帰宅
「クレイパック、泥パックってあるじゃないですか。ダンジョンの泥ってまだダンカリに出品されていなかったので、売れるかもしれないなぁと思ったんですけど、泥パックに適した泥をね、探してこうなりました。泥遊びだって思われていれば、ライバルがいなくてよさそうですぅ」
職員が慌てて声を潜めた。
「大きな声で言わないほうが」
大丈夫。本当の理由は別だから。
でも、バカにしていた人たちが、ハッとして目の色を変えた。
私は泥を売るのはいろいろ問題になるのが怖くてやめてるけどね。
ほかの人が売った結果を見ながら考えます。試してくれる人がいた方が正直ありがたい。
「もう一度ダンジョンに入って綺麗にしてきますね」
このまま家に戻るわけにはいかないので、ダンジョンに入って、クリーンしてすぐに出てくる。
「え?もう綺麗に?あれ?どうやったんですか?」
職員さんが驚いている。
周りで私を見て笑っていた人たちもきょとんとしている。
「魔法です。ほら、よくある【クリーン】です。劣化版ですけど」
小説や漫画によく出てくる【クリーン】魔法。私のは土属性だから土汚れしか落とせない中途半端なやつね。
その様子を見ていた人たちは、私をバカにするような目を向けてくることはなかった。
……なんだかなぁ。まだ、お見合いコーナーとかで目をぎらつかせていた人たちのほうが、人をバカにして悦に入るようなことがない分平和だった。
リゾートでは他の人のことなど気にせずにのんびり楽しんでいる人たちだったし。
やっぱりお金が絡むと、荒れるね。
……お金が稼げるようになったら、仕事を辞めて、人の少ない田舎のダンジョンに入って過ごすのもいいかもしれない。
こんな日々が続くと疲弊しちゃうよ……。
はぁーとため息をつきながらアパートに戻る。
あまりにも重たくて、寄り道する気力もない。
風呂に入って、カップラーメンを食べながらスマホチェック。
SNSが3日坊主だったので、何かを書こうと思ったけれど、特に書くこともなく……。
他の人の書き込みを見て回ろうかとも思ったけれど、それよりも勉強不足を何とかしないといけないんだよね。
……このあたりのダンジョンって、他にどこがあったかな?
まずはダンジョンで地図検索。
ダンジョン管理協会公式アプリに地図も入っているのだ。
検索をかけると、地図上に丸い印がピコピコと現れる。地図によって、二重丸だったりピンだったり、するけど、ダンジョン管理協会公式の地図にはダンジョンの印が絞り出した生クリームみたいな形で表示されている。目や口もついていて……。
「これは、スライム?」
変なところにお金をかけてるなぁ……。
かわいい。スライムに色がついている。
「え?何、これ、混雑具合で色が違うの?……うわー、このあたりのダンジョン真っ赤だ」
地図を縮小して、近隣のダンジョンも表示すると、場所によって、水色だったり、黄色だったりする。
「ここから1時間くらいで行ける範囲は……どこも赤いなぁ……。」
そりゃそうか……みんな考えることは一緒だ。
そういえば、紫崎さんは北海道に遠征って言ってたなぁ。
「あ、北海道も上の方にあるダンジョンは水色だ。空いてるってことだよね」
あれ?北海道はでっかいけど、ダンジョンの数はまばらだ。
「これって、ダンジョンの密度が少ない?それとも、まだ発見されてないダンジョンがあるとか?」
ダンジョンが発見されて10年。発見されていないダンジョンなんてあるのかな?
と、ベッドの上でスマホを見ているうちに、寝落ちした。
ダンカリへの出品もせず就寝。




