何パンがよいかな
「いえ、探索者にも好みがあるから、アンパンでもバリエーションがあると嬉しいなぁと。あんことバターのアンパンや、あんことホイップクリームのアンパンとか。あ、もちろんアンパンじゃなくてもいいんですけど」
志崎さんがハッとする。
「なるほど、ジャムパンやクリームパンなど他のパンの開発はもちろん進めているが、アンパンにバリエーションをという方向では確かに動いてなかったと思う」
志崎さんがうんうんと頷いた。
「貴重な意見だと思う、ありがとう」
「いえ、あの、お礼を言うのは私の方ですよね?栄養満点のアンパンを販売前に食べられたので」
ふっと志崎さんが笑った。
よく笑う人だなぁ。
いや、もしかして、私が、笑われているのか?な?
おかしなこと言った?言ってないよね?
「じゃあ、行こうか」
と、少し歩くと扉があった。手動。
「あ、ここって……」
見覚えがある景色。
いや、初めて来たことは間違いないんだけど、コンビニでも違うコンビニでも同じようなものだったりするあれ。
ダンジョン管理事務所、通称ギルドだ。
ホテルの地下に、まさかダンジョンが?
「シーザー様、その方は?」
職員に志崎さんは様つきで呼ばれた。20代後半の仕事ができそうなきりりとした女性だ。
「うん、ちょっと訳あってね、レベル上げ」
え?レベル上げ?私の?だよね?
「訳とは?」
志崎さんが私の顔を見た。
……。
「内緒」
淳史に腹が立ったから、ざまぁと言わせたいという訳を、志崎さんは言わなかった。
うん、サレ女の話がこれ以上広まらなくてよかった。苦笑。
「レベルの開示をお願いいたします」
「あ、えーっと」
そういえば、毎回レベルの開示が必要がないようにともらったカードを探索者カードと一緒に出す。
「これは、一般ダンジョンのカードですよね?」
「一般ダンジョン?え?もしかして、ここってVIPダンジョンとかなにかですか?」
びっくりして声を上げる。
「VIPダンジョン?」
志崎さんが声を上げた。
「いえ、だって、その……なんか、高級ホテルにあるし……人も少ないし……選ばれた人だけが通えるような……場所をVIPって……」
ぷっと志崎さんが噴出した。
あああ、また、笑われた。
笑い上戸なのか、私がおかしなことを言っているのか。
探索者ギルドの職員さんが志崎さんを見た。
「シーザー様にどう取り入ったのか知りませんが、このダンジョンがどんなダンジョンかも知らないでついてきたのですか?」
ぎろりとにらまれる。
あー、えっと、これ、また絡まれているというやつでは……。
「1階層に出てくるスライム、どつき兎は知っていますか?」
こくこくとうなずく。
「2階層のかみつき蛇、蹴り兎も?」
こくこくと頷く。
「えっと、3階層には吹き出しスライムと角兎ですよね?」
全く何も知らないからにらまれているのかな?と思ったので……いや、この間まで全く知らなかったんだけれど、一応3階層までは言ってますよという証拠に魔物の名前を挙げる。
「武器は?防弾チョッキにも使われるアラミド繊維に、ひざ下PETラミネート防水加工のツナギを着ているから大丈夫だとでも思っているんですか?」
防弾チョッキ?
なにこの、黄色い派手なツナギ、そんなすごい繊維でできてるの?しかもひざ下は防水加工なんだ。これなら長靴をはかなくても酸を防げる?いや、酸で溶けないのかな?一応クレイコーティングした方がいいかな?
「あ、そうか。武器も必要か?有希はいつも何を使ってる?」
「えっと、フローリングワイパー……」




