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始まりは突然に

「ふーむ。」

 僕は思わず唸り声を上げてしまった。

「数々の天変地異、異常現象、魔術に出くわしてきたが……。」

 僕は辺りを見渡しながら呟いた。

「やたらと無機質な建物が見える世界で物騒な連中に囲まれるのは……初めてだな。」

 そう、周りには白やら灰色やらの壁にピカピカと光が煌めく大量の水晶がはめ込まれた建物が沢山あるのだ。そして、僕の周りには全身黒ずくめで覆面をし、銃を構えた連中がいる。


   ***


 僕は安部(あべ)隆史(たかし)

 キリスト教に相対する聖悪魔教―――悪魔を崇拝する宗教の教徒、もとい、デビル・ヴァーヴァラーズの一員として千七百年代を駆け抜けた。

 デビル・ヴァーヴァラーズというのは悪魔と共存する者、という意味。

 何語かは知らないが仰々しい名前だ。

 まぁ、共存するというのは名ばかりで、使役している、というのが正しい。

 出来た当初はキチンと共存していたようだが、僕らの世代では本当に使役となっていた。

 その常識を僕はぶち破って、悪魔のアメリやカオルと共存していたのだが。

 ―――話を戻そう。

 自分には古代の妖怪、九尾が封印されており、神から賜った宝、神炎を授かっていた。

 この九尾は悪魔の一種で、我々、人類が持つ悪魔の使役などに用いる陽の魔力に相対する陰の魔力を莫大に保持している。それを集中して撃ち出すのを龍の息吹(ラスター・カノン)というのだが。

 この陽の魔力と陰の魔力は本来、一つの身体の中では共存できず、拒否反応を起こしてしまう。

 ただ、魔力の周波数が合うなどの稀な要素が揃うと共存することが出来る。

 それの稀な事象を起こして、最初、封印されていた九尾の魔力を封印から解放して自在に操ることが出来るようになっている。

 で、神炎というのは自分の身体の魔力、無い場合は脂肪などを還元して魔力に変換して全てを消し去る炎にする。

 そんな化け物を二つ持っているので、僕は狙われっぱなしである。

 最初は独逸帝国、その次は神の国、ゼイラレル神国。ヴァンパイアの国、夜会ブラディジアなどと捕縛、身柄輸送などされ、何故か夜会国王となっている始末。

 そこの夜会ではいろいろあって、敵となった邪神を討たねばならなくなり、そのために訓練を受けるために四神の国、大和幻想郷へと。そこで初めて自分の父と出会い、父の、神になるの野望を阻止したり四神の力を手に入れたり―――。

 ようはかなりややこしい。

 まぁ、邪神は討った。うん。

 その一連のことまでに妻が十人以上出来た。

 だが、それも気にすることでは―――ないよな?当時は一夫多妻だし。


 以上、自分の説明は終わり。

 後は確か、書物で『デビル・ヴァーヴァラーズ』という物があったはずだ。

 それを読めば自分の奮闘ぶりが分かる。


   ***


 という訳で。

 一斉に銃撃してきたのを僕は神炎、全てを消し去る炎を吹き出して防いだ。

「くっ……。」「まさか、こいつが生きていたとは……。」「通報では嘘だと思ったが……。」

 黒ずくめの連中は後ずさっている。

 あー、何だか面倒くさそうだが、生かしておくともっと面倒なようだ。

「南無。」

 僕は呟くと腕を上空に向けた。

 そして、九尾の魔力を腕に集中させた。すると、腕は龍のように形態変化した。

龍の流星群(ラスター・フレア)。」

 僕が呟くと同時に、腕から幾つもの光線が吹き出た。

 ラスター・カノンを幾つにも分散して放つ技、ラスター・フレア。

 この光線は全てを消し去るので。

「うぐっ!」「ぐはっ!」「ぎゃっ!」

 黒ずくめの連中は一人残らず、それに射抜かれた。

 そいつらは身もだえしていたが、やがて動かなくなった。

 僕は満足げに辺りを見渡して、む、と眉を顰めた。

 一人だけ動いている。見ると、光線が外れて肩に当たったらしい。

 全員、心臓を射抜いたはずだが……かわされたようだ。

 まぁ、丁度良いかな。

「はい、君、ちょっといいかな?」

 僕はそう言いながらその人の覆面を取った。

「いやっ、きゃっ!」

 抵抗したが呆気なくそれは剥がれてしまう。

 その覆面の下は美女だった。

 端正な整った顔に金髪……。

 妻のライラにどこか似ている気がして眉を顰めた。

 とにかく、問うてみることにしよう。

「君の名前は?」

 美女は抵抗していたが、諦めたように大人しくなる小さな声で言った。

「―――ローラ・ライゼンス。」

 ライゼンス……ライラの名字か。

「ライラと何らかの関係があるのか?」

「ライラ……私の曾祖母の姉ですが。」

 すっかり大人しくなって……。

 んで、ライラが曾祖母……あれ?

「ちょ、待てよ。」

 僕は混乱しながら言った。

「今は一七〇〇年代で……。」

「何を仰いますか。」

 ローラは眉を顰めて言った。


「今は一九四〇年ですよ?」


 ―――は?

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