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出口


 私の魔力は、一定以上解放すると空へと向かって飛んで行ってしまう。その魔力は天候に作用し、雨が降っていたらその空を青空へと一変させる。晴れの時にやったらどうなるかは分からない。やった事がないから。

 という訳で、私は庭先で魔力を解放してみた。私から溢れ出した魔力の光が、私を包み込む。

 これまでやろうとしていたのは、この魔力を小さな1つの塊として自分の傍に配置するという事だ。でもそれをすると、塊は砕けて無くなってしまう。小さくまとめようとすると、どうしてもそうなってしまうのだ。

 ならば、小さな物を作らなければいい。どういう事かというと、小さな物がダメなら大きな物を作り、周囲を自分の魔力で覆ってしまうのだ。そうすれば、その中でならいつでも魔法を発動出せる事ができる。小さな物をたくさん作るのと変わらない。はず。


「……よしっ」


 頭の中で必要な分の魔力のイメージを作り出し、それを解放させる。

 すると、光が更に勢いよく溢れ出した。その光は庭中を覆いつくし、だけど地面から空に向かって飛んで行こうとする。その光景は、まるで雪のよう。ただし、地面に注ぐのではなく、空に注いでいる。その中で、私を中心として大きな円形の光を作り上げた。今まではコレの小さいバージョンを作ろうとして失敗してきたけど、今回は逆にこのまま大きくしていき、庭一面を覆う程の大きさにしてみた。


行く手を阻む氷の壁(アイスエジェクト)


 試しに、私の魔力で覆われている周囲の中で、エリシュさんから習いたての魔法を発動させてみた。

 すると、私の予想外の出来事がおきてしまった。私の魔力の全てが反応し、その全てで氷の壁を作り出してしまったのだ。屋敷の庭は氷の壁によって閉ざされる事になり、極寒の地に姿を変えてしまった。


「っ!」


 慌てて魔力を霧散させ、作り出してしまった氷の壁を消し去る。

 別に悪い事をした訳ではない。周囲に特に被害も出ていないのに、私は首を回して周囲を警戒。条件反射で目撃者を探してしまう。

 そして目撃者を発見した。


「何をしているんだ、君は」

「いや、えと……魔力のコントロールの練習を……」

「ふっ」


 いつの間にか、エリシュさんが私から少し離れた所に立っていて、そう尋ねられた。

 正直に答えると、軽く笑ってから私に歩み寄ってくる。


「今のは、あの男の真似事か?」

「あの男って、やせてる気持ち悪い人?エリシュさんが、魔法で攻撃を仕掛けて戦闘になってた」

「そう。その男だ」

「……そうだよ。ルナさんが、私が参考にすべきなのは、膨大な魔力を持ってる人だって言うから。それであの時の事を思い出して、やってみたらこうなっちゃった」

「あの男の真似というのが気に入らないが、君の発想は間違っていない。君の魔力はあまりにも膨大かつ強力すぎるんだ。そんな魔力をコントロールするのは、至難の業となる。ならば塊を点として配置するのではなく、一つの大きな塊として配置すればいい。簡単な事だよ。だがそれが難しい。普通の人間に出来てしまっていい業ではない。そしてルナからヒントを得たからとはいえ、よくそこに辿り着いた。君は凄いよ。本当に」

「……」


 褒められたんだけど、しれっと私の頭の上に手を乗せて、子供扱いするのはやめてもらいたい。

 でも、私は嬉しかった。エリシュさんに褒められた事で、その手を振り払う事を躊躇うくらい、心の中で喜んでしまっている。


「あー、うーあー……やーめてっ!」


 でも、頭を掴まれたままぶんぶん振り回され始めてたまらなくなり、振り払った。


「だが、このままでは合格とは言えないな。魔力を展開するのはいいが、自分の思う通りの場所で、狙った通りの規模の魔法が放てなければ色々と問題がある。先程は周囲に人がいなかったからいいが、もしいたら巻き込まれていた所だ」

「……練習して、絶対に出来るようになる。だから、もし出来るようになったら合格にして」

「勿論だ」


 エリシュさんは、即答で答えてくれた。

 あとは、練習して先程のように暴走気味にならないようにするだけである。散々自分を卑下しながらも、ようやく出口に辿り着くための道筋が分かった。そんな気分である。

 今朝までは落ち込んでいたけど、それももうおしまい。私は前を向き、また一歩前へと踏み出したんだ。


「ところでふと思ったんだけど、あの男の人ってエリシュさんの何なの?」

「何、とは?」

「だって、急に襲い掛かってたじゃん。普通エンカウントして即魔法で襲い掛かるとか、しないでしょ」


 エリシュさんは私の問いかけに、眉間にシワを寄せてとても嫌そうな顔をした。

 思い出したくもない、という感じである。まぁいきなり襲い掛かるくらいだから、本当に思い出したくない嫌な思い出があるのだと思う。

 も、もしかして、昔の男で、彼に捨てられたとか……。


「……あの男は、魔法の師匠だ」

「師匠?エリシュさんの?」


 意外な答えに、私は首を傾げる。師匠って、つまり先生って事だよね。私から見れば、エリシュさんがそれにあたる。

 そんな人に、出会って即魔法で襲い掛かるとか、普通はしないよ。もっとこう……ドロドロの展開が語られるのかと思っていたから、少し裏切られた気分だ。

 でもよくよく考えればエリシュさんに男は似合わない。この人、割と本気で女の子だけを愛してるからね。


「そうだ。そして私はあの男に、何度も殺されかけた。あの男の魔法の教育は、修行という名の拷問だったんだ。まだ幼い私を素っ裸で雪山に置き去りにしたり、いきなり凶悪な魔獣の前に放り出されたりもした。逃げる事は許されない。私は奴に、十年もの間、何度も何度も、何度も何度も……!」


 気づけば、エリシュさんから魔力が溢れ出していた。怒りの感情が彼女の魔力を無意識に呼び起こし、身体の外へと放出している。

 でも、今エリシュさんが言った事が真実なら、あの男は相当悪い奴である。いくらなんでもやり過ぎだ。エリシュさんの言う通り、修行ではなく拷問である。もしエリシュさんがそんな仕打ちを私とシグレにしてきたら、私も殺したくなると思う。


「私はいつか、あの男を殺す。あの時受けた仕打ちは、必ずあの男に返すつもりだ」

「……」


 コレはもしかしたら、余計な事を聞いてしまったのかもしれない。

 そう思い始めた時は、もう遅い。私の肩にエリシュさんの手が乗せられ、顔をあげればニヤリと笑うエリシュさんの顔がそこにはあった。


「聞いたからには、君にも協力してもらう。君は私の弟子だからね。私の意思を継ぐ必要があるんだ。分かるね?」

「わ、私にも、あの男の人を殺すのを手伝えと?」

「直接手を下す必要はない。それは私の役目だからね。ただ、最低限の協力はしてもらうから、そのつもりでいてくれ」


 それはもう、共犯も良い所だ。そんな物騒な事に、協力はしたくない。だけどここで断ると、この笑顔のエリシュさんに何をされるか分からない。肩を掴まれているので、黙って逃げ出す事もできそうにない。


「……で、出来る限りの事は、します」


 と、逃げの解答をしたけど、エリシュさんは満足げに頷いて私の肩から手をどけてくれた。

 この件を皮切りに糸口を掴みこんだ私は、それからもエリシュさんとルナさんによる教育を受け、そして成長していく。それはシグレも一緒で、魔法も勉学も、当初とは比べ物にならないくらいの知識がついた。

 しばらく経つと、エリシュさんに出された課題も、無事にクリアできるようになった。

 私は自分を中心として、直径数十メートル規模の魔力の塊を配置する事が出来るようになり、更にその中でならどこでも好きな規模の魔法を発動できるようになった。思い返せば、あんな簡単な課題をこなせなくてどうするのって感じだね。私にかかれば、そんなもんである。シグレはシグレで、余裕のクリアだった。最終的に、20個の魔力の塊を配置出来てたからね。

 こうして私たちは、魔法学園への入学の切符を手に入れたのだった。


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