レベル上げの難易度が異常
俺が勇者に負けて3日後。魔王城のベッドの上で目が覚めた。
「ん…あー…」
眠りまなこを擦りながら体を起こすと、側近が俺を見下ろしていた。
「おはようございます。目覚めはどうですか?」
ぎょろりと覗く3つの目がまぁ気持ち悪い。だがそこがいい。魔物たるもの気持ち悪ければ悪いほど強く、美しいんだ。
「いいわけねぇだろー…。あんなぼろかすに嬲られたんだぜ?プライドも何もかもズタボロだ…」
「そうですか?ですがみてください。先日の魔界新聞には大健闘だと書いてありますよ?」
はぁ…っとため息をつきながらベッドに置かれたそれに目を通した。
『新魔王大健闘!レベル24にして、ステータスのカンストした勇者パーティに7ターンもボコられながらも、合計2987のダメージを与える熱いバトル!!今後の活躍に期待です』
「ねぇ、ちょっと待って。これさ、魔界全域に配布されてる奴だよね?」
「えぇ。もちろんです」
「まじかよおおおお!とんでもねぇ恥じゃねぇか!あとなんか新聞の書き方がちょっと上からでムカつくんですけどぉ!」
「落ち着いてください。今に始まった頃ではありません。魔王様が生まれた頃も、初めてのあんよも、初めて喋れたことも、上位魔物どもを手玉に取り遊んでいたことも、全て記録されてます」
「まじかよ…きちぃわ」
ぽりぽりと後頭部をかきながら、俺は決めた。今日からまたレベル上げの日々だ。
▶︎『生と死の沼』
「さて、魔王様。今日はここで中堅クラスの勇者たちをけちょんけちょんにしちゃいましょう」
「よし。この前の鬱憤を晴らすために…」
▶︎勇者御一行が現れた
(話ぐらいさせてくれよ…)
▶︎勇者のターン
「おい、何だよこいつ。こんな奴がエンカウントするなんて聞いてねぇよ。まぁ、ギリ倒せるか」
▶︎勇者の『魔神滅殺剣』
対魔物魔法の剣が魔王を襲う。
ズシャー!
・謎の魔物に211のダメージ
「な!?堅!」
(あれ、この前ほどじゃない…)
(ふふ。この前も申し上げた通り、魔王様はそれほど弱い存在ではないのです)
▶︎戦士のターン
「こいつぁ倒し甲斐があるぜ。倒したあとの経験値に期待だな」
戦士の『切り裂くは鬼の如し』
戦士の乱舞が無数の斬撃となり魔王を襲う。
ズバババババババババ!
・謎の魔物に385のダメージ
「…俺の攻撃がこのレベルか。ちとやべーな」
(いける…!俺でもいけるぞ!!側近!)
▶︎謎の魔物のターン
(さぁ魔王様。見せ場ですよ)
▶︎謎の魔物の『アンチグラビティ』
勇者たちの体が歪んでいく
グシャアアアア
・勇者の体は消し飛んだ
・戦士の体は消し飛んだ
・僧侶の体は消し飛んだ
▶︎勇者御一行を倒した!
・魔王は3241の経験値を得た
・マルディオラは68527の経験値を得た
「え、うん?あれ?」
「?どうしました?」
「いや、困り顔でどうしましたじゃねぇよ!この経験値の差はなに?!」
「長年の経験値の差ですね。この『宝玉の真珠』と『サウメリアの砂時計』で貰える経験値は約21倍です」
「アイテムの差じゃねぇか!それどっちか貸せよ!」
「嫌ですよ。すっごい苦労したんですから。欲しければ自分で入手してください」
「もうだから、お前魔王でいいよ」
「さぁ、次がきますよー!」
▶︎勇者御一行が現れた
そう。こうして俺は中盤あたりのダンジョンにくりだし、勇者御一行や、残党、孤高の勇者辺りを狩りまくる。しかし中には噂を駆けつけたやべぇ奴らが現れて惨殺されることもしばしば…。
そんなこんなで2年間。俺のレベルは4上がった。
「ふぅ。中級クラスの奴らは楽勝になってきたな」
「さすがは魔王様です。この調子でいけば次の狩場に移動できそうですね」
「そうだなぁ…」
「…?どうしました?」
「俺ずっと前から疑問なんだけどさ。なんで側近はそんなに強いんだ?」
「なんでって…。決まってるじゃないですか。魔王様にもしものことがあったとき、いかなる状況下でも守れるように、ですよ」
3つの目を閉じてニコッと笑った。
「そうか。これからもよろしく頼むぞ」
「はい。もちろんです」
そんな会話をしながら俺たちはぶくぶくと煮え滾るマグマの中に入っていった。




