表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺だけ使える【アイテムボックス】がバグってるので、誰も運べないレイド報酬を独占します!  作者: 小狐


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/29

第20話 出発の日

 三木への返答は、朝倉に任せた。


 メッセージの内容を翌朝確認した。

 霧域の拡大は先週より進んでいて、今週中に現地確認が取れるなら動きたいという内容だった。

 出発まで5日だった。

 そこで朝倉に確認を取るべく連絡する。


 「三木さんへの対応、遠征優先で伝えてもらえますか。帰着後に改めて確認します」


 「分かりました。記録と窓口はこちらで押さえておきます」


 廃工場の霧域は動いている。

 向こうも今の状況は把握しているはずで、今すぐ動けないと伝えれば了解はもらえる。

 ただ、了解しても霧域は待たない。遠征後の対応になりそうだ。


 スマホを置いて、出発の準備に戻った。



 ◇



 出発当日は朝6時集合だった。


 施設の搬入口に輸送車両が3台並んでいた。

 隊員が装備の最終確認をしながら、車両の前後を行き来していた。

 蛭田がリストを手に立って、全体を見渡していた。

 試験遠征のときと同じ立ち方だった。


 「倉橋さん、出発前に照合をお願いできますか」


 蛭田の補佐をしている若い隊員が近づいてきた。

 手にリストを持っていた。


 「医薬品と鍛冶工具の番号を確認したくて」


 「ええ、了解です」


 医薬品の箱を収納から取り出した。

 番号を照合して収納に戻す。

 続けて工具のケースも出した。


 「早いですね。いつもこれくらいですか」


 「まぁこれが普通ですかね。何か問題があれば呼んでください」


 隊員がリストに書きながら作業に戻った。


 朝倉が来たのは出発10分前だった。


 「廃工場の件、三木さんには伝えました」


 「了解してもらえましたか」


 「了解しています。ただ、現地の状況はもう少し見ておきたいということで。何か動きがあれば連絡が来ます。こちらで記録だけ取っておきます」


 「お願いします」


 「こちらは外から押さえておくので、向こうだけ考えていてください」


 朝倉がスマホを手に持ったまま施設の外へ戻った。

 今回の遠征に朝倉は来ない。


 蛭田が「出発します」と告げた。



 ◇



 車両が動き出した。


 隊員は座席で装備の話や交代の話をしていた。

 俺の隣の席は空いていた。

 窓の外では都市の外縁が流れていき、建物の密度が落ちた。

 一般道から高速に入ったところで、景色が変わった。


 試験遠征のときも似たような移動だった。

 あのときは7日間の中難度ダンジョン帯同で、物資は今回の4分の1程度。


 今回は往復60日の本格遠征で、積んだ物資の規模はあの時の何倍もある。

 ただ、車両の荷台に余裕があった。悠真が収納に入れているからだ。


 前方の席では2人の隊員が話していた。


 「補給の心配がないのは初めてじゃないですか」「そうだな」という声が続いた。

 そんな内容の話をしつつ、別の話に変わった。


 北関東まで3時間かかった。



 ◇



 施設に着くと、入場の手続きが行われた。

 蛭田が書類を受け取り、隊員が順番に通っていった。


 「今日は6層まで進んで、簡易拠点を設置します」


 蛭田が全体に告げた。


 「物資の展開は拠点設置後に行います。今日は拠点確保と初層の状況確認が目的です」


 隊員が頷いた。俺も頷いた。


 管理ゲートを通ると、下へ続く通路が現れた。

 天井が低く、壁の石が湿気を帯びている。

 試験遠征の施設より空気が重かった。

 照明が点在していて、その間の区間は薄暗い。


 前衛が先頭に立ち、隊が通路を進んだ。

 1層から4層は既知の構造で、蛭田の記録にも詳細が入っていた。

 4層で魔物の群れが出たが、前衛が片付けた。


 俺は列の中ほどにいて、声がかかったときだけ動いた。

 素材の回収指示が出たので、解体された分をまとめて収納した。


 6層の手前に広い空間があって、蛭田が「ここで拠点を組みます」と告げた。


 設営シートが広げられ、仕切りが立てられた。

 炊事と医療のスペース、各班のエリアが割り振られた。

 隊員が慣れた手順で動いていた。


 「物資の展開をお願いします」


 蛭田の声で、収納から物資を出し始める。

 食料のコンテナ、医薬品の箱、鍛冶工具のケース、野営設備のロールとケース、補修資材の束。

 指定のスペースへ順に置いていく。


 約30分で終わった。


 補給担当の隊員が棚に物資を並べながら、「量が全然違う」と隣の隊員に言っていた。

 俺に向けた声ではなかったが、量が違うのは事実だった。

 試験遠征の物資とは比べ物にならない。

 6層の時点でこれだけの量が展開できるなら、14層を越えた先でも補給が続く。

 ここにいる全員が、数字ではなく現物として確認できた最初の場面だった。


 蛭田が全体を見渡して、「今夜はここで待機します」と告げた。



 ◇



 夜の初めに、スマホに朝倉からメッセージが届いた。


 『三木さんから追加の連絡が来ました。霧域が管轄境界を越えた可能性があります。記録は取っておきます。詳細は帰着後に確認をお願いします』


 スマホを置いた。


 拠点の奥では隊員が話していた。

 外側は動き続けている。

 ここは6層の地下で、本番はこれからだった。

読んでいただきありがとうございます。

面白いと思っていただけたら、ブックマークや評価で応援いただけると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ