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プロローグ:バンジャルマシンに残した天国の欠片

「本作には、非常に切ない描写や救いのない展開、そしてキャラクターの死が含まれています。読後の喪失感が強い物語ですので、精神的に繊細な方や、ハッピーエンドを強く望まれる方はご注意ください。これは、届かなかった想いと、静かな別れを描いた物語です。」


初めまして。作者のエドです。この物語は、インドネシアの熱い風と、日本の冷たい雪の間で揺れ動く二人の切ない物語です。10年前の遠い記憶が、現代の長野でどのように溶けていくのか。最後までお付き合いいただければ幸いです。


#純愛 #悲恋 #切ない #泣ける #バッドエンド #初恋 #長野 #インドネシア



バンジャルマシンの雨上がりに漂う、濡れた土の匂いを今でも思い出せる。それはいつも、バリト河のほとりを駆け回る小学生たちの汗の匂いと混じり合っていた。


あまりにも近くに感じられるカリマンタンの空の下、僕は教科書からではなく、そこで世界を知った。あかりという一人の少女の笑い声を通して。


「エドくん、見て! 太陽が川に沈むオレンジみたいだよ!」


彼女はいつも僕の名前を「くん」付けで呼んだ。地元のバンジャル語を流暢に操るようになっても、その習慣だけは変わらなかった。あかりは、熱帯の地にどういうわけか舞い降りた雪のような、特異な存在アノマリーだった。白くて、純粋で、そして僕が止める間もなくゆっくりと溶けていく。


机の引き出しには、小学1年生の時に彼女からもらった飴の包み紙が今も眠っている。色はもう褪せてしまったけれど、僕にとっては聖なる碑文のようなものだ。僕は口下手なINTPだけれど、観察することに関しては誰よりも鋭かった。彼女の些細な仕草まで、すべてを記憶の帳簿に書き込んだ。笑う時に細くなる目や、悲しい時に制服の裾をぎゅっと握りしめる癖。彼女が僕にだけ見せた、その脆さを。


そして、2015年がやってきた。世界経済が崩壊し、鉱山で働いていた彼女の父親から仕事を奪い、僕のそばからあかりを奪い去った年だ。


僕たちは、満足な「さよなら」さえ言えなかった。残されたのは、10年間僕が握りしめ続けた子供じみた約束だけ。そして僕は、意を決して長野県の地に足を踏み入れた。


バンジャルマシンの思い出の残骸からかき集めた勇気と、ひとつの指輪を携えて。骨まで凍るような長野の冬に挑みに来た僕を待っていたのは、どんな雪よりも冷酷な事実だった。


かつてバリト河で一緒に夕日を見つめたあの瞳が、今は駅で道に迷った見知らぬ他人を見るような冷ややかさで、僕を射抜いている。


「すみません……どなたですか?」


彼女の隣では、一人の男がその手を当然のように握りしめていた。その瞬間、僕は悟った。僕は10年間、降りしきる雨の中で必死に火を灯し続けていたけれど、彼女はとっくの昔に、その火を消してしまっていたのだ。

「プロローグをお読みいただきありがとうございます。二人の運命がここから大きく動き出します。エドの胸に秘めた想いは、果たしてあかりに届くのでしょうか。次章、2015年のバンジャルマシンの思い出編でお会いしましょう。」

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