して、ドレッサーの上にあるベルを鳴らす。すると、レイフェル付きのメイドが入ってくるはず。
リンと軽やかな音が響くと同時、「お呼びでしょうか、お嬢様」と声が聞こえた。
この声は、シィフィだ。レイフェル付きメイドをまとめる立場のメイドさんである。
「ああ、シィフィ。入ってきてちょうだい」
「はい、お嬢様」
「用紙とペンを用意してほしいの。この前私が買ったあの便箋」
「かしこまりました」
「ええ、お願いね」
うん、ちゃんと呼べた。これも書いておこう。
少しして、シィフィが戻ってきた。
手にはちゃんと便箋とインクペン。それから紅茶が用意されていた。
「僭越ながら、紅茶の用意をさせていただきました」
「ありがとう」
こういうところに気が利くのがシィフィの特徴である。ちなみに、紅茶はレイフェルの好物、そしていつもいれる砂糖が一個、添えられている。
「(うんうん、ちゃんと覚えているわ)」
シィフィが優雅にお辞儀をして部屋を出て行った。
「(よし、忘れないうちに、書いちゃいましょう)」