笑われまして
「10センチ四方で【ガガッ】【ガガッ】【ガガッ】【ガガッ】【ガガッ】……」
とりあえず、20回。合計3m奥まで壁を掘った。
「色が、ちょっと違う」
一番奥は黒っぽい岩……石?ちょっと綺麗。
金属ではないから、探索者協会での買取品目ではないよね。ダンカリで売ってみようか。綺麗だから。
5つ選んでリュックに入れる。
「あー、もう限界だわ。10キロ以上あるよっ。リュックは丈夫だから大丈夫だけど、運ぶ私が大丈夫じゃないよ。重たい……」
もう、戻ろう。
うん。
帰り道、穴を掘ったところの近くにくると、人が集まっていて騒ぎになっている。
「怖っ。そんなに穴が欲しいのか。落として倒せるの楽だもんなぁ」
他に作っておこうか?まだ魔力あるし。
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魔物を落として魔石を拾うようなら3mを4つ並べたくらいでいいかな。安全地帯は不要なんだよね?
俺にも掘れと言われるようになるといけないから、私が掘ったと分からないように、岩陰に隠れる。
ぽこっ魔法も、割と離れた場所でもできたので、大丈夫だろう。
「3mの穴【掘る】【掘る】【掘る】【掘る】」
よしよし。掘って出た土が周りに山になっているから、間違えて人が落ちることもないよね?よほど慌てて逃げているとか以外。
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まだ魔力は余裕。あと5つくらい作ろうかな。
と、3階層に穴を掘ってあげて、やり遂げた感で、ダンジョンを出る。
あんまり取り合いばかりで険悪な雰囲気になるのもねぇ、嫌だもんね。ほかの人もさ。
「あー、欲張りすぎたぁ……。リュック重たい……」
いや、欲張ってはないよ。岩が重たいんだよ。泥団子に比べて。10センチ立方体の石でも2~3キロはあるよ。5個しか持ってきてないのに、それだけで10キロ以上はある。それに加えて泥団子が6つで1~2キロはある。
「大丈夫ですか?それ?」
重たいリュックを抱えてふらふらになりながら歩いていると、職員から声をかけられた。
「あ、大丈夫で……」
重たいけど平気ですと言おうとしたら、職員の目がリュックではなく足元に向いているのに気が付いた。
視線を落とすと、両足とも太ももまでがっつり泥パック!
「あっ!しまった!」
職員が心配そうに見ている。
「どこかに沼がありましたか?何階層のどのあたりか教えていただいても?地図に書き込む必要がありますので」
なるほど、確かにもし、太ももまで沈むような沼があったら大変だ。
「いえ、あの、違って、これは自分で……」
職員が首をかしげる。
「えーっと、自分で泥を塗りました」
会話を聞いていた人たちがどっと笑った。
「あはは、泥遊びするためにダンジョンに入るバカがいるぞ」
なんて声も聞こえてきた。
「なぜ、そんなことを……?」
職員は私が泥遊びしたのではない、理由があるのだろうと尋ねてくれた。
列に並んでいる人は私を見ながらげらげら笑い続けている。
なんで、ああも人のことをバカにすることができるんだろう。理由も分からないくせに。
いちいち教えてあげる義理はないから、職員には適当にごまかす。




