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チェンジリング・ヒロインゲーム ~私のハッピーエンドを目指して~  作者: えとう蜜夏


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よくある悪役令嬢の兄の呟き(ルーク視点)

 私は生まれたときから優秀だった。侯爵家の跡取りとして申し分無い程。むしろ神童とさえもてはやされた。そんな私は侯爵家の跡取りとして期待されて、家族や周囲の者からは愛情と注目を浴びてきた人生が早々に邪魔をされた。


 そう、妹ができたのだ。母親からは嬉しそうに報告されて、苔しか頭に無いような父親からも娘ができるとやや顔を綻ばしていた。


「可愛いだろうなぁ」


「名前はなんてしましょうか」


 そんなふうに話す両親を眺めながら、生まれる前から自分より関心を向けられることに苛立ちを覚えていた。




 いよいよ出産予定日となり、母親は最近出来たという病院に入ることになった。今までなら、家に医師を迎えての出産だが、新しいもの好きな母親は友人からの薦めもあり、病院とやらで診察を受けていた。


 その頃の私は貴族の子弟のみが通える学校の初等科に進んでそこでも優秀な成績を誇っていた。そして、この国のアベル王太子様とも友人というポジションを得ていた。


 私は生まれてくるだろう妹を見定めようと学園から病院に向かう。それはとても面倒くさいことだった。


 昔は医師というのはお抱えが普通で自宅に招くのが当然だった。このように出向くのは庶民だけだったのだ。しかし、医師の数が足りないことからこうして、医師の居るところに患者が集まるということが段々導入されていったそうだ。


 子どもを生んでもなお、その美貌でファンが多い母上は出産してなお美しさを増していた。宮廷でどれだけ人気なのか父上が苔しか興味ないので問題が起きないのだろう。あんなのが妻だったら、他の夫なら嫉妬から悋気を起こして仕方が無かったことだろう。


「まあ、ルーク、今日も来てくれたのね。あなたの可愛い妹よ」


 そう母上に言われても白くてしわくちゃの目を閉じたままの可愛いとか分からない物体だった。ただ、力無くか細く泣く声に私も少し心配になる。


「母上、この子は泣き声が弱いのではありませんか?」


「ルークは心配症ね。そうね。あなたは元気な子だったけれど、少し、アーシアは弱いかもしれないわね」


「アーシアと言うのですか?」


「ええ、素敵な名前でしょ? この子をよろしくね。ルーク。あなたならしっかりしてるから安心よ」


「お任せください。立派に躾けてみせましょう」


 そう言って母上には安心させるようににっこりと微笑んだけれど内心冗談じゃないと思っていた。だが、私の差し出した指先を偶然アーシアは掴んだ気がした。とても弱々しいその手に……。仕方がない。私が元気に育て上げようじゃないか。


 そう決心したときだった。慌てふためいた女性が私達の部屋に飛び込んできたのだ。


「調理場でボヤで! 煙がっ。直ぐにお逃げ下さい!」


 慌てすぎて何を言っているのか分からなかったが、その女性は既に一人の赤子を抱いている上にうちのアーシアまで抱き抱えると部屋の外に出て行ったのだ。


「待て! うちのアーシアを何処に連れて行くのだ。警備の者は一体何をしている!」


 控えていた警備の者も病院の看護の者だから止めるのを躊躇していたようだった。


 それで誘拐されたらどうするのだ! だから、病院など! 私は警備の者に母上を頼んで後を追った。


 幸いボヤは直ぐに消し止められて、母上も逃げる程では無かった。そして、赤ちゃんが診察を受けるように設置された台の中に家のアーシアと先ほどの赤子が台に書き込まれた名前の違う方に入れられていたのだった。


 これだから、私が後を追って良かった。そして、念のために足の裏の落書きを確認する。――やっぱり、慌て過ぎて間違えている。私は黙って彼女らを名前の通りに入れ替えてあげた。


「ちょっと坊っちゃん。いたずらしちゃあダメよ!」


 他の看護の者に見咎められたが、そっちの間違えを直しただけだからな。私は心配でそこから離れず、アーシアが無事部屋に戻るまで側にいた。





 これが、彼女らの取り違えとかいう真相だ。


 因みにアーシアの足の裏には調理場でちょろまかせてきた食紅でバカと書いてあった。右がバで左がカだ。そんなのどうでもいいことだがあの頃は私もまだ子どもだったのだ。許して貰おう。でも、そのお陰で間違いに確信を持てたので満更でもない。


 そうして、私は館から聞こえてくるアーシアのかん高い笑い声を聞きながら苦笑いを浮かべた。体が弱く心配したアーシアを鍛え上げた。今では立派なムチ使いになっている。少々の暴漢など相手にならないだろう。


 私の貴重な時間を使ったのだ、せいぜいアーシアには王太子妃の座を目指して貰わないと収支が合わないのだがな。たかが伯爵家とでは、全く手間のかかる……」


 私は侯爵家の領地の報告書を確認しながらそんなことを呟いていた。

ありがとうございました

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